zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ33~36

エピ33・34

踏まれても蹴られても

「……何ここ……、何処だろう……?」
 
「お墓?……があるわ……」
 
「降りろー!アルー、アイシャー!」
 
上に二人、乗っかられたままジャミルが喚く。
 
「お前が先に降りろりゅー!このナウマン象共めがー!!
お前ら併せて一体体重が何トンあるのりゅー!!」
 
更にその下になっている小悪魔ダウドが吠える。
 
「……何トンて……、失礼にも程があるわっ!!」
 
組体操状態で、一番上のアイシャが怒鳴った。
 
「じゃあ、マンモス3バカ兄妹の方が良かったかりゅ!?」
 
「……」
 
「……あっ!チビちゃん!」
 
アイシャが反応的に、倒れているチビの姿を見つけ、チビを
助けようと上から急いで飛び降りた。しかし、小悪魔ダウドも
素早く下から抜け出ると邪魔をし、先にチビを捕えてしまう。
 
「……このドラゴンは、お前らに渡さないりゅよっ!」
 
ジャミル達も体制を整え、小悪魔ダウドを睨む。
 
「オメーが何でチビを狙ってるのか知らねえけど、ダウドもチビも、
ちゃんと返して貰うからな!!」
 
ジャミルが背中の鞘から王者の剣を抜いて小悪魔に付き付ける。
 
「オウ!やれるモンならやってみやがーれりゅ!」
 
小悪魔も対抗し、自身の持っているフォークの矛先をジャミルに向ける。
……両者が互いに睨み合うのを見ていられない、小悪魔に取りつかれた
精神体のダウドは苦しむ。
 
(くっ、……何とか……、皆に話をしないと……、決して
小悪魔だけが悪いんじゃない……、でも……、どうやって
オイラの身体から小悪魔が離れるの……)
 
「……んっ、んーっ!くっ、くーっ!」
 
小悪魔の中のダウドは……、何とか自分の本体を
取り戻そうと踏ん張ってみるのだが。
 
「何だ?ダウド!どうした!?おいっ!!」
 
「こいつ……、無理矢理身体からリトルを引き離そうと
してるりゅね、……そうはいかんりゅ……」
 
(小悪魔っ!……リトルっ!駄目だよっ!!)
 
「ヘタレ、お前……、何がりゅ……?リトルに説教したいのりゅ?」
 
(ちゃんと皆に説明しなきゃ……、誤解されたままになっても
いいの……?)
 
「……余計なモン見たりゅね!うるせー奴りゅ!!お前には
かんけーねーのりゅ!黙りやがれりゅ!!」
 
「チビちゃんを返しなさーいっ!!」
 
「……アイシャっ!!またっ……!!あいつ!!」
 
いつもの如く、ジャミルが止められないまま、暴走アイシャが
小悪魔に飛び掛かって行くが……。
 
「……今日のリトルは一味ちがうりゅ……、なめたらアカンりゅ!
飛んでけりゅー!」
 
「きゃあーーっ!!」
 
小悪魔ダウドがバシルーラを放ち、アイシャを遠くへ
飛ばそうとしたが、咄嗟にジャミルが素早くアイシャを庇い、
間一髪で魔法を避けさせた。
 
「ジャミル、ありがと……」
 
「……こらっ!ムキになるなって、何回言ったらわかんだっ、
オメーは!!」
 
「いったーい!!」
 
ジャミルがアイシャのおでこにぴしっとデコピンした。
 
「……だって、チビちゃんが……、すぐ目の前にいるのに……、
手が届かないなんて……、酷いわ……、耐えられないのよ……」
 
チビはすぐ側にいる……。しかし、手が届かず、どうにも出来ず、
アイシャが涙ぐむ……。
 
「とりあえず、落ち着かなきゃ、アイシャ……、冷静になって
作戦を考えないと……、このままじゃダウドもチビも救えない……」
 
「アル……」
 
「だ、駄目だよお……、みんな……」
 
「……ダウド……?ダウドか……!?」
 
「りゅっ!ま、また……、お前はしゃしゃりでてくんなりゅ……、
あう……」
 
精神体のダウドが必死に小悪魔を押さえ、皆に真実を
話そうとするのだが……。
 
「……小悪魔が……、チビちゃんを狙ってる……本当の……、り……」
 
「ダウド!?」
 
すぐに小悪魔に邪魔をされてしまう。
 
「がーーーっ!!……んとに、お喋りな奴りゅっ!!」
 
(やっぱり駄目だ……、小悪魔がオイラから離れてくれないと……、
このままじゃ……)
 
 
そして……、眠っているチビの心の中に……、呼び掛ける声があった……。
 
(チビ君……)
 
(きゅぴ……?)
 
(起きて、小さなドラゴン君……)
 
(……?お兄ちゃん、だあれ……?)
 
(小さなドラゴン君……、どうか君の力を貸して……、
リトルを助けてあげて……)
 
(どうして助けるの……?チビ、あいつ嫌いだよお……、意地悪ばっかり
するんだもん……)
 
(ごめんね、……全部……、僕の所為なんだ……、僕の所為で……、
リトルは……)
 
(ぴい?)
 
チビの心の中に呼び掛けているのは、リトルと出会った
少年の魂であった……。少年の魂はダウドが見た記憶を
チビの心にも伝える……。
 
(……ぴいい~……)
 
(……お願い……、ほんの少しの時間でいいんだ、僕に君の力を貸して……、
憑依させてくれないかな……?君みたいな凄い魔力の持ち主ならきっと、
リトルともう一度お話出来ると思うんだ……)
 
(ぴい……)
 
(ちゃんと、リトルに伝えたい……、リトルと話がしたいんだ、
……僕は今はまだ……、魂のままなんだよって事を……)
 
(ぴい、わかった……)
 
 
「こうなったら、……強行手段に出てやるりゅ……!」
 
「ダウドっ……!!小悪魔っ!てめえっ!」
 
小悪魔は持っていた自身のフォークをダウドの本体自体に近づける。
 
「お前ら、これ以上リトルの邪魔をするのなら……、この身体に
直接攻撃呪文をお見舞いしてやるりゅよ!」
 
(……うわああーーっ!!やめて、やめてよおおーーっ!!)
 
