zoku勇者 ドラクエⅢ・その後編 エピ1~4

お知らせ通りの、作者が妄想したⅢ編の続編になります。平和になった世界を巡る冒険から神竜戦までを書いていきます。
伝説の鎧が近未来、ゆきのふの手に渡ってる事とか、その辺などは無視して書いています。才能、文才無しの作者が書いた
話ですので、お気軽なお気持ちで読んで頂き、宜しければ最後まで又お付き合い頂ければと思います。m(_ _)m

エピ1・2

すぐ帰って来た4人組

……大魔王ゾーマ、あの戦いから一年が過ぎ、未だ上の世界に
戻る手段の見つからない4人組は自由気ままにアレフガルドでの
冒険を楽しんでいた。
 
「……しかし……、平和っつーのも結構暇だなあ……」
 
ジャミルが暇そうに欠伸をする。
 
「贅沢言うなよお……、オイラ、もうモンスターが
出なくなって本当、安心してんだからさあ……、暇なのは
いい事なんだよお!」
 
と、演説してみる相変わらずヘタレ節全開のダウド君。
 
「でもそろそろ上の世界にも戻りたいわよね……、スラリン
どうしてるかしら、会いたいなあ……」
 
と、いつも元気いっぱい、可愛い物大好きの天然アイシャ。
 
「……アリアハンにも顔出さねえと……、ファラも相当
心配してんだろうな……、てか、絶対フライパンで殴られるわ、俺……」
 
……想像してみて脅えるジャミル。
 
「うん、何とか……、方法が判ればね……」
 
と、知識派のアルベルト。……こんなふうに彼ら4人は、
平和になったアレフガルドの地で毎日の日々を変わらず過ごしている。
 
「だけど……、ジャミル……、本当に良かったの……?」
 
アルベルトがジャミルを見た。
 
「何がだよ?」
 
「光の鎧、ルビス様に返しちゃって……」
 
「勿体ないよお……」
 
「そうよ、あんなにかっこ良かったのに……」
 
「いいんだよ、世界は平和になったんだ、もう必要ねえよ、
護身用に、この王者の剣と勇者の盾さえあればな!」
 
「本当に鎧が嫌いなのね、ジャミル……」
 
残念そうにアイシャが呆れる。ちなみに頭の銀の額当ては
ルビスに聖なる力を授かった際に消滅したので今は何も着けていない。
 
「俺には身軽なのが一番さ、それにもう終わったんだからさ!
さーて、……次は何処回るか」
 
(光の鎧着けたジャミルも結構恰好良くて好きだったのに……)
 
何となく淋しそうにアイシャがジャミルを見つめた。
 
「……神竜についての明確な情報もあまり集まらないね……」
 
「やっぱり……、ガセなんじゃないの……」
 
アルベルトとダウドも揃ってジャミルの方を見る。
 
「んな事ねえよ!」
 
ジャミルがフンと不貞腐れ唇を突き出す。
 
「もう、今日は日が暮れて来たね……」
 
「そうか、んじゃあ今日は丁度リムルダールが近くだし、休憩行くか!」
 
「うふふ、アレフガルドにいても、ちゃーんと時間の感覚が
判る様になったね!」
 
アイシャが笑った。
 
「いこーいこー!オイラ眠ーい!」
 
4人はすっかり明るくなったアレフガルドの地を今日も歩いていく。
 
「……」
 
そんな4人を陰からこっそり見つめる怪しい人物が1人。
 
 
リムルダール
 
 
「はああ~……、やっぱり俺、この時間帯が一番幸せだあ~……、
うーん……、何食うかな~……」
 
街の大きなレストランで4人は注文する食事のメニューを選んでいた。
 
「栄養的に考えて、サラダ付きのにしようか……」
 
「スパゲティ美味しそうね!」
 
「カレーライスもいいなあ……」
 
「俺、一辺に頼むかな、カレーと、スパゲティと、ステー……」
 
「……おほん!」
 
「冗談だよ……、幾らなんでもそんなに食わねえよ……、
睨むなよ、腹黒」
 
「そんなに食べても食べなくても……、最後のは駄目っ!」
 
アルベルトが横目でじっとジャミルを見る。
 
「はいはい……、えーと、んじゃ、このガーリックチキンソテーの
スープ付き、頼むよ」
 
「はい」
 
「じゃあ、私はボンゴレお願いしまーす!」
 
「あ、オイラは甘口カレーにカツのトッピングで……」
 
「僕は、ムール貝のバターソテーにサラダ付きを頼みます」
 
「はい、オーダー有難うございます」
 
「……堅苦しいモン頼むなあ、アルはよ、カツ丼におしんこと
味噌汁つきでいいじゃんか」
 
「僕のイメージ壊さないでくれる……?」
 
 
やがて、食事も終わり、メイドさんがサービスのコーヒーを
4人に差し出す。
 
「どうぞ……、ごゆっくり……」
 
 
「……ふわぁ……、ルザミん時みたいな糞コーヒーじゃなくて
本当美味いわ」
 
「ホント、美味しいね!」
 
「んん~何か……、オイラ、大人なかんじい~……」
 
「はあ、身体が温まる…」
 
「……」
 
「アイシャ、どうかしたか?」
 
「え?ええ……、と、何でもないよ……」
 
(何だか誰かに見られてる様な……、変な視線を感じるのよね……、
どうしてかしら……)
 
「そろそろ店出ようか」
 
一番最初にアルベルトが椅子から立ち上がった。
 
「ああ、今日の飯も終りかあ~、……ウ~ンっ!」
 
ジャミルが大きく食後の伸びをする。会計を済ませ4人は外に出る。
辺りはすっかり暗くなっていた。でも、漸くこの地でも朝、昼、夜と
きちんと時間が判別出来る様になったのである。
 
