zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ37~40

エピ37・38

マンドラドラドラ

「……たく、何で俺らがこんな事しなきゃなんねんだっつーの、
岩山の洞窟の時の悪夢が蘇るわ……」
 
「あ、ガライさんかしら……、倒れてる……」
 
トリオが洞窟に向かうと、……入り口で早速ガライが凍えて
倒れて伸びていた。
 
「ガライさん、大丈夫ですか、しっかりして下さい!!」
 
アルベルトがガライを助け起こす。
 
「ごえ……、ざむくて……ご、えが……、ぢゃんど……でまぜん……」
 
「……んな格好で、ムキになって外飛び出すからさあ、たく……」
 
「ガライさん、これ、宿屋のおかみさんが作ってくれて
持たせてくれたの、温かい野菜入りのスープよ、さあ飲んで……」
 
アイシャが魔法瓶からスープをコップに注ぎ、急いでガライに飲ませた。
 
「……はあ~、生き返りました……、皆さん、有難うございます、
やっぱり来てくれたんですね……」
 
「さあ、もう気が済んだろ?宿屋に戻ろうぜ」
 
「何でですか、ジャミルさん、折角来たのに、何で帰るんですか?」
 
「ハア……!?だって、お前……」
 
「帰る必要ないでしょう、その為にわざわざ来たんですから、
中入りましょう」
 
「おい……」
 
「これは、ガライさんの気の済むまで、戻りそうもないよ、ジャミル……、
僕らがサポートしてあげないと……」
 
「諦めた方がいいわよ……」
 
だから嫌なんだと思いながらジャミルは仕方なしに、ガライの護衛で
洞窟へと入った。
 
「んで、探してる薬草の知識とか見た目とか、お前は分んのか?」
 
「全然……」
 
「あ、あの……、ガライさん……?」
 
不安になって、アルベルトがガライに声を掛ける。
 
「昔、何となく、図鑑で見た事あるような、何せ僕が幼少期の頃
でしたから……、確か名前が……、マ?マンドラ……ごんドラ……???
ドラドラピン……、メンタンピン……」
 
「俺、わりィけど先に宿屋に戻るわ……、お前らだけで好きなだけ
護衛していいからさ……、付き合ってらんねー……」
 
「だ、駄目よーっ!ジャミルが先に帰ったら大変なんだからーーっ!!」
 
「我慢してーーっ!!」
 
必死でジャミルを引っ張るアイシャとアルベルト……。
 
「放せーーっ!!俺は帰るーーっ!!むっきいーーっ!!」
 
「……そ、そうだ……、ちゃんと護衛が済んだら、暫らくぶりに又
外食行こうか、ステーキは無理だけどさ……」
 
いつもの如く、食べ物で釣られそうになり、少しだけジャミルの
気持ちが傾いた……。
 
「仕方ねえな……、ビーフシチューぐらいは頼むからな……、
パン付きのセットで……」
 
「……ほっ」
 
安心するアルベルト。どうにかジャミルを宥め、一行は洞窟の奥へと進むが、
奥へ進めば進むほど、空気はどんどん冷えてくる……。
 
「はあ、寒いね……」
 
アイシャが悴んだ手を擦って温める。
 
「大丈夫かい……?」
 
「うん、平気、でも本当に、あったかいシチュー食べたいね……」
 
段々と、アイシャも疲れてきた様子だった。
 
「おい、ガライ……、本当、お前何処まで行く気だ?もう夜なんだし、
俺らだって体力に限界があるんだぞ……」
 
「?ちょっと、待って下さい……」
 
「何をだよ」
 
「何かの唸り声がします……」
 
「モ、モンスターかしら!?」
 
アイシャとアルベルトが呪文をいつでも詠唱出来る体制で身構える。
 
 
♪ほほほほほおーっ!!おおーーっ!♪
 
 
「何なの……?この変な歌声……」
 
「うるせー声だなあ……、耳障りな……」
 
「うーん、ジャミルの歯ぎしりと鼾と、どっちがマシなんだろう……」
 
眉間に皺を寄せ、真顔でアルベルトが考え始めた。
 
「おい……」
 
「ああ、なんて美しい歌声なんだ……」
 
ガライが耳をすまし、声に聴きほれる……。
 
「あっ!?」
 
一行の目の前に現れたのは、根が足の様な、変な植物のモンスターだった。
モンスターは気色の悪い足根でぴょんぴょんとジャミル達の前を動き回る。
 
「♪ほおおーーっ!」
 
「ガライさん、これは普通のモンスターと違いますよ……、
恐らく、マンドレイク……、ではないですか?あなたが言っていた、
マンドラゴンドラ……、ではなくて、マンドレイクです……」
 
「さすが、アルベルトさんですね、知識が豊富でいらっしゃる……」
 
うんうん頷いて感心するガライ。
 
「……それ以外は全く天然で世間知らずだけどな……」
 
「オホン……!」
 
アルベルトがジャミルを横目で見、咳払いをする。
 
「確かにマンドレイクの根は色々な魔法や薬の調合等に
利用されるそうですが、一歩間違えば死の危険と隣り
合わせにもなる、恐ろしい怪物です……、
……今すぐ此処を出ましょう!」
 
「そう言うこった、何だかわかんねーけどさ……、さあ帰ろ、帰ろ!」
 
「嫌です……、帰りません……」
 
「おーいっ!?」
 
案の定、ガライの頑固拒否が始まる……。
 
「これぞ、僕の求めていた幻の薬草になるのかもしれません……、
この根を飲めば、僕の声もきっと……、美声になる筈……、
誰もが聴き惚れる様な……」
 
言う事を聞かず、ガライがふらふらとマンドレイクに近づこうとするのを
アルベルトが慌てて止める。
 
「ガライさん、お願いですから言う事を聞いて下さい!……冗談抜きで
本当に危険なんです!」
 
(さすがのアルも切れてきたかな、だから甘やかすとよくねーん
だっつーの……)
 