ビビって精神体のダウドが慌てる……。
 
「……んな事したら……、テメー自身にもダメージがいくぞ!?」
 
「かまわんりゅ、……ダメージを受けるのは大半、乗っ取った
こいつの身体だけりゅ、リトルは擦り傷程度ですむのりゅ!!」
 
(……もう……、駄目だああ……)
 
ダウドが覚悟して、目を瞑った、……その時……。
 
 
「……リトル……」
 
 
「りゅ……?」
 
チビの身体を借りた少年が……、リトルに喋り掛けた。
 
「……チ、チビっ!?」
 
「チビちゃんっ!?」
 
「いや、あれはチビじゃないよ、……誰かの魂が……、チビの身体に
憑依しているんだよ……」
 
ジャミルとアイシャは仰天するが、アルベルトは冷静に目の前の
現象を受け止めた……。
 
「……久しぶりだね……、やっと君と……、また話す事が出来る……」
 
チビ(少年)は小悪魔ダウドの側を離れると宙へと飛び上がった。
 
「お前は……、りゅ……」
 
「もう、そのお兄さんの身体を返してあげて……、ちゃんと話そう……」
 
「……あっ……」
 
チビがダウドに向けて光を放つと、ダウドの身体から漸く
小悪魔が離れ、ダウドは精神体の状態から漸く解放される……。
 
「……あああ……!うううう~……」
 
「ダウドっ!!」
 
漸く小悪魔から解放され、フラフラで倒れそうになった
ダウドの身体をジャミルが支え、受け止める。
 
「ダウドっ、大丈夫!?」
 
「しっかり!ほら、貧血にはオレンジジュースだよ!」
 
アイシャとアルベルトもダウドに駆け寄り、ちゃっかり用意して
いたらしき、ストロー付きの紙パックのオレンジジュースをダウドに
急いで飲ませる。
 
「……みんなあ~、ありがと~……、連続で心配掛けてごめんよお~……」
 
「たく……、どうしようもねえ奴、二人目っ!」
 
「あいた、あいたっ!!」
 
ジャミルがダウドにもデコピンをお見舞いした、しかも2発であった……。
 
「……何よ、二人目って、ぶう~!」
 
デコピン刑常習犯のアイシャが口を尖らせた。
 
「……お前、デコが広いから叩きがいがあるな、もう一発……」
 
「やめてよおー!!」
 
額を押さえ、慌ててダウドが抵抗する。
 
「けど、何が……、一体どうなってるの……?」
 
チビに少年が憑依しているのは分るが、何故こうなっているのかは
理解出来ず、小悪魔と向き合い、話をしているチビの方をアルベルトが
見つめた。
 
「……やっぱりお前は……、そのドラゴンに転生してたのりゅ……?」
 
「違うよ、リトル……」
 
「りゅ…?」
 
「僕はまだ、魂のままずっとこの場所にいたんだ、リトルともう一度
お話がしたくて……、今はこのチビドラゴン君に身体を借りて君と
お話してるんだよ……」
 
 
「おい、どうなってんだ、あれ?……何でチビと小悪魔が
話してるんだ……?」
 
「話すと長くなるんだけどさあ……」
 
 
「僕、あの時……、急に死んじゃったから……、未練が残って……、
まだ旅立ちたくなかったんだ、リトルに優しくして貰ったお礼も
ちゃんと言ってなかったし……」
 
「別に礼なんかいらんりゅ……、それにリトルはテメーになんか
優しくした覚えはねーりゅ、気持ち悪ぃ事抜かしてんじゃねーりゅ!
……りゅ……」
 
「……ごめんね、僕の事……、今までずっと探しててくれたんでしょ?
……嬉しいよ……」
 
「フン、本当、迷惑な奴りゅ……、転生するならさっさとしろりゅ……!
おかげでこっちはテメーを探してどれだけ大変な目にあったか、……畜生!
ボーっと死んでんじゃねーよりゅ!」
 
「あはは、でも、君に迷惑掛けちゃったけど、こうやって又直接、
リトルとお話出来て……、君にも触る事が出来て……、本当に嬉しいよ……」
 
チビ(少年)がリトルの頭をなでなでする。
 
「……こらっ!頭を触るなりゅ!」
 
「あはっ、ご、ごめん……、つるつるですべすべで……、
つい、触り心地が良くて……」
 
「たく、相変わらずどうしようもないバカりゅね、糞人間共は
バカりゅ、テメーも含めてどいつもこいつも……」
 
小悪魔はそう言ってジャミル達4人の方を見る。
 
「さて……、僕は本当に、これから転生の準備をしに行くよ、
僕、今度こそちゃんとドラゴンに生まれ変わるから絶対探してねー!」
 
「やなこった!もうオメーと係るのはお断りりゅよ!ふんっ!!
死んでもオメーはノー天気野郎りゅ!」
 
小悪魔がふんふん鼻を鳴らす。
 
「ふふっ、気が向いたらでいいからさー!」
 
「……最後に一つだけ……、リトルもお前にどうしても
聞きたかった事があるのりゅ……」
 
「ん?なあに?」
 
「お前の……、名前……教えろりゅ、それだけりゅ……」
 
「……リィト…、リィトだよ……」
 
「……アホりゅ、それは……、リトルが……適当に考えた……」
 
「じゃあね、バイバイ……、リトル……、今度こそさようなら、
生まれ変われたら又会おうね……、僕を絶対、君の遣い魔にしてね、
約束だよ……」
 
少年はそれだけ言うと、チビの身体から抜け出し空へと
登って行くのであった。……空に微かに小さな光が舞っていた。
やがて光は消え……、小悪魔は消えてゆく、その光をずっと
見つめていた。
 