「さて、今日の夜はどうしようか……」
 
「折角……、リムルダールに来てるんだから……、玉には宿屋に
泊りたいけど……、オイラ達……、あんまりお金ないしねえ……」
 
「そうね、又野宿かしらね……」
 
ゾーマ消滅後、モンスターも大人しくなった為、ゴールドの
稼ぎ口は洞窟等で鉱石などを探して売ったりして生計を立てるなど、
一行にはあまり金銭的に余裕が無かった。
 
「今日の夕飯は……、洞窟で偶々見つけた宝石が当たって売れたからな……」
 
「……うう……、ビンボー冒険者は厳しいよおお……」
 
ダウドが唸る。……其処へ……。
 
「……あの、皆さま……、お仕事をお探しですか……?」
 
突然……、フードを被り、ローブを羽織った男が一向に近づいて来た。
 
「ん?あんた何だい?」
 
(……この感じ……、さっきレストランで感じた変な視線だわ……)
 
怪しい人物はベラベラと勝手に話を始める。
 
「……ゾーマが消えた後……、この世界でも、ここ最近
彼方此方でこれまで見られなかった新たな洞窟や塔など……、
次々と発見されているのはご存じですか……?」
 
「ああ、俺達も情報が入る度、少しずつ回っちゃいるけどさ……」
 
「リムルダールの南に、又新しい洞窟が見つかったのですよ」
 
「え?そうなのか……」
 
「どうでしょうか?……皆様に……、その、新たな洞窟の
最初の探検者として……、洞窟レポのお仕事をお願いしたいのですが……」
 
「そりゃいいけど……、あんた何処の組合のモンだい……?それか
冒険者ギルドか何かか……?」
 
怪しい雰囲気を察し、ジャミルが疑って聞いてみる。
 
「えーと、ま、まあ……、そんな処です……」
 
男はエホンとちょっと咳払いをする。
 
「あやしいよお……」
 
「それで、報酬は……、ざっとこんな処ですが……」
 
「ん?」
 
男が一向に料金の明示書を見せた。
 
           25000G……
 
「だと……?」
 
……4人が顔を見合わせる。
 
「おい……、こんだけありゃあ……、一か月は安泰だぞ……」
 
「モンスターはもう出ないんだから……、そんなに危険な
仕事でもないよお……?」
 
「やりましょうよ……、折角だし……」
 
「だけど……、怪しい様な……、怪しくないような……」
 
「もしも駄目でしたら……、他の冒険者様にでもお伺い致しますが……、
お仕事を探されている方は他にも沢山いらっしゃいますので……」
 
「……あ!や、やる……、やるよ!任せてくれや!」
 
ジャミルが焦って返事をする。
 
「でしたら……、この契約書にサインをお願いします…」
 
「アレフガルド、冒険者組合……ね、ふーん……、
こんなのあったのか……」
 
結局……、単純な4人は男の素性も良く調べないまま、
高額ゴールドに釣られ契約書にサインしたのだった……。
 
「……ふふ……、これでおーけーりゅ……」
 
「何か言ったかい?」
 
「……な、何でもないです、では、明日又早朝にこの場所で……」
 
男は去って行った……。
 
「……変な奴だなあ……」
 
「この話で真面な人求めちゃ駄目だよお、主役からして
真面じゃないんだし」
 
「そうだよなあ……、って、うるせーよ、バカダウド!」
 
「いたっ!」
 
「……はあ」
 
アルベルトが溜息をつく。世界を救った英雄達だが、中身は
相変わらずの変わらないメンバーであった。
 
 
……4人は男との早朝の待ち合わせも兼ね、結局その日は
宿屋に泊る事にしたのだった。
 
そして、早朝……。
 
「……来ないな……」
 
「来ないね……」
 
「もう約束の時間だけど……」
 
「眠いよお~…」
 
「お、遅れた……、寝過ごしたりゅ……」
 
「やっと来たか……、ん?」
 
「な、何りゅ?……あ……」
 
「あんた今……、変な喋り方……」
 
「!な、何がですか……?別に何も変わり映えしていないですが……」
 
「そうかい……、なら別にいいんだけどよ……」
 
「さあ、行きましょう……」
 
慌てた様に先に男が歩き出した。
 
「……処で……、あんたいつまで顔隠してんだ……?
すっげー気になるんだけど……」
 
「べ、別にいいじゃないですか……、嫌です……」
 
男が咄嗟にフードを押さえた。
 
「良かねえよ!見せろよ!これから暫く一緒に行動するんだからよ!
こそこそ隠し事すんなっ!」
 
「あっ……!?」
 
ジャミルが無理矢理男のフードを剥ぎ取ろうとフードをひっ掴んだ。
 
「こ、こらジャミルっ!嫌だって言ってるんだから……!」
 
アルベルトが慌てて止めるが……。
 
「へえ……」
 
外れたフードから童顔の綺麗な顔立ちが見え、束ねてある
さらさらの長い水色の髪がふわりと舞い上がった……。
 
「ふーん、ごついおっさんかと思ったのに……、意外だな……」
 
「……僕の何処がおっさんなんだ……、失礼な奴だな……」
 
まだ男性と呼ぶには早い容姿……、少年は嫌げに髪をかきあげ整える。
 
「……」
 
驚いた様にアイシャが少年の顔を見つめた……。
 
「ぼ、僕の顔に……、何か……?」
 
「い、いえ……」
 
アイシャが一瞬顔を赤くする……。
 
「あ……、何だお前?……その反応……」
 
アイシャの態度を見ていたジャミルが剥れる……。
 
「べ、別に……、何でもないわよ……」
 
男と女と言うのは実に不思議で……。
 
