ぼくは老ジュリエット

 1

ぼくは名もなき ジュリエット、
隣に死せる恋人の 後追いしなかったジュリエット

ぼくは名もなき ジュリエット、
青春の孤独の真空に、左足うずめてじたばた躍るジュリエット

かれは名のある かのロミオ、
若さに殉じた青春の詩人 それ信じないのがジュリエット

かれは名のある かのロミオ、
水晶にかの名が吐息する 憐れへ火と荒げ噴くのがジュリエット

ぼく等 追憶で恋人だった、ロミオは素敵な御方であった、
生きて愛してかれは死に、醜く生き抜くジュリエット

垂れ流された 宴の姫なぞであるものか!
されどかの名のかの死への 侮辱を許さぬジュリエット

  *

幾度もかの名を蹴ろうとしたが、抱き睡り泣くのがジュリエット
その俗悪の火に爛れてる、右足引き摺り歌い転げる老ジュリエット

  2

ジュリエットよ 右足で蹴ろ、硝子盤の非情を
ジュリエットよ 左足のいたみをいつまでもいため 愛していたのなら

ぼくは老ジュリエット

ぼくは老ジュリエット

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-24

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