「バカりゅ……、もうさっさと何処でも行きやがれりゅ……、
天然アホ糞ウンコ野郎め……」
 
……空を見つめる小悪魔の目から涙が一滴零れた。
 
 
「んで、……簡単な話だと、要するにあの小悪魔はドラゴンに
転生したかも知れんダチを探してて、それが産まれたばかりの
チビなんじゃないかと……、今までずっと付け狙ってた訳か……、
特にチビは普通のドラゴンとは違うからな、狙われたのも無理ねえか……」
 
「そうなんだよお……」
 
「……意外と友情に熱い奴だったんだね……」
 
「あの糞小悪魔、根性だけはあったからな、どうりで……、
俺らに叩かれても踏まれても蹴られても……、スカシされても……、
しつこく追いかけて来たわけだ……」
 
「全て、大事なお友達に、もう一度会いたいが為だったのね……、
過激な追っかけでもあったけど……、いつの間にか表記が
ベビーサタンから完全に小悪魔になっちゃってるし……」
 
「けど、海竜とか、まるで敵意むき出しで戦おうとしてたのは
どうしてだろう?」
 
「まあ、その辺も問い詰めて見ねえと判らん事だらけだな、
別に今更どうでもいいんだけどよ……」
 
「でも、もうチビが友達の生まれ変わりじゃない事が判ったんだから、
……これ以上僕らを追いかけてくる理由はなくなったんだよね……」
 
4人は先程からずっと下を向いてふさぎ込み、すっかり元気をなくし
落ち込んでしまった小悪魔の方を見た。
 
「何だか可哀想だわ、アル、チビちゃんを……」
 
「アイシャ?」
 
アイシャは眠っているチビをアルベルトに預け、小悪魔に
近寄って行った。
 
「まーた、すぐ余計な節介焼きやがる……、ほっとけよ……」
 
ジャミルが呆れるが。発動したら最後、アイシャのお節介病は止まらない。
 
「ねえ……」
 
アイシャが小悪魔に優しく声を掛けた。……その途端……。
 
「……なんりゅ……?……団子マンモス・ドブス……」
 
「!!!!」
 
(……ほーら、なんか、まーた騒がしい状況になってきたぞ……、
俺、知らねーかんな……)