「あの、ジャミル、もしかして妬いてくれてるの……?」
 
「はあ~?べ、別に知ったこっちゃねえよ、俺には何も関係ねえし……」
 
「……何よ!その態度!あったまきちゃうわ!」
 
「勝手にしろよ!俺には関係ねえって言ってんだから!お前こそ、
ちょーっと俺が他の女、横目で見たりするとすーぐギャーギャー騒ぐ癖によ!」
 
「……何よーっ!ジャミルのバカーっ!!」
 
「うるせー!ジャジャ馬!」
 
「あの……、これは……、一体……」
 
突然始まった痴話喧嘩に少年が口をあんぐりと開けたままになる。
 
「ああ、気にしないで下さい、いつものこの二人の
コミュニケーションみたいな……?物なんです、時間が
立てばすぐ収まりますから……」
 
「はあ……」
 
「でも、アル……、今日はそろそろ止めに入った方が
いいかもよお……」
 
「分ったよ、たく……、仕方ないなあ……」
 
「……」
 
時に複雑でややこしい生き物なのであった……。


傷だらけのドラゴン

「さあ、着きました……、ここが皆さんにお仕事をして頂く洞窟です」
 
「……あ……」
 
「ジャミル……、どうしたの……?」
 
アルベルトが尋ねるとジャミルの顔が青ざめている。
 
「……小、催した……」
 
「なっ……、何やってるんですか……!?どうして街に
居る時にきちんと済ませておかなかったんですか……!!」
 
少年が呆れた様な……、怒った様な表情を見せた……。
 
「だってよお……」
 
「……すみません、これも……、これの日常茶飯事なので……」
 
アルベルトが申し訳なさそうに少年にぺこぺこ謝る。
 
「……おい、これとは何だ!これとは!!」
 
「いいから……、さっさと早くしてくる……!!」
 
アルベルトがジャミルの背中をどつくとジャミルは
慌てて用足しに走って行った……。
 
「……やだもう……、いつもの事だけど……」
 
顔を真っ赤にしてアイシャが下を向いた。
 
「……フン、変な人なんですね……」
 
少年が呆れたまま露骨に嫌な顔をすると、すぐにダウドが
フォローを入れる。
 
「確かにジャミルは変だし……、すーぐ怒るけど……、
でも、いつも一緒にいると、とっても楽しいよお?」
 
「楽しい?あれがですか……?フン、見てると只の
馬鹿にしか思えないんですが……」
 
「君も友達になってみればわかるよお!」
 
ダウドが笑うが、少年は機嫌が悪いままである。
 
「……僕はあくまでも、ビジネスの為にあなた方をお誘いし、
一時的に行動しているだけです、そんな事は関係ないです、
下らない事は言わないで下さい……、余分な口は謹んで頂けますか?」
 
「はあ、ごめんなさい……」
 
少年のきつい言い方に少しダウドがしょげる。
 
「何よ……、顔はイケメンなのに、口調も段々嫌な感じに
なってきたし……、何だか感じ悪い人ね……」
 
ジャミルをコケにされたのが気に入らないのか、アイシャも
少年をムッとした顔で見る。
 
「ふふ、そうだね……」
 
「なに?アル、何かおかしい?」
 
「いや、何でもないよ……」
 
ついさっきまでの二人の喧嘩を思い出してアルベルトが笑った。
 
(こんな連中といると……、頭がおかしくなりそうりゅ……、
早く目的を達成したらさっさと逃げないと……)
 
「わりい、わりい!」
 
やがてお騒がせジャミルが走って戻って来た。
 
「こほん……、では、仕事の内容の続きをご説明致します……、
昨日も申し上げました様に、皆様には、これから此処を訪れる
冒険者の皆様の為に先駆けて、この洞窟の主な様子などを
レポートして欲しいのです」
 
「安全面……、などでしょうか?」
 
「はい、それは勿論の事、中の主な鉱石なども収集して
貰って……、……後は洞窟内の地図のマッピングなどを……」
 
「おー、任せろよ!んじゃ皆、中行こうぜ!」
 
「……本当に判ってんの?ジャミル……、僕ら、ちゃんと
細かい処までしっかり調べてくるんだよ……?」
 
「洞窟ん中を調べてくりゃいいんだろ?ちょろいちょろい!」
 
「あの、確認の為にお伺い致しますが……、このパーティの
リーダーはあなたですよね……?」
 
少年が不安そうにアルベルトを見た。
 
「僕ですか?いいえ、違いますよ……」
 
アルベルトがちゃうちゃうと手を振ってジャミルの方を指差す。
 
「……なっ!?」
 
「俺だよ!」
 
「ああ……、頼む相手を間違えてしまったかも知れない……、
いや、かもじゃなくて……、間違えたんだ、完全に……」
 
少年がこめかみを押さえる。
 
「おーい……!さっきから何だよお前!気に食わねえな!」
 
(……やばいりゅ……、もう時間切れりゅ……)
 
「わ、分りました……、では、あなた方を信頼します……、
早く中に行って下さい……」
 
「はあ!?マジ訳分かんねえ奴だなあ!?」
 
「いいから……、早く行こう、時間が勿体ない……」
 
アルベルトがジャミルを引っ張る。
 
「……」
 
何となく不満そうな表情で少年をチラ見しながらアイシャも
ジャミル達の後を追う。……やがて、4人の姿が見えなくなり、
完全に洞窟の奥に消えた頃……。
 
「……な、何とか……、元の姿を見られなくてすんだりゅ……、
奴らが戻ってくるまでに……、魔力を回復させておかないと……、
と、どうも……、あいつらは弱すぎる感じりゅ……、信用出来ない
りゅ、やっぱり他の奴らに頼んでくるりゅ……」
 
