イモリ

口の中から流れ出てきたものはイモリだった。

歯を磨くまえに軽く口をゆすいだら、黒いからだの小さなイモリが洗面化粧台のボウルを三分の二程回転して、排水口に吸い込まれていった。

イモリかと思ってびっくりしたそれは、茹でたほうれん草が奥歯に挟まっていたものだった。まるで生きたイモリみたいにボウルを転がっていった。

小学生の時分にアカハライモリを飼っていた事を思い出した。小さな虫かごに水を満たし、明らかに定員オーバーの数のイモリを入れ、餌にと思ってパンの耳をこれでもかと放り込み、それを放置。悪臭がして思い出した時にはもう全てが腐っていた。

そんな事があったものだから、事あるごとにイモリが頭もたげる。悪い事したなぁ。ごめんね。

イモリ

イモリ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-24

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