小悪魔の旅立ち

ダウド、そしてチビも無事小悪魔から取り返し、ジャミル達は漸く
自分達の船に戻って来たのだが……。
 
「……」
 
 
「おい、あいつ、まだいるぞ……」
 
「……もう用はない筈だよね……?」
 
アイシャに数発殴られ、頭に団子コブを5つ作った小悪魔が……、
休憩室のドアの隙間からじっとジャミル達を眺めていた……。
 
「気色わりィなあ……、呪いのビデオかよ……」
 
アイシャは自分の船室でチビと一緒に疲れてぐっすり寝ている。
 
「……お前、いい加減に一旦魔界に帰れば?」
 
「けけ、ウンコなバカ共を社会科見学してるのりゅ……」
 
「……はあ?」
 
「よっ!」
 
小悪魔はそう言うと休憩室の中にずけずけ入って行き、皆の前で
リィトに姿を変えた。
 
「……」
 
「しかし、よく化けたモンだよなあ……」
 
「フン、君達、下級生物には到底真似出来ない技だろ!」
 
「ねえ……、化けても頭のコブそのままだよお……」
 
「ホントだ、プッ…」
 
頭部の左右に出来た団子コブにアルベルトが吹きだす……。
 
「う、うるせーりゅ!」
 
「……姿はリィトなのに、口調が小悪魔に戻ってるよお?」
 
「う……、だからうるさいんだよっ!」
 
「もう~、うるさいのよ、チビちゃんが起きちゃったじゃない……」
 
と、其処へチビを抱いた不機嫌な表情のアイシャが立っていた……。
 
「何よ、あなた、まだいたの?」
 
「社会科見学だとさ……」
 
「ぴいい……」
 
「チビちゃん、どうかした?」
 
「お、おい……」
 
チビがアイシャの手を離れ、リィトに化けた小悪魔をクンクンする。
 
「前より……、嫌なにおいしない……」
 
「フ、フン……」
 
そして、チビがリィトの顔をペロッと舐めた。
 
「う、うわ……!何するんだっ!!」
 
びっくりしてリィトが後ろに後ずさる。
 
「しょっぱい……」
 
「……お前、顔ちゃんと洗ってんのか?」
 
「失礼な……」
 
「でも、チビちゃんに顔舐められたいう事は、リィトも少しは
チビちゃんに認められたんじゃないの?」
 
ダウドが笑った。
 
「チビのペロペロは仲良しと信頼してるの証だからね……」
 
「フン……」
 
「りゅ、りゅ、りゅ、フンフン~♪」
 
「……こ、こらっ!糞ドラゴン!真似するなっ!!」
 
「りゅ~っ!りゅ~っ!」
 
チビは嬉しそうにパタパタ休憩室を飛び回る。
 
「おいっ!やめろったら!!」
 
……チビを止めようと慌てるリィト。
 
「ねえ、それより……、私、今日、夕飯担当なんだけど、どうしよ……、
何も材料が無くて……」
 
「パンもねえのか?トーストでいいよ」
 
「食パンぐらいならあるけど……、それじゃ皆お腹持たないでしょ、
特にジャミルは……、無理しちゃ駄目よ……」
 
「ねえ、リィトの頭に串刺していい?お団子になるよ」
 
チビがリィトの頭のコブを気に入ったらしく、ずっと突っついている。
 
「チビちゃん、お腹空いちゃったのね、でもそのお団子はお腹を
壊しちゃうからやめましょうね」
 
「何りゅーっ!!失礼りゅねーっ!!」
 
リィトが小悪魔に戻って吠えた……。
 
「チビ、カップラーメンでいいよお、お味噌の食べたい」
 
「ん?カップラーメンなら、まだ数個あったよな……」
 
「手軽に、僕も今日はラーメンでいいよ」
 
「オイラも」
 
アルベルトとダウドも揃って頷き、同意した。
 
「……仕方ないわねえ、お湯沸かすわ」
 
「フン、リトルも我慢してやるりゅ」
 
「おい、オメーはいい加減帰れよ……」
 
 
そして、お湯が沸き……、4人+チビ、何故かおまけの小悪魔は……、
揃ってカップラーメンをズルズル啜り始めた……。
 
「ふんふん、これは具が少ねーりゅ、スープの味も薄い、
パチモンのやつりゅね」
 
「うるせーぞ、黙って食えっ!!」
 
「何かおかしいよね、変なのがいると……」
 
ダウドが不思議そうにラーメンを食べる小悪魔を見つめた。
 
「だよねえ、変な光景だよね……」
 
「きゅぴっ!皆で食べると本当においしいね!!」
 
「そうね、皆で一緒に食べると、どんな物でも、美味しいご飯に
なっちゃうわね」
 
つい最近まで敵同士で争っていた小悪魔を囲んで……、何だか良く分からんが
楽しい夕飯のひと時となったのだった。
 
 
そして……。
 
「……チビちゃん、寝たわよ……」
 
「そうか、よし……、話始めんぞ……」
 
「リトルはどうした?」
 
「甲板に行ったわ、風に当りたいんだって」
 
「あいつ、まだ帰らないのかよ……、まあ、もう悪さはしねーだろうし、
どうでもいいけどよ」
 
「ダウドも……、いいね?」
 
「アル、うん……、分ってる……」
 
 
そして、皆が今後の事について話を始めた頃、小悪魔は夜風に当って
星をぼーっと眺めていた。
 
「……なーんか、変な気分りゅ~……、……アホなあいつが死んでから、
リトルはまた一人になっちゃって……、んでもって、ドラゴンの卵を
探して……、変な糞奴らと出会って、色々あって……、今こうして……、
何だかんだで、またあいつと少しだけ会えて……、此処にいるのりゅ~……、
 
……運命って、不思議……、おかしいりゅ~……」
 
小悪魔はそう言って甲板にねっ転がると再び夜空を見上げた。
 
 
「オイラも、もう決めた、迷わないよ……、チビちゃんを、竜の女王の
お城に連れて行こう……」
 
「ダウド……、お前……」
 
「それが……、チビちゃんの未来の幸せに繋がるのならね……、
お別れは辛いけど……、本来のいるべき所に返すべきだよ……、
でも、例え遠く離れても……、オイラ達、気持ちはずっと一緒なんだ……、
これからも……、いつだってね……」
 
ダウドが微笑み、皆の顔を見た。漸く皆の気持ちが完全に一つに纏り
4人はチビの為に……、新たな決意を交わしたのだった。
 
「ねえ、ジャミル、少し……、甲板行ってお話しよ?」
 
会議も終わった頃、船室へ戻ろうとしたジャミルにアイシャが声を掛けた。
 
「別にいいけど、チビは平気か?」
 
「うん、今夜はぐっすりだもん、よーく寝てるわ、幸せそうな顔してね」
 
「そうか、んじゃちょっとだけな」
 
二人は甲板へと上がるが……。
 
「ありゃ……」
 
「zzzz……ぐ~す~う~、ぴい~……」
 
甲板でそのまま小悪魔が寝転がったまま爆睡していた。
 
「……おい、いい加減に帰れってば、コラ……、おい……」
 
ジャミルが小悪魔の頭から生えている変な物を引っ張って、
突っついてみる。
 
「このまま寝かせておいてあげましょ、色々で、リトルも疲れてるのよ」
 
「しかし……、おかしなモンだなあ……、つい最近まで、俺ら、こいつと
敵対してたのにな、信じらんねえ……、随分気ィ許しちゃったなあ……」
 
「そうねえ、私、此処でリトルに酷い目に遭わされたなんて、嘘みたいだわ……」
 
「ん……、必ず……、オメーを、見つけて……、やる……、
りゅ……、むにゃ……」
 
「リトル……」
 
「寝言か……、何だよ、鼻の穴広げやがって、普段はこいつ、
鼻なんかないじゃんか……」
 
「ジャミルも今日は甲板で寝たら?今夜は星が綺麗よ、良かったら
寝袋持ってくるけど」
 
「……う~ん、最近チビの悪戯っつーか、悪知恵が輪を掛けて
パワーアップしてるからなあ……、この間、寝袋で寝たらよ、
油性マジックで顔に鼻毛だの色々描かれたし……、んでもって、
ちょっと怒ったらよ、〔ジャミルの顔にお花を咲かせてあげたんだよお!〕
とか、無茶苦茶言いやがる……、寝袋で寝ると手も足も出ねえから
当分止めとくわ……」
 
「そうね、あれは面白かったわ……、チビちゃんたら、ホント、
悪戯が好きなんだから、……やっぱり、似ちゃうのよね……」
 
「……何がだ?」
 
「ふふっ、何でもないわよーだ!」
 
ジャミルの方を見ながら、アイシャがくすっと笑った。
 
「……さてと、俺らももう寝ようぜ、又、明日から気合い
入れ直さねーとな、絶対に奇跡の扉探すんだ、チビの為にも……」
 
「うん、そうね……」
 
 
そして、翌日……、甲板でチビと小悪魔が大騒動……。
 
「いてて、いててて!コラ!やめろりゅ!!」
 
「いやーーっ!!リトル行っちゃいやーーっ!!」
 
……これから転生するであろう友人を探す為、再び小悪魔も
旅立とうとしたのだが、すっかり小悪魔に馴れたチビが、小悪魔を
行かせまいと……、小悪魔の頭の変な物体を引っ張り、てんやわんやで
朝から大騒ぎであった……。
 