少年が外でぶつぶつ呟いている頃……、4人は
薄暗い洞窟の中を歩いていた。
 
「大体、洞窟ん中なんかさ、モンスターがいなけりゃ
大概はそんなに心配いらねーよ!」
 
「……でも、岩山の洞窟の時みたいに……、
トラップあるかもしれないよお……?」
 
異様にダウドが慎重になる。前回の旅の経験から
少しは成長したのだろうか。
 
「それを調べるのが僕らの仕事だよ、後後の人が安全に
探検と鉱石収集出来る様にね」
 
「……」
 
ふと、何か気配を感じた様でアイシャが立ち止まる。
 
「奥に……、何かいるわ、気配がする……」
 
「ええっ!?でも……、もうモンスターはいない筈だよねえ……」
 
「先に進んでみないと判らないわよ、行きましょ」
 
「廃墟マニアがいたりしてな……」
 
ジャミルが苦笑いしてみる。
 
「……それはないでしょ、だって……、一番最初に
この洞窟に立ち寄ったのは僕達の筈なんだから……」
 
 
……ウ、ウウウ……ウ……ウ……ウウーーッ!!
 
 
「……ぴゃっ!?」
 
聞こえてきた謎の声にダウドが飛び上がる。やはり
ヘタレなのは前回から全く変わっていない。
 
「何だよ……、何の声だ……?やっぱり誰かいんのか……?
糞でもしてるのか……?」
 
咄嗟にアルベルトがスリッパでジャミルをいつもの如く
叩こうとするが気配を感じてジャミルが横に素早く避けた。
 
「……あれ?」
 
「残念ですたー!いつまでも毎回毎回大人しく頭叩かれる
俺でわない!あっはっはーだ!」
 
ドヤ顔になってジャミルが高笑いする。
 
「そう……、じゃあ……、これはどうかなあ……?」
 
「……いてっ!?」
 
「びっくり箱型、パンチングボックス……、何となく
面白そうだったから、リムルダールの土産屋で買ったんだ、
今度からこれでいこう」
 
「……や~め~ろっつーのー!!」
 
「しかも、これね……、四方向にグローブ飛び出るから……、
結構便利なんだよ」
 
「おい……、ダウド、コイツ何とかしろよ!!」
 
「オイラに言われても……、まあ、パンチ飛ばされない様に
気を付けるしかないでしょ……」
 
「……と、言う事です、僕の勝ちです、出直してきなよ」
 
「……きいーーっ!!覚えてらっしゃい!」
 
ハンカチを噛んでジャミルが地団駄を踏み悔しがる。
 
……と、男衆がバカやってる間に……。
 
「……あっ!?大変!アイシャがいないよお!!」
 
「……またかよ……、すげー油断した……、あんにゃろめ……」
 
いつもの如く、やられたとばかりにジャミルが肩を落とす。
 
「で、でも……、とりあえずモンスターは大丈夫だと思うし……、
とにかく早く追いかけよう!」
 
男3人は慌ててアイシャを追って走って行く。
 
 
「……ウ……ウウ……ウ……ウウーーッ!!」
 
 
「……ドラゴンさん……、お願いだから暴れないで……、
今助けてあげるから……」
 
「……サワル……ナ……ニンゲンモ……ゾーマモ……ミナ、
テキ……ダ……ウウウ……」
 
「……アイシャ!何やってんだよ!」
 
漸くアイシャの姿を見つけ、ジャミルが怒鳴る。
 
「ジャミル、皆!……それはこっちのセリフよ!遅いわよっ!
もうー!!」
 
「アイシャ、これは……、一体……?」
 
身体中血だらけ、酷い傷だらけで横たわるドラゴンの
姿を見てアルベルトが驚く。
 
「私にも分からないわ……、でも、このドラゴンさんは
敵じゃないわ、だって、もうゾーマはいないんだもの……、
アル、お願い……、ドラゴンさんを助けてあげて……」
 
涙目になってアイシャが必死でアルベルトに訴える……。
 
「……ニンゲンメ……、ウウウ~……」
 
「ぴゃうーっ!!」
 
ギロッとドラゴンが目線の合ったダウドを睨み、ダウドは
慌ててジャミルの後ろに隠れた。
 
「……うわ、こりゃ酷えな……、こんなガタイのすげーの……、
腹ぱっくりいってるじゃんか……、どうしたんだよ、本当に……、
この傷つけたの……、相当腕の立つ奴じゃねえか……」
 