「何が……、どう危険なんでしょうか……」
 
「ですから…」
 
きちんともう少し細かく説明しないとガライは納得いかない
様子だった……。
 
「奴の歌声は、歌声を聴いた相手を死に至らしめる場合が
有ると云う事です、さっき僕らが聴いても大丈夫だったのは……、
偶々、運が良かったんでしょうね……」
 
「きゃー大変っ!ジャミルの鼾と同じだわっ!!」
 
「……あのな、俺の鼾は殺人かよ……」
 
「……♪ら、ら、ららららら~う……」
 
マンドレイクが2発目の奇声を発しようとするが、
アルベルトが機転を利かし素早くマホトーンで声を封じる。
 
「……ふう、何とか効いてくれて助かった…」
 
「アル、平気か?お前大分精神的に、まいってきてるだろ……?」
 
「大丈夫だよ、……でも、何とかガライさんが諦めてくれると
いいんだけどね……」
 
「きゃああああーーっ!!」
 
マンドレイクに負けない甲高い叫び声を突然アイシャが発した。
 
「ど、どうしたの、アイシャ……!!」
 
「前見て、前ーーっ!!」
 
「これは……」
 
いつの間に集まって来たのか……、前方に大量のマンドレイクが
溢れかえっていた……。
 
「ちっ、仲間呼びやがったな、んなろ……!」
 
「こんなにいたんじゃ、絶対に歌声は防ぎきれない……!!」
 
しかし、大量のマンドレイクを前にガライだけは一人、
凛々と目を輝かせていた……。
 
「仕方ない……、アイシャ、此処は僕達二人のベギラゴンで
一掃してしまおう!」
 
「ええっ!!失敗は許されないわね、ちょっと緊張かも……」
 
アイシャがアルベルトの言葉に頷いて身構える。
 
「ま、待って下さい……!一掃という事は……、根も全部
燃やしてしまうと言う事……、ですよね……!?駄目ですよ、
そんなの!!」
 
やっぱりと言うか、ガライが慌てて抵抗する。
 
「しかし、こんなに大量にいたのでは……、いずれこの数が、
更に増殖し、洞窟の外まで溢れたらどうなりますか?奴は自分の
意志を持たない恐ろしい怪物です……、そうなったら、アレフガルドの
人々が又、危険な目に曝される事になるかも知れません……」
 
「ですが、僕は……」
 
「おい、ガライさあ、お前、声帯って知ってるか?」
 
「何ですか、知ってますよ、バカにしないで下さいよ……」
 
ガライがジャミルを不満そうな顔で見る。それでもジャミルは
気にせず言葉を続けた。
 
「だな、馬鹿の俺でもそれぐらい判るよ、薬飲んで綺麗な声に
したいんだか何だか知らねーけど……、もしも声質が変わったら……、
今のお前の声……、失う事になるんだぞ、……それでもいいのかい?」
 
「ジャミルさん……?」
 
「どんな時でも、今のお前の声でずっと歌ってきたんだろうが……、
メルキドで聴かせてくれたあの歌声をさあ……、俺には今のオメーの
声の何が不満なんだか、さっぱり分かんねえよ……」
 
「……」
 
「別に聴きたくない奴には無理に聴いて貰わなくたって、いいんじゃね?
歌なんか興味ない、中には嫌いな奴だっているんだしさ、人それぞれだよ、
あんたはあんたのまんま、そのままでいいんだと……、俺は思うけどなあ……」
 