「しっかし、変われば変わる状況だよな……、チビの奴……、
ブレスで吹き飛ばす程、あんなにリトルを嫌ってたのによ……」
 
「はは、……はははは、仲良きことは美しきかな……、
とは言うけど……、どうしようね……」
 
頬をポリポリ掻きながらアルベルトが笑う。
 
「うっ、……リトル……、オイラもさみしいよおーーっ!!
やっとオイラ達、漸くちゃんと友達になれたのにーーっ!!
うわーーんっ!!」
 
「オメーまで何りゅ!!鼻たけんなりゅーーっ!!第一、
オメーらとなんか友達になんかなった覚えはねえりゅよーーっ!!」
 
「……チビちゃん、邪魔しちゃ駄目よ……?リトルはリトルで……、
ちゃんとやるべき事があるんだから、ね?」
 
「いや、いや……、お別れは嫌……、びいい~……」
 
「……チビ……」
 
チビの言葉を聞き……、これからの事に4人の心に
再び戸惑いが走る……。
 
「……フン、リトルはオメーらが大嫌いりゅ、……だから、
これからも又玉には邪魔しに来てやるりゅ、何処にいたって……」
 
「きゅぴ……、ホント?」
 
「おいおい……、勘弁してくれよ……、もう来なくて
いいよ……」
 
ジャミルが肩を落とす。
 
「……オメーらもこれから上の世界に行くんだろりゅ?……まあ精々、
無駄な努力しろやりゅ、又こっちに帰って来たら思いっ切り嫌がらせ
してやるからりゅ、楽しみにまってろやりゅ!」
 
「だから……、いいっつーの……」
 
「りゅ~っ!けーっけっけっけっ!!」
 
小悪魔はいつもの悪態をついて空に飛びあがった。
 
「……バイバイ、リトル……、リィト……、
又会いましょうね……」
 
「とりあえず……、君も元気でね……、大変だけど、大切な友達が
見つかるといいね……」
 
「あうう~、……さよなら……、てんやわんやで色々あったけど、
オイラも結構楽しかったよおお~……」
 
「……たく、早く行けよ……、んじゃな……」
 
「あばよーー!!クソ共ーー!!けーっけっけっけっ!!
糞洩らすんじゃねーりゅよーーっ!!」
 
「きゅぴい~……、また……、会えるよね……?」
 
「チビちゃん……」
 
アイシャに抱かれながら、チビは空の彼方に飛んで行った
小悪魔の姿を寂しそうに見つめていたのだった。

エピ35・36

恐怖の再会?