「待ってよ……、この新しい洞窟……、一番最初に入ったのは
オイラ達じゃなかったの……?」
 
「とにかく、傷を治さなくては……」
 
アルベルトがドラゴンにべホマを掛け集中治療する。
 
「……ドラゴンさん……、もう少しだから……、痛いの我慢してね……」
 
アイシャがドラゴンの側にそっと寄り添い身体を支える。
 
「はあ、終わった……」
 
ようやく魔法を掛け終えて治療を終え、アルベルトが汗を拭った。
 
「アル、ありがとう!ドラゴンさん、もう大丈夫よ!」
 
「……ガルル……」
 
「んー?眠っちまったぞ……?」
 
ジャミルがドラゴンをちょいちょい突っついて確認する。
 
「ねえ~……、寝てる間に逃げようよお~……、目さましたら
襲い掛かってくるよお~……!」
 
「そんな事ないわよっ!それに、このドラゴンさんは
私達の言葉が判るみたいだから色々お話聞かなくっちゃ!!」
 
アイシャがヘタレダウドに怒る。
 
「……どうも怪しいんだよな……」
 
「……うん?」
 
アルベルトがジャミルを見た。
 
「あの案内人のいけすかねえ糞ガキさ……」

エピ3・4

涙の宝石

4人はドラゴンが目を覚ますまで待って話を
聞いてみる事にした。
 
「……グ……?」
 
「あっ……、ドラゴンさん……、目を覚ましたのね……、
もう安心よ……、良かった……」
 
アイシャがドラゴンに寄り添い、優しくそっと身体を撫でた。
 
「ナ……ゼ……ダ……?」
 
「やっと起きたかよ、あーあ……、こっちが
眠くなっちまうよ……」
 
ジャミルが大口を開けて欠伸をした。
 
「ナゼ……、タスケル……、オマエタチニンゲンハ……、
テキデハナイノカ……」
 
「そりゃ、あんたがこっちに危害加える気ねえなら、
別にこっちも何もしねーよ」
 
「……ニンゲンニモ……、オカシナヤツラガ、
イルモノダ……」
 
「私達だって……、出来るなら争いごとなんか
したくないもの……」
 
アイシャが自分よりも遥かに大きな体のドラゴンを
じっと見つめる。
 
「フン……、オマエタチハ……テキデハナイノダナ、
リカイ……、シテヤル……」
 
「そうよ!分かってくれたのね、ドラゴンさん!」
 
アイシャがドラゴンに抱き着く。
 
「……ワタシハ……、ゾーマニチカラヲカスヨウ、
キョウリョクヲモトメラレタノダ、シカシ……、
コバンダタメニ、ココノドウクツゴト、ワタシモ……、
ナガイアイダネムラサレ、フウインサレタ……、ワタシヲ……、
ゾーマデモセンノウサセルコトハデキナカッタノダ、ツヨイイシヲ
モッテイタカラナ……」
 
