星の営み

 息が白い、森で、ホットチョコレートをのみながら、月からうまれる子どもたちを見ている。
 夜の街のざわめきは、旋律。
 ノイズ、と、きみは呼んで、アルビノの彼は、やさしさにうもれて、酸素不足。チョコレートの甘さに酔いしれて、わたしのまぶたは重く、だれかの、狂おしい恋がはじまる深夜を想像して、しあわせ、というやつを、かんがえさせられるから、金曜日は憂鬱だった。
 あしもとで、リスが、パンケーキを焼こうと言う。
 底なしにやさしい、シカが、月からぽこぽこうまれてくるちいさなひとびとに、心配と、慈しみに満ちた眼差しを向けている。母親みたい。
 もう、この星はそんなに永くはないのだと、みんな知っているけれど、べつに、かなしんでいるひとはいなくて、むしろ、ようやくその時がくるのか、と、どこか安心しているひとが多い。ニュースのなかのひとたちだけが深刻そうで、となりの家の、スナックのママをやっているワニは、鼻で嗤ってた。

(ねむい)
(おなかがいたい)
(しあわせ、が、わたしを悩ませる)

 あらたな生命をうみだす月は、あかい。

星の営み

星の営み

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-23

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