「……アルベルトさん、アイシャさん……」
 
ガライが二人に近寄って行く。そして……、こう告げる。
 
「マンドレイクの駆除を……、お願いします……」
 
「ガライさん……!!」
 
「ガライ……!お前、分ってくれたんだな!?」
 
ガライがトリオに向かってコクリと頷いた。そして、アルベルトと
アイシャの連携ベギラゴンがあっという間に全てのマンドレイクを
焼き尽くし、無事、駆除は完了した。
 
「はあ、終わった……」
 
「疲れたわ……」
 
「あまりにも増えすぎると危険すぎて、いずれ自分の身も危ねえから……、
ゾーマもこの洞窟を封印したりしてな?」
 
「さあ?それは分らないよ……、天下の大魔王に限って怖い物なんか
なかったと思うよ……」
 
「これで、ガライさんも……、宿屋に戻ってくれるかしら……?」
 
トリオはぼーっとして放心状態になっているガライを見つめた……。
 
「……はっく、しゅん……!!」
 
ガライがくしゃみをしてコテンと地面に倒れた。
 
「……ガライっ!!」
 
トリオが慌ててガライに駆け寄ると……、ガライは気絶していた……。
 
「……呼吸はしてるけど、固まっちゃってるわ……」
 
アイシャがガライの脈を取った。
 
「そう言えば、ガライさん、防寒着着て来なかったんだっけ、
又冷えちゃったんだね、……忘れてたよ……、急いで僕のルーラで
ラダトームまで戻ろう……」


新たな道へ

宿屋に戻り部屋に行くと、すっかり腹痛の治まったダウドが
チビと遊んでいた。
 
「あ、お帰りー!」
 
「きゅっぴー!ぴゅぴー!」
 
「呑気だな、お前ら……、ま、いいけどさ……」
 
「ただいま……」
 
ジャミルに続いてアルベルトも部屋に入ってくる。
今回はガライのサポートも彼が熟した為か、相当疲れている。
 
「アルもお帰り……、って、大分疲れてるみたいだねえ……」
 
「ふう、疲れたなんてもんじゃないよ……」
 
「じゃあ、チビがお疲れさま、してあげるね!」
 
チビが二人の側に飛んでいき、顔をペロペロ舐めた。
 
「ありがとな、チビ……」
 
「チビ、ありがとうね」
 
「きゅっぴ!」
 
「……ほらっ、ガライさん、入ってよ、早くっ!!」
 
続いて、ガライを引っ張りながらアイシャも男衆の
部屋にやって来る。
 
「あー、アイシャも帰って来たー!お帰りなさいー!!」
 
「きゃあ♡チビちゃーん!ただいまー!お帰りの挨拶
ありがとねー!うれしいー!!」
 
アイシャがチビをぎゅっと抱きしめスリスリする。
 
「あの、僕は……」
 
「ほらっ、早く中に入ってったら!」
 
アイシャが廊下で立ち往生しているガライを更に強く無理矢理
引っ張り部屋に入れる。
 
「あっ、辛いのお兄さんだあ!」
 
「……チビさん……?でしたっけ……?僕は辛いではなくて……、
ガライです……」
 
「お歌うたってー!チビ、カレーお兄さんのお歌ききたいー!!」
 
「ですから……、何でそうなるんです……、僕はカレーでもないし、
辛くもな……うわ!」
 
チビがガライの顔をペロペロ舐めはじめた。
 
「信頼してる人には顔をペロペロするんだよおー、チビちゃんは!
ガライさん、すっかり気に入られたねー!」
 
「あうわ、あわわわわ!」
 
「ガライさん、ちょっとお願いがあるの、いいかしら?」
 
アイシャが手を後ろに組んでにこっと笑い、ガライの顔を覗き込む。
 
「はい……?」
 
「そろそろ、チビちゃんもおねむの時間なんだけど、……ガライさんの
子守唄……、聴かせてあげてくれないかしら?」
 
「僕がですか?チビさんに……?」
 
「きゅぴいー!」
 
チビが尻尾ふりふり、ガライにちょこんと抱き着く。
 
「分りました……、僕の歌で良かったら……」
 
ガライが椅子に座ってチビを抱き、子守唄を歌い始めた。
……透き通った美しい歌声が部屋中にこだまする……。
 
「これだよ、これ……、これでいいのさ……」
 
ジャミルも両腕を頭の後ろで組み、ベッドに仰向けで寝転がる。
 
「ホント、いい声よね~……」
 
「うん、本当に何ともいえないね……、この歌声……」
 
「zzzz……だよお~」
 
 
「ぴきゅ……」
 
「おや?チビさん、眠ってしまいましたね……」
 
ガライが眠っているチビをそっとアイシャに手渡す。
 
「ガライさん、本当にありがとう……、すっかりチビちゃんも
ガライさんの子守唄で今夜は幸せいっぱいでお眠りタイムよ……、
うふふ、いい夢みてね、チビちゃん……」
 
「いえ、そんな……、僕の歌がお役に立ったなら、嬉しいです……」
 
アイシャに喜んで貰い、ガライが顔を赤らめた。
 
「じゃあ、皆、私、自分の部屋に行くね、ガライさんも
今日はありがとね!」
 
チビを抱いてアイシャが皆に手を振り、自分の部屋に戻って行った。
 
「ダウドも……、ほら、ちゃんとベッドで寝るんだよ、
又お腹冷やすよ……」
 
「う~ん……、気持ち良すぎて……、つい……」
 
アルベルトがダウドを突っついて注意する。
 
「ガライ、俺らももう休むけど……、お前は今日の分、
宿とってあんのか?」
 
「いえ……、此処に長居する予定ではなかったので……」
 
「やっぱりな……、俺らの部屋で良かったら寝れば?そこら辺でゴロ寝に
なっちまうけどよ……」
 
「あ、一緒にいいのでしたら……、このまま僕は椅子で休ませて頂きます、
後で僕の分の宿代はきちんとお支払致しますので……」
 
「そうかい?んじゃ……、ランプ消すけど……」
 
部屋の明かりを消して、皆が横になる中、ガライは椅子に座り、
ある決意を考えていた……。そして翌朝、アイシャがチビを連れ、
皆の部屋にやって来る。
 
「お前、最近腹も立派になったなあ……、食い過ぎだろう……」
 
ジャミルがチビのお腹をポンポン叩くといい音がした。
 
「きゃぴーっ!」
 