「じゃあ、俺達がゾーマを倒したから……、あんたの封印も
解けたって訳か……」
 
「……?オマエタチガ……、アノゾーマヲ……、
シンジラレン……」
 
「別にいいよ、信じてくれなくたって……、実際、
アレフガルドの奴らももう、俺達の事なんか皆忘れ始めて
平和ボケしてるしさ」
 
「で、でも……、よく眠らされただけですんだねえ……、
ゾーマに逆らったんでしょ……?」
 
ダウドがおずおずと、改めてドラゴンを見た……。
 
「……イズレハ……、コノセカイヲシハイシタアトニ……、
ワタシヲユックリトジカンヲカケテセンノウサセ……、
シタガワセルツモリデアッタノダロウ……」
 
「あうう……」
 
「……処で、聞いていいかな……、あなたのその傷は一体
誰にやられ……」
 
アルベルトがドラゴンに訪ねた瞬間……。どやどやと、数人の
男達の声がし、此方に歩いてくる音がした……。
 
「だ、誰かくるよおっ!?」
 
「な、何で!?あの糞ガキ……、一体どうなってんだよ!!」
 
「……マタ……、チガウヤツラガキタノ……、カ……、ヤレヤレ……」
 
「……ドラゴンさん……?」
 
「ヤツラノネライハ……、ワタシト……」
 
「何だ?おめーら、何やってんだあ?ここはオメーらが
遊ぶところじゃねーんだよ、ガキはさっさと出ていけや!!
……父ちゃん、母ちゃん、泣かすぞ!ええっ!?」
 
現われたタチの悪そうなおっさんの集団……、その中の
ガラの悪そうな男の一人がジャミル達を脅す。
 
「お前らこそ何だよお!お、オイラ達は、あの大魔王ゾーマを
倒した勇者一行だぞおっ!」
 
試しにダウドが素性を使って威張ってみるが。
 
「……」
 
「……」
 
「……はははははは!」
 
効果なく、男達は揃ってバカ笑いした……。
 
「ガキャあ、ふざけてんじゃねーぞ、コラ!夢物語は
家に帰ってからにしろ、親切な俺達が忠告してやってんだよ!
笑ってる間に早く帰れ!!」
 
男達がドラゴンをニヤニヤ笑いながら見ている……。
 
「……な、何よ……、来ないでよ……!ドラゴンさん……、
やっと今怪我が治ったんだから……!!」
 
アイシャが必死に両腕を広げドラゴンを庇う……。
 
「おーい、嬢ちゃん……、邪魔だな……、んな事関係ねーんだよ、
ちとどいてくんねーかい……」
 
「あっ……!?」
 
「……アイシャっ!!」
 
男の一人がずかずかとアイシャに近寄ると、乱暴に手首を掴み頬にビンタする。
 
「……の、やろう……」
 
キレたジャミルが王者の剣を今にも抜こうとするのを
アルベルトが必死に押さえて止める。
 
「駄目だよっ!むかつくのは分るけど……、今の相手は
モンスターじゃないんだよっ!?」
 
「アルーっ!放せよっ!……はなせーっ!!」
 
「……ムスメヨ……、スマヌナ……、ワタシノタメニ……」
 
ドラゴンが鼻を鳴らしアイシャを気遣いすり寄る。
 
「ううん、これぐらい平気よ……、こんな事、慣れっこだもん……」
 
赤く腫れた頬を押さえながらアイシャが悪戯っぽく
ドラゴンに微笑みかける。
 
「何だ?嬢ちゃんとドラゴンはお友達ってわけかい……?ふーん、
こいつは都合いいや…」
 
そう言って男の一人が隠し持っていた銃をアイシャに向けた。
 
「……!!」
 
「はーい、ドラゴンちゃーん、この子痛い目に遭わされたくなきゃ、
さっさと卵渡して死んでちょーだいなー、早くしてー!死ねっ!」
 
「……な、なんだって……?卵だと!!」
 
「そうだよ、そいつは取引で莫大な金額になるんだよ!!」
 
「……誰と契約してんだよっ!」
 
「ぼうやたちには関係ないんでちゅよー!黙りんちゃい!」
 
「俺達はある奴に頼まれてそいつを取りに来たの!わかった!?
ぼーや達!!ゴールドが手に入りさえすりゃいいんだよ!ゴールドがな!」
 
「それじゃてめえら……!密猟者かっ!?」
 
「言い方が悪いなあ、お宝ハンターと言ってちょーだいっ!」
 
「……だめえっ!そんな事……させないんだから!!」
 
アイシャが暴れ出し、銃を向けた男に飛びつくと、
手に思い切り噛み付いた。
 
「あたたたた!いたっ!いてええっ!やめろっ、こいつめっ!!」
 
「……ア、アルっ!ラリホーだよっ……!」
 
ダウドがアルベルトにこっそり耳打ちする。
 
「……よしっ!」
 
咄嗟にアルベルトが男達に魔法を掛ける。途端に男達は
パタッと倒れ、全員すぐに眠ってしまったかの様に見えたのだが……。
 
「アル!ありがとう!ドラゴンさん、今度こそもう大丈……」
 
次の瞬間……。
 
「なろお……、なめんじゃねえぞ……、畜生……、魔法なんか……
使いやがっ……て……」
 
完全に眠り切っていなかった男の一人が再度アイシャに
向けて銃を発射した。
 
「え……、えっ……」
 
「……グ……グオオォォォ……!!!」
 
「ド……、ドラゴンさ……」
 
男がアイシャに向けて放った銃弾は身を挺してアイシャを
庇ったドラゴンの心臓を貫いたのだった……。
 
「やっ……、いや……、いやよ……、こんな……、こんなのって……」
 
「フン……、ざまあみやがれ……っ!?」
 
ドラゴンは最後の力を振り絞り男達に向けてブレスを放ち……、
荒くれ男達は全員影も形も残らないほどに焼き尽くされる……。
 
 
 
「……ドラゴンさん……、ごめんなさい……、ごめんなさい……、
私の……、私の所為で……」
 
アイシャの涙がドラゴンの顔の上にポタっと零れ落ちた……。
 
「コレデ……ヨカッタノダ……モウ……、ネラワレルノモ……
リヨウサレルノモ……、タクサンダ……コノママ……シズカニ……、
ネムラセテ……クレ……」
 
そして弱弱しく首を動かし、ドラゴンがアルベルトの方を見た。
 
「ソコノ……ショウネン……、ワタシノ……サイゴノタノミダ……、
ワタシノイノチハマモナクツキル……、ワタシガシンダアト……、
ワタシノカラダヲ……、マホウデモヤシテクレ……」
 
「だ……、だめよっ!そんなの!!」
 
「分った……」
 
目を伏せてアルベルトが静かに頷いた。
 
「ア……、アルっ!駄目っ……、やめて……、お願い……」
 
「アイシャ……、もう……眠らせてやれよ……、判るだろ……?
これ以上ドラゴンを苦しめたら駄目だ……」
 
ジャミルがアイシャの瞳を見つめ、肩をしっかり掴んだ。
 
「……わかんないよっ!そんなの……、だってだって……、もう一度……、
べホマの魔法を掛ければ助かるかも知れないじゃないっ……!!」
 
「アル……、わりぃ、このジャジャ馬を先に……」
 
「うん……、アイシャ……、ごめんよ……」
 
「アルっ……!?……っ……」
 
アルベルトにラリホーを掛けられアイシャはそのまま
眠りに落ちた……。
 
「……スマヌナ……、イヤナヤクメヲオシツケテシマッテ……」
 
「ううん……」
 
「……ニンゲンナド……、コザカシイモノダト
オモッテイタ……、ダガ……サイゴニオマエタチニ
アエタコトニ……、カンシャ……スル……」
 
「……」
 
ドラゴンはそのまま静かに目を閉じ……、閉じた瞳から涙が
一滴流れ、宝石へと変わる。
 
「……涙が……、宝石になっちまった……」
 
ジャミルがそっと宝石を拾い上げる。
 
「どうするの……?これ……、売ったら売れそうだよ……、ね?」
 
ダウドがちらっとジャミルの方を見る。
 
「……とてもじゃねえけど……、金になんか換える気になんねえよ……」
 
「だ、だよねえ……」
 
「やっぱり……、さっきドラゴンの身体にあちこち
付いていた傷は……、密猟者にやられた時のなのかな……」
 
「だろうな……、最近は一般の奴らでも殺し屋並みの腕が
立つかなり厄介な奴らもいるみたいだしな……」
 
「あ……」
 
「ダウド、どうかしたか……?」
 
「卵だよお……」
 
「卵……?あれか……」
 
ジャミルが奥を覗くと卵が残されぽつんと置いてあった。
 
「見た限り、もうすぐ産まれそうだよ、これ……」
 
「よし、持って帰るぞ……」
 
「……ええーーっ!?」
 
ジャミルの言葉にアルベルトとダウドが同時に声を揃える。
 
「あのドラゴンは卵を守ろうとしてたんだ、このまま此処に
残しといたら間違いなく、又違う密猟者に狙われちまう……、
卵を俺達で守ってやろうや……、それが俺達に出来るドラゴンへと
してやれる事だ……」
 
