すみっこ
結衣の破断
ああ、暑い・・・溶ける・・・
夏の秋葉原の空を見ながらそんなことを思う。連日の暑さでもうへなへなになっている。
角崎祐奈はJR秋葉原駅電気街口を出た。それがこの感想である。
━━あーあ、なんでこの東京っていう街はこんなに暑いの!もう、いやッ!
××××
メインストリートをオノデン方面に歩いていると間仲結衣が何やら奇抜なコスプレでチラシを配っている姿を目にする。
祐奈「・・・結衣?・・・」
気づいた結衣が祐奈に向く、しかもかなり驚いたように。
結衣『⁈ゆ、ゆ、祐奈!ひ、久しぶり・・・」
恥ずかしさからかそっぽを向いて顔を隠すようにしている結衣
祐奈「なにやってんのあんた。確か長野にお嫁に・・・」
っとあわてて駆け寄ってきて祐奈の口をふさぐ結衣
結衣「ストップーーーーー。これには深い事情が」
祐奈「はぁぁどしたの⁉」
●近くの自販機前・時間経過
ジュースを買ってフタを開ける
祐奈「なかったことに?なにそれ。そうやって相手が言ってきたの!」
結衣「うん」
祐奈「どうして?なんで?結衣はいい子でしっかり者で気が利くし、何よりかわいいのに。それなのにその相手は結衣を捨てたのかぁぁぁぁ」
結衣「わ、私も悪いんだよ」
祐奈「何があったの、話してごらん」
結衣「婚約したその日、彼が私の部屋に来たいって言って案内したの」
祐奈「うん」
結衣「そうしたら」
祐奈「うん」
●回想・結衣の部屋
呆然、唖然とした表情で結衣の部屋を見る婚約者。そこに広がる光景に。それはいたるところに大量のクマのぬいぐるみやキーホルダー、さらに美少年キャラや美少女キャラのフィギュア等々が置かれている。
婚約者「やっぱ、無理だ。ごめん結衣ちゃん」
突如逃げるように走って行ってしまう婚約者
●戻って・自販機前
クスッと笑う祐奈。
祐奈「結衣らしい」
結衣「こらっ祐奈!」
祐奈「ごめんごめん。笑いごとじゃないのはわかってる・・・結衣、これからどうするの?」
結衣「わかんない・・・何も考えられないよ・・・」
空を仰ぐ。白い雲がゆっくり流れ去る。思いにふける結衣
●喫茶店・店内
レトロ?風の店内。店長の棚橋良和と小柄な店員の楠瀬亜衣加。棚橋は料理の下ごしらえ。亜衣加はミルでコーヒ豆を引いている。
棚橋「なあ亜衣加。どうやら婚約者に逃げられた乙女がいるらしいぜ」
亜衣加「店長ダメよ。そんなデリカシーのない」
棚橋「でもよ、こんな話他にないぜ」
亜衣加「悪いのは捨てた男よ。ひどいわ」
棚橋「まあな。だがしかし乙女はあきらめていない」
亜衣加「!・・・・・っと仰ると」
得意げな顔の棚橋
●秋葉原・ストリート
メイド姿の女性がメイドカフェの勧誘チラシを配っている。チラシを受け取る祐奈。
祐奈「ねえ、結衣」
結衣「ん?」
チラシを結衣示す祐奈
祐奈「たまにはいっちゃう!!」
嬉しい表情の結衣
●同時刻・北陸地方・ラジオ局・スタジオ
パーソナリティの秦野明音(はたのあかね)がもう一人のパーソナリティとトークしている。
明音「みんな、ラジオ聴いてくれてありがとう秦野明音です」
杉野「相手役の杉野涼太です」
明音「ここ、石川県はただいま復興中です。私は県民としてラジオで皆さんに明るく声を届けていきたいです。共に進みましょう」
杉野「なんか初めからしんみりですね。でもほんとそう思いますわ」
●同・街の路地裏
壁にもたれかかり空を仰ぐフードを被った少女金澤美理(かなさわみり)。缶ジュースを飲んで軽くため息。イヤホンから明
音のラジオ。
美理М「明音は、明音はすごいよ本当・・・・・私は、何も・・・・・ない。ないんだ希望も才能も」
缶ジュースをゴミ箱に捨て、路地の奥に消える美理。
●時間経過・秋葉原 喫茶店・内
カランとドアベルがなり、結衣と祐奈が入って来る。
亜衣加「いらっしゃいませ。二名様ですね、奥のテーブル席にどうぞ」
棚橋と目配せする亜衣加。奥の席に座る結衣と祐奈
結衣「メイド喫茶じゃなくてよかったの?」
祐奈「まあ、今回はここでいいんじゃない。ここなら落ち着いて話せるしね」
結衣「ありがとう。正直私もメイドじゃなぁって思ってたんだよね」
祐奈「だよね。そう思って。それにここは素晴らしい喫茶店だしさ」
いつの間にか亜衣加が立っていて何かが入ったコップを結衣の前に置く。不思議な思いでそれらを見ている結衣。
結衣М「あれ?注文したっけ?」
●同・北陸地方・ラジオ局・スタジオ
ディレクターがqサイン。
明音「皆さん突然ですが、東京の秋葉原をご存じですか?すいません今日はちょっと石川の話題からずれてしまうんですが、秋
葉の片隅のカフェを紹介します」
すみっこ