お腹を叩かれ燥ぐチビ。
 
「もう、ジャミルったら!チビちゃんのお腹は太鼓じゃないのよ!!」
 
「ジャミルさん、あなた音感がないのでは?」
 
ガライがぬっと横からしゃしゃり出てくる。
 
「何だよ!」
 
「こうですよ、……ポポンポポン、ポポポポン……と、」
 
ガライまで調子に乗ってチビのお腹を叩き出した。
 
「……もうっ!しょうがないんだから!!」
 
と、言いつつも……、実は自分もちょっと叩いてみたいアイシャだった……。
 
「ふざけてないで、僕らも今日からは本当に真面目に
情報収集始めないとね……」
 
「情報収集ですか……?また、何かあったのですか……?」
 
ガライがアルベルトを見て、不思議そうに首を傾げる。
 
「うん、……ダウド……」
 
「はーい、アル、わかったよお、アイシャ、バッグ貸してくれる?」
 
「はい、気を付けてね」
 
ダウドがチビをバッグの中に入れる。
 
「さあ、チビちゃん、オイラと朝のお散歩に行こう!」
 
「うわーい!ダウとお散歩ー!!チビ、お花さんに、
こんにちはしたーい!」
 
「そんなに時間掛らねえと思うけど……、頼むな」
 
「うん、ちょっと一回りしてくるよ、行ってきまーす!」
 
「きゅっぴー!」
 
ダウドとチビのコンビは元気に外に出ていく。
 
「チビさんがいると、何かまずいので……?」
 
「それなんだけどな……」
 
ジャミル達はこれまでの経緯をガライにも全て話し、
聞いて貰う。
 
「そうでしたか、あのチビさんが……、確かに見ていると物凄く
知力の高いドラゴンだと言うのは判るような気がしますね……」
 
「まだ、はっきりと確定した訳じゃねえけど、恐らくな……」
 
「それで、上の世界へ又戻られると……」
 
「ああ……」
 
「普段、エヘラエヘラのお気楽顔のあなたがやけに
真剣なお顔をされているから、何事かと思いましたが……、
そう言う事情がおありだったのですね……」
 
「……悪かったな、どうせ、おりゃあ普段はこういう
ふざけた顔だよっ!!」
 
「ですが、そうなると……、今後はチビさんにお会いになるのも
難しくなるのでは……」
 
「……お別れは辛いけど……、でも、もう皆で決めたの……、
チビちゃんの未来の幸せの為に……」
 
「皆さんも……、色々とご決断されているのですね……」
 
ガライが静かに椅子から立ち上がる。……そして、じっと
窓の外を眺めた。
 
「ガライさん……?」
 
「……アルベルトさん、皆さん……、僕も、もっと頑張らねば……、
まだまだ修行が足らないですね……」
 
「あの、オイラだけど……」
 
ダウドが部屋のドアをノックする。もう散歩から戻って来た様である。
 
「ダウドか……?」
 
「うん、話終わったかな?」
 
「大体な、ガライにも聞いて貰ったよ」
 
「えへへ、それじゃ大丈夫だね……」
 
チビを抱いたダウドが部屋に入って来る。
 
「チビちゃん、お散歩楽しかった?」
 
アイシャが聞くとチビが嬉しそうに答えた。
 
「うん、ダウが雪で滑ってずるって転がったのー!」
 
「……ちょ、チビちゃんてば、もう……」
 
「チビさん、今度は是非僕と一緒にお散歩のお相手を……」
 
「うん、行こうー!辛いのお兄さんとー!お散歩しようねー!」
 
「そういう事で、では……」
 
ガライがチビを連れて外に出て行こうとする。
 
「……コラ待て……!」
 
「冗談ですよ……、さて、僕も皆さんにご報告しようと思った事が
ありまして……」
 
チビをジャミルに返してガライが真面目な顔をする。
 
「きゅぴー?」
 
「僕、一度……、これから実家に帰ろうと思います……」
 
「ガライ……」
 
「まだちゃんと両親と向き合って話し合っていませんし、
全てはそれからです……、きちんと両親と話をしてから、又、
一から出直そうと思います……」
 
「そうだな……、やれやれ、やっと長い家出も終わるか……」
 
「……ええ、本当に長い遠回りでしたが、こんな素直な気持ちになれたのも
ジャミルさん達のお蔭です……、本当に有難うございました……」
 
最後の挨拶で、ガライが皆に深々と頭を下げた。
 
「……良い歌が歌えるといいですね、頑張って下さいね……」
 
「はい、アルベルトさんも……、大変お世話になりました……、
ですが……」
 
「?」
 
去り際に、ガライがジャミルにつかつかと近寄って行く。
 
「……早く伝説になって下さいね、ジャミルさん……、
一刻も早く……、僕の歌の為に……」
 
「だ~から~!……無理言うんじゃねえよお~……」
 
「ジャミルったら……、最後までガライさんに押されっぱなしねえ……」
 
呆れながらアイシャがくすくす笑った。
 
「ほんとだよお……」
 
「あはは……」
 
そして……、ガライはラダトームを去って行ったのだった……。

エピ39・40

不思議な出会い

ジャミル達はラダトームの彼方此方で色々と奇跡の扉について
情報収集してみるが……、誰も詳細について知っている者はおらず……。
 
 
「さあねえ、聞いた事ないよ……」
 
「悪いけど、忙しいから……」
 
 
「はあ、厳しいなあ……」
 
誰にも相手にして貰えず、ジャミル達は肩を落とす……。
 
「きゅぴ~……、チビ、お腹……、ぎゅるぎゅる……」
 
「ジャミル、チビちゃんがお腹空いちゃったみたいなの……」
 
「え?もうかよ……、宿屋で飯貰ってからまだそんなに時間立ってないぞ……」
 
「ぴい~……」
 
「ねえ、ジャミル、チビ、何だか又少し大きくなったみたいな
気がしないかい?」
 
アルベルトがそっとチビに触れてみる。
 
「……」
 
「私達の知らない処で、どんどん大きくなっていっちゃうね、
チビちゃん……」
 
何となく切なげな表情でアイシャもチビを見つめた。
 