「分ったよ、ジャミル……」
 
アルベルトが頷く。
 
「……とりあえず、此処を出ようや……、あんの糞ガキめ!
どういう事なんかとっちめて理由を聞かねーと……!!先の
ドラゴンの傷といい、密猟者といい……、何が何だかわかんねー事
だらけだっ!!」
 
ジャミルが急いで眠っているアイシャを背負うが、その表情は
複雑そうである……。
 
「……ドラゴンの子……、育てるとか……、ううう~……、
これからまーた大変な事になりそうだよお~……」
 
ダウドが不安そうな声を洩らした。男衆はドラゴンの最後を
見届けた後、アイシャが目を覚ます前にと、沈痛な面持ちで
洞窟を後にするのだった。


新しい命

「……どう……、なってんだよ……」
 
ジャミル達が洞窟を出た後……、案内人の少年を探したが、
何処を探してもあの少年の姿は見つからない……。
 
「一体あの人……、結局はオイラ達に最終的には……、その、
ドラゴンの……、卵を取って来させようとしてたわけ???」
 
「……考えたってわかんねーよっ!あー!苛々するっ!」
 
「ねえ、密猟者達の依頼人て……、やっぱり……、僕らも利用されて……」
 
あまり口にしたくなさそうな表情で、アルベルトがジャミルを見た。
 
「……可能性は高いよな……、けど、何でドラゴンの事は
俺達にだけ嘘ついて伏せてたのか……、その辺もとっちめて
聞かねーと……」
 
「だよね……、卵を取ってこさせようとして何回も密猟者達に
頼んで失敗してたのかな……、で、でも……、だとしたら……、
あの人……、とんでもない組織と絡んでたんじゃないの……?
やばすぎるよおお……、ううう~…冒険者組合どころじゃない
よね……」
 
ダウドがぶるっと震えた。
 
「……金で釣って密猟者達に卵狙わせて……、何人もドラゴンに
返り討ちに遭ったのか……」
 
「まだ……、あんな若いのにね……、組織で相当上の方の
立場なんだろうか……」
 
 
そしてその夜……。4人は焚火の側で静かに夜を過ごす。
一方のアイシャは目を覚ました後も泣いてばかりだった……。
皆の側から一人離れて後ろを向き、只管嗚咽し続ける……。
覚悟はしていたものの、予想以上に悲痛なアイシャの泣き声を
男衆は辛い思いで背に受ける事になる……。
 
 
「……ひっく……、ふぇっ……」
 
「アイシャ……、もういい加減で泣くのやめてくれよ……、
頼むからさ……」
 
「……や、やめないわよっ……、ひっ……、ふえっ……、だって……、
ドラゴンさんは……、私を庇って死んだんだよ……、私……、
ど、どうしたらいいか……、判らないんだもん……」
 
