珊瑚

一部修正しました(2024年6月1日)。

珊瑚



 誰にでも言える言葉を
 誰にも言わない。
 そんな告白の価値が
 好きという音になって
 波に拐われて、消えていく。
 それを悲しいとも
 嬉しいとも思えない、だから
 フラットな視界で涙を浮かべる。
 素足を晒して体温を下げる。
 君の為だけじゃない、
 そんな全てのことを愛して
 私は浮かぶ。
 隣に浮かぶ。
 風にはためく髪もそのままで
 要らない服も全部汚して、
 針に素直な
 あのレコード盤みたく
 昨夜の出来事を
 星砂という死骸に埋めて。



 君の前では、
 生き生きと語りたいから。




追いつく




 綺麗に拾う音程は
 いつも私の気持ちより
 鋭く、痛く、
 なのに
 遅れてくる感傷に対しては
 無関心を貫いた。
 だから
 長くなった夜の道。
 散歩に迷う一人ぼっち。
 深い森から届く鳴き声も
 ただの不安を理解した。



 適当な歌詞。
 束になる要らないもの。
 そういう希望の安売り。
 燃やして狼煙にもできない、
 だから
 何でも入る箱に納めて
 君の胸に押し付けた。
 歌えばいい。
 好きにすればいい。
 その何でもないって顔が
 少しでも歪めば。
 そう、期待していただけなのに。



 抑揚のない君の声。
 淡々と、
 読み上げてられていく「私」。
 ただ
 死んでいると思っていたのに。
 歌い手だけがそこにいた。
 喜べない絶望。
 生まれてしまう苦しみ。
 遠慮のない君は
 その全てを読み上げて、終えた。
 あとは
 好きにするだけ。
 そう笑って君は出て行く、



 追いかける。
 私は、



 何を書き、
 何を歌う。



 決まっている
 できるのは、そういう事だけだ。
 



 ランタンタン。
 ランタンタン。




 錆もしない後悔へ。




 ランタタタン。
 ランタタタン。



 彷徨って、愛の声。
 

 

珊瑚

珊瑚

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-30

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