「とりあえず、ジョニーの所行くか……、気を揉んでてもしょうがねえ……」
 
情報収集は後回しにして、取りあえず4人はジョニーの経営する
路地裏の武器屋へと向かう。
 
「……あれ?誰だい……」
 
店の前でエプロンをした見知らぬ女性がほうきでさっさか掃除をしていた。
 
「従業員さんかしら……」
 
「……?あ、お客さんでしょうか……」
 
女性はジャミル達に気づくと店に入って行く。暫く立つと、
店からジョニーが出て来た。
 
「ジャミルさん……?ジャミルさん達ではないですか!」
 
「よお、元気だったか?」
 
「ジャミルさん達もお元気でしたか?あれからラダトームに
お顔を見せなかったので、どうなされたのかと心配していたんですよ……」
 
「お友達だったんですか?あなた……」
 
店の奥から又さっきの女性が顔を出した。
 
「ん?あなた……?」
 
「あ、紹介します……、僕の奥さんです」
 
「初めまして、ジョニーの家内です」
 
「……マ、マジで……?所帯持ったのか……」
 
「はい、昨年めでたくゴールイン致しました……」
 
照れ臭そうに……、ジョニーが奥さんの肩を抱いた。
 
「うわあ!おめでとうございます、ジョニーさん!!」
 
アイシャが嬉しそうに二人を祝福する。
 
「おめでとうございます!」
 
「おめでとうだよお!」
 
アルベルトとダウドもお祝いの言葉を掛ける。
 
「……本当に、時間の流れってあっという間だよな……、ヘッ……」
 
ジャミルがくしゅっと鼻をこすった。ジョニーは4人を
店の中へと招き入れ、リビングへと案内する。奥さんは早速
おもてなしの準備を始める。
 
「僕も、色々とあった訳でして、あ、家内は店に来てくれた
お客さんでありまして、こうしてご縁があって、出会いまして……、その……」
 
ジョニーのノロケ話が始まったらしい……。
 
「あ、すいません、この話になると、つい……」
 
「いや、幸せそうで何より……、処で国王さんは……?」
 
「ああ、陛下は漸く城の方へお戻りになられました」
 
「そっか、じゃあ今は城の方に戻ってるんだな……」
 
「皆さんの事もとてもご心配されていました様ですし、
折角ラダトームに来られたのですから、お城の方にも
是非、顔を出してあげて下さい……」
 
「きゅぴ!チビ、顔出したよお!」
 
バッグからチビが顔を出した。
 
「……こ、こら……!駄目だろが……!」
 
「おや……?何と……!ドラゴンの子供ではないですか……!
モンスターの育成ボランティアでも始めたので……?」
 
この夫婦も全然動じず、チビを珍しそうに眺める。
 
「少し違うんだけどさ、色々あってな……、話せば長くなるけど……」
 
「まあ、可愛いわねえ……、ふふ……」
 
奥さんがチビをなでなですると、チビも嬉しそうに奥さんにスリスリ。
 
「随分と人懐っこい子ですね、本当に可愛いわ……」
 
ジャミルはジョニー達にもこれまでの経緯を聞いて貰う事にした。
チビに聞かれたくない話は除き……、大体を簡単に説明する。
 
「そうでしたか、色々と大変だったのですね……、しかし、
奇跡の扉ですか……、難しいですね……、聞いた事もありませんし……、
なあ……」
 
「ええ……」
 
ジョニーが奥さんと顔を見合わせる。
 
「やっぱり、難しいのかな……」
 
「そうよねえ……」
 
「ダウー、ダウー、遊ぼー!」
 
チビがダウドの頭によじ登り、遊び始めた。
 
「チビちゃん、駄目だよお、今は大事なお話してるんだからね……」
 
「きゅぴ~……」
 
「可愛いわねえ、私達の子供もこんな風に元気に可愛く育って
くれるといいわね……」
 
「そうだなあ……」
 
「……ジョニー……、あんた、手も随分早いなあ……」
 
ジャミルが目を丸くして夫婦を見た……。ジャミルの目線はじっと……、
奥さんの膨らみ掛けたお腹に釘着けである……。
 
「あはははっ!ですねえー!」
 
ジョニーが照れてまた頭を掻いた。
 
「とにかく一度、王宮にも顔を出して見て下さい、国王様なら
何か力になって貰えるかも知れませんよ?」
 
「そうするか、んじゃ俺達はこれでお暇するよ、新婚さんの
邪魔しちゃ悪ィしな……」
 
からかう様な顔でジャミルがジョニーを見ると、顔を真っ赤にして
ジョニーが慌てた。
 
「そ、そんな事ないですよ、もう……!いつでも遊びに来て頂いて
構わないですから……!」
 
「へいへい、それじゃ、また……」
 
「お気をつけて……」
 
夫婦に見送って貰い、4人はラダトーム城へ……。
城兵はジャミル達の顔を見ると、喜んで謁見の間まで通してくれる。
 
「……おお、勇者達よ……、久しぶりであった……、ゾーマを討伐後、
行方が判らぬ様になったと聞いておったので心配しておったのだ……」
 
「その名称で呼ばれんのも久々だわ!俺、勇者だったんだっけ?
んなモン、すっかり忘れてたわ!はっはー!」
 
ラルス国王の前でもマイペースなジャミルであった……。
 
「……メルキドの神父さんの処でも、ちゃんとそう呼んで貰ったでしょ……」
 
アルベルトがジャミルの脇腹を突っつく。
 
「だって、どうでもいいんだもんー!」
 
「……もう、ジャミルったら……!」
 
「そなたも相変わらず、元気そうで何よりであった、安心したぞ……」
 
「はっはー!俺は元気だよー!ははっはははは!」
 
「……申し訳ありません、陛下……、ですが、陛下もお元気そうで
本当に良かった……」
 
「うむ、何も変わらぬと言う事は……、本当に素晴らしい事よの……」
 
「いてーな!頭抑え付けんじゃねえっての!腹黒っ!」
 
「うるさいっ!バカジャミルっ!!」
 
アルベルトが軽調子ジャミルを注意するが、それでも国王は
優しく温かい目で4人をずっと見つめている。城内には大勢の
人間が沢山いる為、流石にチビも今はバッグの中で大人しく寝ている。
 