「それはアイシャが悪いわけじゃないよお……、だからもう
泣かないで……」
 
ダウドもアイシャを慰めるが……。
 
「たく……、こっちが辛くなるじゃんか……」
 
ジャミルが立ち上がり、何処かへ行こうとする……。
 
「どこ行くんだい……?」
 
アルベルトが尋ねると、ジャミルは困った様に顔を
伏せると頭を掻いた。
 
「……もう……、見てらんねんだよ……、ちょっとそこいら
回ってくるわ……」
 
「あ……、ちょ、ちょっと待って……、ジャミル!」
 
「あー?何だよ……、ダウ……?」
 
「卵……、凄く動いてるよお!」
 
「何っ!?」
 
「ひっく……、うっく……」
 
「アイシャっ!」
 
ジャミルが後ろからがばっと、泣いているアイシャに覆い被さる。
 
「……きゃっ!?な……、なによお……」
 
「こっち来てみ!?ほらほら、いいから……!!」
 
「私……、そんな気分じゃな……?」
 
「アイシャ、これ……、ほら……、卵だよ、見てごらん……」
 
アルベルトがアイシャにドラゴンの卵を見せる。
 
「たま……ご……?ドラゴンさんの……?」
 
アイシャがそっと優しく卵に触れた……、その時……。
 
「あ……!」
 
4人が見つめる中、卵にヒビが入り……。
 
「ぴういーーっ!」
 
「……わあっ!」
 
雪の様に真っ白な……、小さなホワイトドラゴンの赤ん坊が誕生した。
4人はその姿に思わず魅入ってしまう……。
 
「ぴ、ぴ、ぴ、ぴーっ?」
 
ドラゴンの赤ん坊は不思議そうに首を傾げ、小さな羽を広げ
あどけない表情で4人の側をパタパタと飛び回る。
 
「……うはっ、すりこみだな、これ……、こいつ俺達の事、
親だと思ってらあ」
 
「うわあ……、くぁいい……、よおお……」
 
ダウドはもう赤ん坊ドラゴンにデレっデレである……。
 
「ふふっ、何だか変な気分だね……」
 
「ぴっ!ぴっ!」
 
赤ん坊ドラゴンはアルベルトにすり寄った後、アイシャの側へと
ふよふよ飛んでいく。
 
「ぴーっ!」
 
「ほーら、もう泣くのはよせっつってんぞ、泣き虫アイシャ!
チビに笑われるぞ!」
 
「もう……、何よ……、ジャミルのバカ……」
 
「ぴ」
 
「……おいで、チビちゃん……」
 
「ぴっ!」
 
アイシャがそっと赤ん坊ドラゴンを抱きしめる。
 
「……初めまして、チビちゃん……、私はアイシャです、どうぞ宜しくね」
 
「ぴぴっ!」
 
こちらこそ宜しくとばかりに赤ん坊ドラゴンもアイシャに
すり寄って甘える。
 
「あ、アイシャ、オイラにも抱かせてえ~!」
 
「俺にも貸してくれよ!」
 
「ぼ、僕も……」
 
此処に親バカ4人も誕生す……。
 
 
更に夜も更けて……。
 
「アイシャ、まだ寝ないか?焚火の火、そろそろ消すぞ」
 
「うん……、チビちゃん見てたの……、見てこの顔、
眠っちゃったのよ」
 
アイシャがジャミルに抱いていた赤ん坊ドラゴンを見せた。
 
「ぴぴ……」
 
「……後生楽なツラしてんなあ……」
 
「ふふっ……」
 
「アイシャ……」
 
「ん?なあに?」
 
「これ、お前が持ってろや……」
 
ジャミルがアイシャにドラゴンが最後に流した
涙の宝石を見せた。
 
「親ドラゴンの……、形見だよ……」
 
「うん、ごめんね……、私、泣いてばっかりで……、でも、
もう泣いてられないね……、皆でこの子のお母さん代わりに
ならなきゃいけないんだもん……」
 
「……いいんだよ、無理しなくてさ……、あいつらも凄く
心配してるから……、さっきはああ言ったけどよ……」
 
「ジャミル……?」
 
「……正直、泣いてるお前は見たくねえ……、けど、
今は我慢すんなよ……、二人とも寝てるしさ……、その……、
俺が側に……、いてやるから……」
 
「ジャミル……、うん、ごめんね……、もう少しだけ……、
泣かせてね……」
 
「ああ……」
 
ジャミルの腕の中で、アイシャが静かに涙を流した……。
 
 
……次の日。
 
「みんなー!もうっ、いつまで寝てるのっ!朝よ!」
 
アイシャはすっかり元気を取戻し、いつものハッスル娘の
アイシャに戻っていた。
 
「……ったく、本当……、ゲンキンな奴だなあ……」
 
呆れた様にジャミルがまだ眠たげに欠伸をした。
 
「でも、良かったよ……、アイシャがまた元気を
取り戻してくれて……」
 
アルベルトがくすっと笑った。
 
「……ゲンキンな奴が元気を取り戻したか……、
ふぁあ~っ……」
 
「朝から寒いよ、ジャミル……」
 
「ん?まだそんな時期じゃねえと思うケド……?」
 
「……はあーっ……」
 
「ダウドっ!今日はダウドが一番遅いわよっ!」
 
「も、もうちょっとおおお~…」
 
「だーめっ!起きるのっ!」
 
「あああ……、ううう~……、残酷だああ~!」
 
ダウドが布を押さえてアイシャに抵抗する。
 
「……何が残酷よっ!起きなさいっ!!」
 
「あううーーっ!」
 
 
「ぴっぴ!」
 
赤ん坊ドラゴンが元気に飛び回りジャミル達に挨拶する。
 
「おー、お前も早えーなあ……」
 
「じゃ……み……、る……?」
 
「あ!?」
 
「ジャミル!今、この子……、言葉を……」
 
「ある……?」
 
「マ……、マジ……?」
 
「親ドラゴンだって僕らと会話出来たんだもの……、
この子だって……、喋ってもおかしくないよ……」
 
「おーいっ!アイシャ、ダウド!ちょっと来てみろ!」
 
ジャミルが慌てて二人を呼ぶ。
 
「……な、何だい……?」
 
「どうかしたの?」
 
「早く、早く!」
 
「ぴっ……、あい……しゃ……?」
 
「チビちゃん……?凄いわ……、あなたもお話出来るのね……?」
 
「だ……う……ど?」
 
「うわあ……、しゃ、しゃべ……、喋ってるよお……」
 
「じゃみる?……ある……?……あいしゃ?……だうど?
……ぴっ……」
 
「す、凄すぎるぞ……、天才だぞこいつ……、しかも産まれて
わずか一晩で……、……俺達の名前覚えやがった……」
 
あまりの赤ん坊ドラゴンの秀才ぷりにジャミルが
思わず興奮して震える。
 
「うん……、すごすぎるよおお……!ジャミルと違って
天才だよお……!」
 
「そうだな……、俺と違……、うるせーんだよ、バカダウド!」
 
「いたっ!」
 
「ばかだうど……?ばかだうど……」
 
「……うわーっ!そんなの覚えなくていいよおおーっ!」
 
秀才赤ん坊ドラゴンに慌てるダウド。
 
「ばかだうど、ばかだうど!」
 
赤ん坊ドラゴンが嬉しそうにパタパタ宙を飛び回る。
 
「……どうすんのさあーっ!余計な事覚えちゃったじゃないかーっ!!
よーし、もう一つ覚えようね、これはバカジャミルです、覚えてね、
チビちゃん!」
 
「あ……、この……!バカダウドめっ!」
 
「べーっ!」
 
ダウドがジャミルにアカンベをする。
 
「ばかじゃみる!ばかじゃみる!ぴーっ!」
 
「……二人とも!下らない事教えないんだよっ!」
 
……早速教育係になりつつ、アルベルトが二人を怒鳴る。
 
「わりィな、シスコン……」
 
「あっ……」
 
「しすこん!しすこん!」
 
「ジャ~ミー……、ル~ううう~……!!」
 
「……うわあーっ!俺知らねー!」
 
「オイラも知らなーいっ!」
 
「待てーっ!このバカ二人組ーっ!!」
 
「おれしらねー!おれしらねー!」
 
パンチングマシーンを持ってアルベルトが二人を追い掛け回し
その後を嬉しそうに赤ん坊ドラゴンがよちよち飛んで付いて回る。
 
「……全くもう……、本当、皆どうしようもないんだからっ!」
 
と、言いつつも嬉しそうな表情をアイシャが見せたのだった。

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  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-14

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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  1. エピ1・2
  2. エピ3・4