「胎の子」

 背中から海に落ちて
 両腕を水面の向こう
 伸ばしたまま 落ちた
 泡ばかり
 水ばかり
 寒さばかり
 呼吸さえ意識しなければ出来ない
 口惜しさに花びら一枚噛んだって
 息の絶えるわけでもなし
 沈痾(ちんあ)が止まるわけでもなし
 肉体はやがてぷらんくとんにでもなる
 水じゅうに散らばって見えなくなって
 鯨にでも 食べられたらいい
 ぐずる胎児の格好して
 紅一色の胎の中
 月探す雲よどんだ瞳は
 沈んで
 回って
 呼吸(いき)をする…

「胎の子」

「胎の子」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-06

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