「それでさ、今日はちょっと国王さんに聞きたい事があって……、
尋ねて来たんだけどさ……」
 
「ふむ?……儂の知っている知識で良かったら力になるが?」
 
「……上の世界へ戻れるかもしれない……、奇跡の扉って知ってる?」
 
おずおずとジャミルが国王の顔を見る……。
 
「……判らぬ、すまぬ……」
 
「駄目か……」
 
4人そろってがっくりくる……。難しいだろうとは分かって
いたものの……。
 
「上の世界へと言う事は……、戻りたいのだな、そなた達の
故郷でもあるな……、うむ、気持ちは分るぞ……」
 
「う、うん……」
 
ただでさえ毎日大変な国王を混乱させない為、チビの話などは
国王には話さず、控えめに伝えておく……。
 
「ふむ、しかし、この城の地下に色々と昔の文献や本などが集めてある
資料室が有る……、良かったら利用してみるとよい……」
 
「ええっ、宜しいのですか、陛下……!!」
 
本大好きのアルベルトが目を輝かせる。
 
「うむ……」
 
「アルってば……、本と聞いた途端、いきいきし過ぎだよお……」
 
「本当ねえ……」
 
しかし、アルベルトとは趣味が対照的なジャミルは……。
 
「うえっ、俺、本は嫌いだ……、せめて漫画ならいいけど……」
 
「我慢しなさいよっ、チビちゃんの為なんだから……」
 
「うええっ……」
 
そして、4人は許可を貰い薄暗い城の地下へ降りる。
 
「……はあ、凄いなあ、此処……、この世界の歴史が一目で
解るかも知れない……」
 
「はえ~、オイラ、全然わかんないやあ……」
 
「アル……、奇跡の扉の方の資料探してね?お願いだからね……」
 
本の事になると夢中になり過ぎるアルベルトをアイシャが心配する。
 
「だ、大丈夫だよ……」
 
と、言いつつも片っ端から色んな本を漁ってみたくて
しょうがないアルベルト。
 
「?ちょ!ジャミルってば、こんなとこで寝ちゃだめだよお!」
 
「駄目なの……、俺、本見ると……何とも言えない……、だるさと
眠気と頭痛と睡魔が俺を襲うんだ、もう駄目だ……」
 
「ジャミル、眠気と睡魔は同じ様な物よ……?」
 
アイシャが突っ込んでみる。
 
「皆の者……、儂亡き後、後は頼むぞよ……、がくっ……」
 
「ザメハ……!」
 
「あ、何だよ……、目が覚めちまったじゃねえかよ……!」
 
「皆で探さないと……、この膨大な資料の山からね……」
 
「……ちーくしょー!ちーくしょー!ブブッブブーだ!」
 
「豚さんは養豚所へどうぞ……」
 
「……誰が豚だっ!バカダウド!!」
 
「きゅ~ぴ~……、チビ……、おしっこ……、と、うんち……」
 
チビが寝起きで突然ぐずりだす……、そして、排泄も……。
 
「ええっ!?ま、また……、チビちゃんてば!」
 
「きゅぴ~……」
 
「アイシャ、大丈夫だよ、僕らで調べておくから先に
チビをトイレに連れて行ってあげて……」
 
「う、うん、すぐに戻ってくるから!」
 
「ちっ、……ずりいな、チビの奴……」
 
そして、アイシャは城の外へ出て、どうにか無事にチビを
町の公衆トイレに連れて行く……。
 
「はあー、間に合ったわあ、良かったああああ~……」
 
「アイシャ……、スラ太郎がいないよ……?」
 
「えっ?えええーっ!?大変っ、さっき急いで走ってた時に
何処かへ落しちゃったのかな……、どうしよう……、早くお城にも
戻らなきゃならないし……」
 
「きゅぴ~……、ごめんなさい……」
 
「別にチビちゃんの所為じゃないわよ、ほらほら、そんな顔しないの!
でも、もしもチビちゃんを落しちゃったらもっと大変だったわよ……、
はあ、駄目ねえ、私ってそそっかしいから、えへへ!」
 
「きゅぴ~……」
 
それでもチビはアイシャが無理をしているのが解り、
悲しそうな顔をする……。
 
「もしかして、これはお嬢さんのぬいぐるみですか……?」
 
「えっ……?」
 
見た目は若いが、髪の色が白髪の様な青年がこちらにブーツの
足音をツカツカと立て、近づいて来た。
 
「あっ……、そ、それ……!私の大事な人形なんです!!落しちゃって
困ってて……、良かったー、ありがとうございます!!」
 
チビをバッグにさっと隠して、アイシャが何度も青年にお礼を言った。
 
「随分と、大事になされているのですね、その人形……」
 
「はい、大好きな人から貰った……、その……、私の宝物……、
なんです……」
 
スラ太郎を握りしめ、アイシャが顔を赤くする。
 
「ふっ、ごちそうさまですか……、お若いですね……」
 
「え?……あの、その……、あは……」
 
「ところで、お嬢さん……、一つお聞きしても良いですか?」
光と闇って……平等だと思いますか……?」
 
「……はい?」
 
青年のいきなりな突拍子もない質問にアイシャが戸惑う……。
 
「以前、このアレフガルドは大魔王ゾーマによって、闇に
覆われていたでしょう?その時は、皆、闇を嫌い……、早く光を
求めていたじゃないですか……、闇ってやっぱり邪魔なんですかね……」
 