年が明け、数日が過ぎ……、此処アレフガルドでも寒波の波が
押し寄せようとしていた。
 
「さて、今日からそろそろ又情報集めに動かなきゃな……」
 
「……あう~、寒いよお~……、船から動きたくないよお~……」
 
頭から毛布を被ったまま震えるダウド。
 
「♪きゅ~きゅきゅ~、きゅきゅ~♪」
 
チビは楽しそうに紙にご機嫌でお絵かき中。常に紙を与えていないと
最近はそこら中にチビが落書きしまくるので大変である。
 
「チビ、随分絵が上手になったね、それは何だい?怪獣かな?」
 
「ジャミルの顔だよお!」
 
アルベルトが聞くとチビは嬉しそうに返事をした。
 
「また俺かよ……、玉にはこっちも描けよ、怪人シスコン人間をさあ……」
 
「……うるさいよ、バカジャミル!!」
 
「でも、もうチビちゃんも狙われる心配がなくなっただけでも
本当に気が楽よ……、ねっ♪」

「ぴいっ♪」
 
防寒用のチビのフードを繕いながらアイシャが声を洩らした。
 
「さて、冗談はさておき……、此処からだと一番近い
情報収集場所はどこだろな?」
 
「この辺りの距離からだと、ラダトームかな……」
 
「ラダトームも、もう暫く顔出してねーし、行ってみるか?」
 
「だね……」
 
「さあ出来た、チビちゃん、寒いから、お出掛けにはこれ被ってね」
 
「きゅっぴ!」
 
アイシャが漸く繕い終えた防寒用フードをチビに被せる。
 
「いいなあ~、オイラも防寒用コート欲しい……、ミンクの……」
 
「……そのまま毛布被ってていいからな、さあ皆、船降りようぜ」
 
ダウドを置いて、他のメンバーが動き出す……。
 
「ちょっ!待ってええ~!……あいたっ!!」
 
慌てたダウドが毛布の裾につまずいてこけた……。
 
 
ラダトーム
 
 
「此処もあんまり変わってねえな……」
 
「宿屋のおじさんとおかみさんは元気かしら……」
 
「色々と、あったよね、此処でも……」
 
「……へーっくしっ!」
 
それぞれが色んな出来事を思い出す。一人思い出してないのもいるが……。
 
「……?何か寒気するな……」
 
「どうしたの?寒いの?大丈夫……?」
 
急にジャミルが震えだし、アイシャが心配して声を掛けた。
 
「いや、そういう寒さじゃねえんだ、なんつーかこう……、
会いたくねえ奴と会いそうな……、う~ん……」
 
「……?」
 
「とりあえず、まずは宿屋に行こうか……」
 
「はーい!さんせーいっ!」
 
鼻を垂らしながらアルベルトの意見に手を上げダウドが早速同意する。
 
「雪もまた降ってきたしな……、んじゃ、宿屋行くか……、
そういや、あのサバイバル親子はもう戻って来たのかな」
 
「……どうだろうね?」
 
4人は何気ない思い出を語りながら宿屋までの道のりを歩く。
アイシャのバッグの中のチビはスラ太郎とほっこり仲良く
お昼寝中であった。
 
「宿屋のおかみさん達も優しい人達だから、後でチビちゃんの事、
こっそり話しても大丈夫かしらね?」
 
「ああ、平気じゃね?」
 
「……寒いよお、お汁粉の海で……、泳ぎたいよおお……」
 
「寒さでダウドが壊れ始めたな……、まあ、宿屋まで
もうすぐだし心配ねえか」
 
「暑くても寒くても壊れちゃうんだね……」
 
4人はようやく宿屋に辿り着き、ロビーで夫婦に暫らくぶりで
顔を見せるとおかみさんも店主の主人も喜んで出迎えてくれ、
皆に温かいお汁粉を振舞ってくれた。
 
「……ああああ~!ホントにお汁粉だああ~!!いただきまーーす!!」
 
出現した本物の汁粉にダウドが喜んで涙を流す。
 
「……もう、何年も食ってないみたいな感じだな……」
 
「ふふ、熱いから、気を付けてお召し上がり下さいね」
 
相変わらずの優しいおかみさんが笑顔を見せた。
 
「はい、チビちゃんもどうぞ……、お餅よ」
 
「ぴい~、チビ、お餅って初めて……」
 
バッグの中のチビにこっそり餅を食べさせるアイシャ。
食べやすい様にアイシャが小さく千切ってくれたお餅を
チビは美味しそうに頬張った。
 
「今日は、ラダトームに歌を歌う詩人さんが来るらしいんですよ」
 
「……詩人……?」
 
おかみさんの言葉にジャミルの耳が動いた。
 
「会いませんでした?まだ到着してないんでしょうか?
雪で遅れてるんですかね……、何でもあちこちの街や村を
訪れている方らしいんですよ」
 
「……寒いなあ、何か俺、ますます寒気してきたわ……」
 
再びジャミルがガクガク震えだした……。
 
「えー?こんなにあったかいのにー?」
 
汁粉を啜りながらダウドがジャミルの顔を覗いた。
 
「本当に大丈夫かい……?熱はないみたいだけどね……」
 
アルベルトもジャミルのおでこに触れる。
 
「お風邪をひかれたのでは……、いいお薬有りますが、
持ってきましょうか?」
 
おかみさんもジャミルを心配しだした。と、その時……。
 
「うわあ~、寒い寒い……、こんなに寒ければ歌も歌えませんね、折角
ラダトームまで着きましたが今日はやめましょう、うん、やめた」
 
「……ひっ!?」
 
独り言を言いながら宿屋に入って来たのは……。
 
「ガライさん……?」
 
「皆さん……」
 
「……う、うわああああ~~っ!!」
 
ロビーに出現したガライの姿を見てジャミルが大声を出した。
 
「ジャミル、何そんなに絶叫してるの……、他のお客さんが
こっち見てるよ!」
 
「だ、だってよ……、アル……、あ、あああああ……」
 
「ガライさん!お久しぶりー!元気だったー?」
 
「あは、全然変わってないねえ!」
 
アイシャとダウドもガライに声を掛ける。
 
「ガライさん、こんにちは……、お元気でしたか?」
 
アルベルトもガライに挨拶する。
 
「きゅぴー?」
 
チビは初めて見るガライに気になって仕方がない様だったが、
町中では常にぬいぐるみのフリなので我慢してバッグの隙間から
只管ガライをじっと眺めていた。
 
「元気ですが……、ジャミルさんは……?」
 
「其処に、いますけど……」
 
アルベルトが、壁に寄りかかってシェーのポーズを取ったまま、
固まって動かなくなったジャミルを指差す。
 
「いたんですか……、ジャミルさん……」
 
ガライがのそのそジャミルに近づいていく。
 
「は、は、ははは……、よう……、元気……、そうだな……」
 
 
「……ジャミルさーーんっ!!」
 
 
「……ひええええーーっ!?」
 
ガライがジャミルを追い詰め、壁ドンする……。
 
「あなた一体、何やってたんですかーーっ!あなたがさっさと
伝説にならないから!僕は伝説の勇者の詩の続きが作れない
じゃないですかーーっ!!オラ、とっとと伝説になりやがれ
ですーーっ!!」
 
「……ガ、ガライさん、落ち着いて下さい、他のお客さんが
皆見てますよ……、プ……」
 
アルベルトがガライを落ち着かせようとするが、もう吹き出す
寸前であった……。
 
「知らねーっつんだよ!滅茶苦茶言うな!!……あああ、だから
こいつ苦手なんだよぉ~」
 
壁際に追い詰められたままジャミルが涙目になる……。
 
(きゅぴー……、また面白いお兄さんだあ、……チビもお友達に
なれるかなあ……?)
 
バッグの中で、チビがパタパタ尻尾を振った。
 
「皆さん、お知り合いだったんですね、取りあえず、
宜しかったらあなたもお茶をどうぞ……、外は寒かった
でしょう…」
 
おかみさんがガライにお茶を出した。
 
「ああ、これはどうも、すみません……」
 
ガライは温かいお茶を見ると、ジャミルをほっぽりだし、
マイペース状態で席に着くとお茶をズズズと啜り始めた。
 
「……皆さんも、積る話もあるでしょう、一緒に
お話ししましょう……」
 
ガライがアルベルト達に自分のテーブルに来い来いと手招きする。
 
「はあ、折角だから……、ね……、行こうか?」
 
「うん……」
 
「ジャミルも……、席変えましょ?……ほらっ、
ちゃんと立ってよ!」
 
「……ふにゃ~……、俺……、もういやだ……」
 
アイシャがジャミルを助け起こし、4人はガライの方の
テーブルへとお引越しする。ダウドはお代わり分の汁粉の
入った茶碗を抱えたまま。
 
「で、……ゾーマがいなくなってからのこの一年……、漸く吟遊詩人の
駆け出しとなり、歩き出した僕は……、本当に大変な日々でした……、
それはもう、聞くも涙、語るも……」
 
お茶を啜りながらガライが涙をこぼし始め……。
 
 
ぷう~っぴ……ぷう……ぷっぷ……ぷっぷ~
 
 
「……」
 
(チビだな……、たく……)
 