「あの、質問の意味がよく判らないんですけど……、でも、夜寝る時は
暗くないと困るし……、やっぱり、闇も光も平等に来ないと駄目なんじゃ
ないですか……?」
 
「平等ですか……、成程……」
 
青年がじっとアイシャを見る。
 
「……」
 
「分りました、お嬢さんはそうお考えなのですね……、では、
僕はこれで……」
 
「あ、あの……」
 
謎の青年は纏っている黒いコートを着直し、そのまま何処かへ去っていく……。
 
「はあー、スラ太郎拾って貰って助かったけど、変わってる
イケメンさんだったわ……、やっぱり、イケメンさんてちょっと
癖のある人が多いのかしらね……」
 
「チビ、あの人のお顔舐めたくない……」
 
「あら?チビちゃんが拒否するって言う事は……、あまり良くない
感じなのかしら……」
 
「変なニオイがぷんぷんしたよお……」
 
「そう言えば、強烈なコロンの臭いしたわね、あはは!そう言う事ね!」
 
「きゅぴーっ!」
 
「さあ、遅くなっちゃうと困るから、お城へ戻りましょうね!」
 
アイシャはチビを連れ急いで城へと掛けていく。……その様子を
先程の青年が見つめていた……。
 
「……光は……、要らないのさ……、闇だけで充分なんだ……」


トラブルは何処までも……

「駄目だな……、此処の本、片っ端から漁り捲ったけど、奇跡の扉に関する
情報なんか載ってるのは一冊もねえぞ……」
 
「僕の方も……、色々とこっちの方の資料を見てみたけど、何処にも……」
 
「目が痛くなってきちゃったわ……、ここ、カビと埃くさいし……」
 
「きゅぴっぴ、ぴい~、お山が出来たよ!」
 
「こ、こら……!チビちゃん……!本でタワー作って遊んじゃダメだよおー!!」
 
「はあ……」
 
4人は相変わらず情報収集に悪戦苦闘しており、チビも悪戯する為、
全然作業進まず。
 
「とてもじゃねえけど、この量を一日で調べるのは無理だわ……」
 
「又、何日か宿屋から通いづめかな……」
 
「今日はもうよそうぜ、あーやだやだ!」
 
本を棚に戻してさっさとジャミルが退室する。
 
「ジャミルってばもう……、仕方ないね、僕らも戻ろうか……」
 
「うん……、もう日も暮れるわね……」
 
「だけど……、もし……、ここの資料を全部読めたとして……、
奇跡の扉に関する情報が全然見つからなかったとしたら……?」
 
「今からそんな恐ろしい事言わないんだよ、ダウド……」
 
アルベルトが眉間に皺を寄せた……。
 
「ご、ごめん……」
 
「チビちゃん、遊んだら本はきちんと片づけなきゃ駄目よ、本当は
本をおもちゃにして遊んじゃいけないんだからね……?」
 
「きゅっぴ!はーい!」
 
アイシャが注意するとチビは無邪気に元気よく片手を上げるのであった。
本日の作業を終了し、ラルス国王に礼を言うと4人は城を後にする。
 
「……姉ちゃん、姉ちゃん、ちょっと、ちょっと……」
 
帰り道、町を歩いていると、薄汚い子供がアイシャの側に近寄って来た。
 
「なあに?何か用?」
 
「その姉ちゃんが下げてる入れモンから美味しそうな匂いがすんな、
ちょっと見せてくれよ……!」
 
子供はいきなりアイシャが下げているバッグを引っ手繰ろうとする。
 
「……こ、これは駄目よっ……!やめて!食べ物なんか入ってないったら……!」
 
アイシャが慌ててバッグを庇うが、子供はバッグを引っ張るのを止めない。
 
「ちょっとぐらいいいだろっ!……な、中身見せろっ!」
 
「お願い、やめて!引っ張らないで……!!あっ……!?」
 
それでも子供は無理矢理、チビの入っているバッグを乱暴に掴み、
引っ手繰ろうとした……。
 
「コラ!ガキャ!!いきなりなんだ!!」
 
等々ジャミルが飛び出し、子供を一発ぶん殴った。
 
「……いってえー!何しやがんだ!この短足エロ親父ーっ!!」
 
子供は頭を押さえてジャミルに悪態をついて逃げていった。
 
「短足だとう!?バッキャローっ!俺あ短足じゃねえやい!
それにまだ全然親父っつー歳じゃねえぞっ!!エロも余分だーーっ!
もっとよく人の顏見て物を言え、馬鹿ガキーーッ!!」
 
「うるせーバーカ!」
 
4人から遠く離れたところで子供が半ケツを出し、おしりぺんぺんを
した後、おならをして逃げて行った。
 
「ハア……、びっくりしちゃった……、いきなりストレートに
ひったくりなんだもの……、でも、チビちゃんが無事で良かった……」
 
「きゅぴ!」
 
アイシャがバッグの中のチビを見て、ほっと一安心する。
 
「身なりからして、浮浪児かな……、ラダトームにもいたんだね……」
 
「でも、あの子、なんか感じがジャミルに似てたよね……」
 
「はあ?じょ、冗談言うなよっ、バカダウド!!」
 
「そうね……、口の悪いところとか……、何となく憎めない感じとか……」
 
「似てねーよ、全然似てねー!……似てませんっつーの!!」
 
やけに大声を上げて否定するジャミルの姿に他のメンバーが笑いだした。
 
 
しかし……、4人の明るい雰囲気と裏腹に……、町の酒場で……。
 
「アニキ、確めて来たよ、ありゃ本当にドラゴンだったぞ……、
だって……、おれ、見たんだもん……、あの姉ちゃんが昼間小っちゃい
ドラゴンと話してたのをさ、ぬいぐるみかなと思って見間違いかもと
思ったんだけど……、バッグからドラゴンが顔出して話してたんだよ、
本当だよ……」
 
「坊主、本当だな……?」
 
「間違いねえよ、……ほら、情報料くれ……」
 
「ほらよ……」
 
男の一人が子供に小銭を渡すが、渡された小銭を見、子供は
不服そうな表情をする。
 
「これだけかよ、これじゃ駄菓子もろくに食えねえぞ……」
 
「甘ったれんじゃねえよ、世の中は厳しいんだよ、本当に金が欲しきゃ
今度は本当に証拠としてその喋るドラゴンを捕まえてこい、そしたら金と
引き換えだ……」
 
「よ、よし、約束は守れよ……、おれ、本当にドラゴン捕まえてくるからな、
金くれよな……、本当にだぞ……、ビビっても知らねーかんな!」
 
子供は慌てて再び酒場の外に走って行く。子供が消えた後、男達は
声を揃え大笑いする。
 
「ふふ、まだケツの青いガキは可愛いねえ、馬鹿でよ……」
 
「ほんとさあ……」
 
さて、これから又もう一悶着起こりそうなのを知らず、4人は宿屋の特室で
チビも一緒に食事を取っていた。
 
「本当に、此処のご主人とおかみさんていい人だよねえ……、
チビちゃんの為に、わざわざ個室の食事部屋を提供してくれてさ……」
 
「うん、感謝しないとね……、ね?チビちゃん?」
 
「きゅっぴー!チビ、宿屋のおじちゃんとおばちゃん大好きー!」
 
「お前、嫌いな奴いないだろ?小悪魔だって結局、懐いちゃったしよ……」
 
「素直な処がチビのいいところだよ、だから皆に可愛がって
貰えるんだよ、ね?」
 
アルベルトがチビに微笑みウインクする。
 
「ぴゅっぴ!チビ、もっと皆と沢山お友達になりたいよお!」
 
「本当だよ、ジャミルもチビちゃん見習って素直になりなよ……」
 
「うん、本当、そうだよなあ……、って、うるせーよ、バカダウド!」
 
「あいたっ!」
 
今年も全く、やる事なす事進歩せず、相も変わらない悪友コンビの
二人であった……。そして、宿の外では、先程の子供が一行を見張って
ウロウロしていた。
 
「奴ら、確かに此処に入って行くのを見たんだよな……、兄ちゃん達は
手強いけど、あの女だけなら、何とか……、ああ~!どうにかしてあの女だけ
引っ張り出さないと!でも、どうしよう、……あれ?」
 
子供が悶えている処、別の客が宿屋へと入って行く。
 
「ごめん下さい、夜分……、申し訳ありません……」
 
「はい……?」
 
 
4人は食事のお礼を言おうと、一旦チビを部屋に置いてロビーへと向かう。
 
「知りませんかね……?ほんの少しの情報でもありましたら、
何か教えて頂けると大変有難いのですが……」
 
「はあ……、ですが……」
 
「……何かあったのかい?」
 
「ああ、ジャミルさん達……、この方……、密猟者を追われている方……、
なんだとか……」
 
おかみさんがジャミル達に宿に訪れた中年の男性を紹介する。
無精髭のダンディな中年男性がジャミル達の方を見て、挨拶した。
 
「初めまして、実は私、数年前から一人で密猟者を追っている者です……、
近年の奴らの横暴には我慢出来ません……、一つでも多く、奴らの組織を
壊滅させたい……、そう願い、日夜戦っております……」
 
「ひ、一人でえ……?凄すぎだよお……」
 
「……私……、嫌……、駄目……」
 
密猟者と聞いて、又あの時の記憶がフラッシュバックしたのか、
アイシャが震えだし、その場にしゃがみ込んでしまった。
 
「アイシャ、大丈夫か?部屋でチビと休んでろよ……、話は
俺達が聞いておくから……」
 
「うん、……有難う……、ごめんなさい……」
 
アイシャは先に部屋に戻って行く……。
 
「お嬢さん、御気分が悪いようですが、何かあったのですか?」
 
「うん、あんたが密猟者を追ってるって言うんなら……、
話聞いて貰っても大丈夫だよな……」
 
アルベルト達も頷いてジャミルを見た。
 
「そちらも、何か深い事情がおありの様で……」
 
おかみさんに又特別部屋を貸して貰い、これまでの出来事を男性に話す。
 
「そうでしたか、それでお嬢さんは心にずっと傷を負われて
いるのですか……、おかわいそうに……、ですが本当に悪いのは
奴らです、どうかご自分を責めない様にと伝えて下さい、いつまでも
ご自分を責めてもそのドラゴンは悲しむだけだと……」
 
「そう言ってんだけどな、中々……、あいつ傷つきやすいし、
一旦気にするとさ……」
 
「しかし、最近の密猟者集団の力は本当に厄介なのです……、
元、職業密猟者ですから……」
 
「しょ、職業密猟者……???」
 
「ダーマの神殿にて、転職し、神から授かった聖なる力を使い……、
悪行へと……、間違った使い方をするのです……」
 
「ああ、そう言う事か、なるほど、魔法の力とかを誤った
方向に使ってんのか、そりゃ普通のと違って厄介な相手だなあ……、
最近は密猟者も本当に凶悪になったって聞いてたけどよ、どうりで、
あのドラゴンがあんな瀕死になってた筈だ……」
 
「悪い事は幾らでも思いつくんだねえ……」
 
「本当だよ、呆れて物も言えないよ……」
 
「けどよ、ダーマ神殿は上の世界にあるんだから……、て事は、
つまり……、奴らは俺らと同じ、上の世界からわざわざ悪さしに
流れてきてるって事なのかな……」
 
「だろうね……」
 
「回転寿司で、流れて来なくてもいいモンばっかり流れてくるのと
同じかな……」
 
「ダウド、例えが良く判らないんだけど……」
 
アルベルトがいつも通り眉間に皺を寄せた。
 
「最近、この近辺に奴らのグループが現れたと聞いて、調査に
此処まで来たのですが、まあ、密猟に限らず手に入れた力を悪用に
使う輩は今の時代、何処にでもいますので……」
 
「おっさん、俺達で出来る事があるんなら協力するよ、近場に
いるっつーんならさ、とっとと捕まえちまおーぜ!その方がチビも
安心だしな……」
 
「……協力して頂けるのですか……、忝い……」
 
男性がジャミル達に頭を深く下げ、宿屋から去って言った。
 
「でも、奇跡の扉は?どうするのさあ、探すのますます
遅くなっちゃうよ……」
 
「とりあえず、又後回しになっちゃうけどね、仕方ないよ……」
 
「うん……」
 
と、返事をするダウドだが、チビとお別れ……、離れるのがもう少し
先延ばしになるかもと思うと、本当は何となく嬉しくなるダウドだった。
そして……、先程の子供が又酒場へと走って行く……。
 
「アニキー!アニキー!」
 
「なんだ、騒がしいな!ドラゴンは捕まえたのか!?」
 
「……そうじゃねえけど……、大変なんだ!今、宿屋の外で奴らを
見張ってたら……、密猟者を狙ってるおっさんが現れたんだ!!」
 
「そうかい、そらあ大変だな、はは……」
 
「ははは……」
 
「な、何笑ってんだよ、他人事みたいにさあ……」
 
そして、話は更にややこしい方向へと縺れていく……。

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スーファミ版ロマサガ1 ドラクエ3 続編 オリキャラ オリジナル要素・設定 クロスオーバー 下ネタ 年齢変更

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-13

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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  1. エピ37・38
  2. エピ39・40