「……ジャミルさん!あなた、僕が真面目に話をしてるのに!
……ふ、ふざけてるんですか!?……しかもすごく臭うんですけど!?」
 
「ちがっ、今のは俺じゃねえったら!!」
 
「何が違うんですか!?あなた以外いないでしょう……!?」
 
拳を震わせながらわなわなと……、ガライがジャミルに掴みかかる。
 
「……あ~もう……、勘弁してくれよ……、だからこいつ……」
 
ジャミルがテーブルに顎を付けて不貞腐れる。
 
「何だか、ガライさん、相当苛苛してるみたいだわ……、
本当に大変だったのかしら……」
 
「色々あったんだろうけど……」
 
「オイラ、知らないーっと!、うん、お汁粉が美味しければ
何でもいいや!」
 
やり取りに構わずダウドは呑気に残りのお汁粉を食べ始める。
 
「きゅぴ~……、ふああ……」
 
……オナラの犯人はバッグの中で呑気に欠伸をした……。


悩めるガライ

「……とにかく、僕も大変だった訳ですよ……、メルキドも大分
雰囲気が変わって、居心地が良くなりましたし、……しかし、
いつまでも一つ所にいてお世話になるばかりではどうもいけないと
思いまして、メルキドを出て、彼方此方、方々を点々としていたんです……」
 
※ゲーム中の下世界では……町や村が極端に少ないですが、この話では
他にも町や村が多数存在している物と勝手に想定して話を書いております
 
「でも、やはり現実は厳しいものでして……、余所ではあまり、
僕の歌など聴いて貰えないのが現状なんですね……」
 
「だけど、あちこちで歌歌いまくってたんだろ?だから
それなりに知名度は上がったんだろが、此処の宿屋の
おかみさんだってお前の事知ってたし」
 
ジャミルがそう言うが、何か不満なのか、ガライは只管
首を曲げて唸っている。
 
「……確かに、方々で歌は披露しましたが……、ただ、
誰もまともに聴いてくれないのが現実でした……、ふーん、
あっそ状態でして……」
 
(……まあ、まだ流し歌手みたいなランクなのか……)
 
(アイシャ……)
 
(なあに、チビちゃん、静かにしてないと駄目よ……)
 
流石にいつまでもバッグの中では退屈になってきたのか、
チビがウズウズしだす。
 
(チビもお歌歌いたい!♪ぴぴっぴぴい~、ぴぴぴぴい~
だよお!!)
 
「……うわ、チビの下痢の歌だっ!」
 
「きゃーっ!……♪ぴ、ぴぴぴぴぴい~!」
 
慌ててチビの声をかき消そうと、アイシャが必死で大声を上げる。
 
「何……、してるんですか?アイシャさん……」
 
ガライが不思議そうな顔でアイシャを見る……。
 
「あはは、私……、ちょっと外行ってきまーす!!」
 
顔を真っ赤にしてバッグを抱えながらアイシャが宿屋の
外に飛び出していく……。
 
「……ハア~……、たく、冷や冷やすんなあ……」
 
「とにかく……、僕はやはり両親に言われた通り……、
吟遊詩人としての才能が開花しないのではないかと……」
 
「今頃わかっ……、あいてっ!!」
 
アルベルトに足を踏まれるジャミル……。
 
「……諦めるなんて、ガライさんらしくないですよ、意志の強い
あなたがどうしたんですか……、メルキドで披露した素晴らしい歌声は、
あんなに皆の心を癒したのではないですか……」
 
(まーた、アルの奴めっ、余計な事言いやがって……、
どうしてこう……、余計なお節介な奴らばっかりなんだか、
これで大人しく諦めがつけば実家に帰るだろうに……)
 
ジャミルも充分お節介を焼く事が多いのだが……。
 
「ねえ、雪がやんだみたいよ……」
 
暫く外に逃走していたアイシャが戻って来た。
 
「本当か?……よし、武器屋行くか、ジョニーに会いに
行きたいしな!」
 
と言っているが、ジャミルはガライ逃れしたいだけである……。
 
「ちょっと、ジャミル……、ガライさんが……」
 
「大丈夫ですよ、アルベルトさん……、僕、暫く此処で下向いて
落ち込んでますから……、いいんですよ、お出掛け行って来て下さい、
後で又戻ってきたら構って貰えれば……」
 
「おい……」
 
「……う~ん、動けないよお!お汁粉美味し過ぎて食べ過ぎたー!!」
 
暫く静かにしていたかと思えば……、ダウドが汁粉の食べ過ぎで、
まん丸になった腹を抱えて苦しんでいた。
 
「大丈夫?ダウド……」
 
「調子に乗り過ぎなんだよ!ったくっ!」
 
アイシャが心配する中、ジャミルはいつもの自分を棚に上げ、
腹パンパンのダウドに呆れる。
 
「……はあー、落ち込んだ、落ち込んだ……、どうせ僕なんか……」
 
「ジャミル、今日はやめようよ……、二人をこのままにして
出掛けられないよ……」
 
「仕方ねえなあ……、何でこうなるんだよ……」
 
と、言う訳で、4人は再び宿屋にお世話になる事に。チビに
関してはこっそりと、アイシャが夫婦に事情を話すと最初は
びっくりしていたが、チビ本人を見せると喜んで気に入って
可愛がってくれ、問題なく宿屋に泊まれる運びとなった。
部屋に入った途端、ジャミルはベッドに転がり思いっ切り
羽を伸ばし、寛ぐ。
 
「……はあ~、やっと解放感……、幸せだあ……」
 
「くるしい~、お腹……痛いよお……」
 
ジャミルの隣のベッドでは相変わらず萎まない腹を抱えて
ダウドが倒れていた……。
 
「ダウド、これ胃薬よ、おかみさんがくれたのよ……」
 
「……う、薬……いいよお~……」
 
アイシャが渡そうとした胃薬を、いいよお~……で、
拒否する我儘ダウド。
 
「なーにガキみたい事言ってんだ!いや、ガキなんだけどな……、
……チビの事言えねえじゃねえか、ほら、さっさと飲めよ!!」
 
「う~ん、とほほ~……」
 
仕方なしにダウドが水で胃薬を流し込んだ。
 
「ガライさんの方は大丈夫かしら……」
 
「面白いお兄さんだね、チビ、お話したいなあ!」
 
「うん、もう少し……、状況が落ち着いたらね……」
 
「あいつ、まだロビーで落ち込んでんのかな…」
 
「僕、心配だから見てくるよ……」
 
アルベルトが再びロビーまで足を運ぶと、案の定ガライは
まだ椅子に座ってどんよりと落ち込んだままの状態だった……。
 
「旦那さん、おかみさん……」
 
「あ、アルベルトさん……、あの方、もうずっとあのまま
なんですが……、本当にどうなされたんでしょうか、心配ですね……」
 
「弱ったね、あれじゃ他の客がたまげちまう……」
 
流石に夫婦もガライの様子が気になり始めた様子だった……。
 
「……何とかしてあげないとなあ……」
 
腕を組んで考えながらアルベルトが部屋まで戻る。
部屋に戻って状況を皆に報告すると、ジャミルだけは、
ほっとけほっとけの一点張りだった。
 
「ガライさんて、凄くデリケートなのね……」
 
「……デリケート?あれがか!?冗談言うなよ!!」
 
ベッドの上でジャミルがゲラゲラ笑いだす。
 
「もう……、少しはジャミルも心配してあげてよ……、
真剣に悩んでるみたいだからさ……」
 
「……絶対の自信があり過ぎたんじゃね?」
 
「うん?」
 
「調子に乗り過ぎたんだ、つーこと!僕の歌は凄いんだ、
もう何処へ行っても絶対誰からも聴いて貰える!で、メルキドで
自信過剰になり過ぎて、他でこけて落ち込んだと」
 
「……ガライさんに限って、そんな事ないよ……」
 
アルベルトが複雑そうな顔をジャミルに向ける。
 
「さーて、先風呂行ってくるわ!風呂上りにコーヒー
牛乳でも飲んでと……」

「あのさ、今の時代、コーヒー牛乳って言い方は
無くなったんじゃないの……?」

「いいんだよっ!どうでもいいだろっ!腹黒っ!」
 
アルベルトにそう言って、ジャミルが部屋のドアを開けようとした途端……。
 
 
「……自信過剰、確かにそうだったかもしれませんね……」
 
 
「うぎゃああああーーっ!!」
 
ガライがぬっとドアの隙間から顔を出した……。
 
「ガライさん……」
 
「……おや……?その人形は……?」
 
ガライがチビに気づいたらしい。
 
「きゅっぴ、チビだよおー!お人形じゃないよお!
初めまして、こんにちは!」
 
「もう、話しても大丈夫かしら……?ガライさん、あのね……」
 
アイシャがガライを部屋に招き入れ、チビの事を話した。
 
「そうでしたか、ドラゴンの子供……、これは又、珍しいですね……」
 
「きゅっぴ!」
 
ガライは特に気にせず、部屋をパタパタ飛び回るチビを
じっと見つめていた。
 
「……」
 
ジャミルは突如現れたガライのホラー顔に気絶して腰を抜かし……、
ダウドの横で一緒にベッドに倒れていた……。
 
「……あのう、勝手な事とは思うんですが……、皆さんに
お願いしたい事があるんです……」
 
「はあ……」
 
ベッドで倒れているアホ二人を除き、アイシャとアルベルトが
ガライの話に耳を傾けた。
 
「最近、この付近でも新しい洞窟が此処から西の方に
見つかったらしくて、もしかしたら其処に、煎じて飲むと、
喉が潤って綺麗な声が出せる様になる、幻の薬草が生えて
いるかも知れないとの噂なんです、ただ、其処には……、凶悪な
モンスターも潜んでいるとか、少しだけ洞窟の中に入った先の
冒険者の方の話ですと……」
 
「ガライさん、今はモンスターも此方が刺激しない限り、
通常は大人しくしているんですから、此方からやたらと
突く様な事をしては……」
 
「……分かってます、モンスターに用はないんですが……、
僕はどうしてもその薬草が煎じて飲みたいんです、
ですから……、その薬草を一緒に探しに行って
頂けないでしょうか……」
 
ガライがじっと真剣な表情でアルベルトに訴える。
 
「あの、ガライさん、そんな物飲まなくたって……、それに……、
幻の薬草なんか、本当にあるか判りませんよ……」
 
「分かってます、けど……、このままじゃ僕は……、
どうしても……」
 
「……自信無くなったら、次は、んなモンに頼んのかよ!」
 
「ジャミルっ……!」
 
倒れていたジャミルが急にむっくり起き上がった。
 
「甘ったれてんじゃねーよっ!バカ野郎!!オメーの根性は所詮
その程度のモンなのかっ!!」
 
「ジャミル、そんな言い方……!」
 
アイシャが慌ててジャミルを制しようとしたが、
ジャミルは聞かず、切れている所為か、きつい口調を
飛ばした。
 
「それでも、僕は、ちゃんと皆に歌を聴いて貰える様に
なりたいんです……」
 
「……ガライさんっ!」
 
「失礼しました……、では……」
 
アルベルトがガライを止めようとするが、ガライは
部屋の外に出て行ってしまった……。
 
「アル……、どうしよう……」
 
「たく、んなモン飲まなくたって、あいつはあれで充分なんだよ、
何でわかんねーんだよ……、ホント、バカ過ぎらあ……」
 
「ジャミル、ガライさんは絶対一人で洞窟に行っちゃうよ、
止めなきゃ……!!」
 
「はあ、仕方ねえ……」
 
急いでロビーに向かうと、おかみさんが慌ててトリオの前に
飛び出して来る。
 
「あの方、急にお外へ出て行かれてしまったんです…、
もう夜も遅いですからとお止めしたんですが、凄く真剣な
お顔をされていましたよ、何があったんでしょうか……」
 
「……はあ~、やっぱりこのパターンか……」
 
「僕達、これからガライさんを迎えに行って来ます……」
 
「おかみさん、あの……、お願いがあるんですけど、
ダウドとチビちゃんを……」
 
「分かりました、大丈夫ですよ、皆さん、夜は冷えますから、
これをどうぞ……、お気をつけて……」
 
おかみさんが温かいコートをトリオに貸してくれた。
防寒用コートを羽織るとダウドとチビをおかみさんに
頼んで部屋に残し、トリオはガライを探しに新規の洞窟へと
向かうのだった。

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  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. エピ33・34
  2. エピ35・36