14歳の時のこと

・中3のとき、それまで2年間は丸ごと休んでたのに突然登校しようと思って最初から登校し始めたことがあった。別に今から勉強して追いつこうとしてたでもなし、ひとり寂しくなったでもなし、特に理由もなく突然行きました。
・そこでその教室の中では一番かわいい方の女子のことを「やらしてくれへんかなあ~」っていうノリで眺める毎日を送っとったわけで、当然むこうも気づいてたし申し訳ないけど気持ち悪かったやろうな。でも事実やからしゃーない。
・そしてそれがすべてやった。

・中学からの家までの帰り道は敷地沿いの道から右に行くか左に行くかの二通りあった。殆どの日は左に行くんやけど偶に右に行くこともある。それで或日、左の道を不良とか坊主部員たちが取り囲んどって何か誰かを待っとるみたいで物騒やったから今日は右に行くか思うて右に行ったわけやん。
・そしたらその日は20メートルくらい前にその女子が歩いとった。まあ別に然ういう事もあるやろ思て普通に歩いとったら或瞬間にふと、女子が振り向いたんよ。
・俺が後ろに居るん気づくわけやん。まあ別に俺もそのまま家に帰ろうとする。女子はそのあと何回も振り向いてこっち気にしてくる。
・え?これもしかして後つけてる思われてる?でも別に帰り道を行っとるだけやし引き返しても逆に怪しいしやな、そのまま歩いてく。そんでまだ真っすぐ続く道を横に貫く一回り大きい車道に出たところで俺はまた左に曲がってもうすぐそこに自分のマンションがあるわけやけど女子はまだ真っすぐの道を歩いていった。
・うん。俺の家こっちにあんねんから別にその道を行っただけやん。後つけよう思うたらそのまま真っすぐついて行ったらええねやん。何でそんなんせなアカンねん。そんなんして付き合えるわけでもなしに。
・でも女子はホンマに頻りにこっちを監視するみたいに何回も振り返っとった。

・丁度4月の末頃のこと。もう1ケ月くらい登校してきてたけど、翌朝、何か急に行きたくなくなってきた。たぶん女子が何回もこっちを振り返って慌ててたみたいにしてたんが怖かったんやろう。ぜったい後つけた思われたやん。そんなんやったらもうええわ別に、どうせもともと学校なんて行ってなかったんやから。母が説得してきても駄々こねた。
・でもなあ、折角1ケ月くらい行ったのに今ここでやめてもなあ。どうせ真面目に中学生する積りももとから無いことやし、ホンマにただ社会との関りを経験する意味でだけで登校し続けるかあ~思いました。やからその朝、遅刻いう形にはなるけど9時か10時くらいやったっけかな、登校したんやけども。
・それはあの女子も同じやった。何と俺が教室に遅刻して入ってきた十数分後くらいに同じように遅刻して来た。
・その時の、教室全体のどこか訝しむような空気感は憶えとる。女子の友達の女子たちがきっと然ういうような顔をしてたんやろうか。
・案の定、それから数日間にわたって教室の後ろ側で女子たちの大会議が開かれとった。
・「あいつ、ストーカーや」。
・たぶん然ういうことやろ。女子に一番近い友達が大会議の中心に立って何やら神妙にヒソヒソ喋って教室中の女子たちに言い伝えとったもん。ほんで当のあの女子は、物凄く気分悪そうにしとったわい。

・いや、あの、これ誰が悪いんか言うたら、俺が悪いんやろな。
・「ヤラしてくれへんかな~」いうてジロジロしつこく見とったんがアカンねやん。
・然うやで年頃の制禦しきれへんガキンチョやで。それは認めるけど、ストーカー云々のそれは知らんわ。いや別に女子たちが何話してるか聞いてへんけど多分それやったやん。
・それから見事に、もう学級中の女子たちの見る目が変ったんよな。
・それまでは髪もボサボサで如何にも不登校生みたいな風貌の元不登校生を物珍しそうに見る感じやったのが、完全に「キショイ奴」を警戒し嘲笑する目に変った。

・しかも実はその時は俺自身、これでもそこまで深刻には考えてなかった。
・いや別にこっちは実際何の手も出してへんし何もしてへん。関係ない女子たちが関係ないくらいに騒いどるだけやろ。
・ただ少なくともそれからというもの、その女子と友達たちは俺の行動を事細かに監視するようになる。
・そんで例えば修学旅行でのこと、俺と何となく他の奴らよりは仲良くしてた感じの背の低い吹奏楽部の男子生徒が居って現地でも一緒に行動することがあったんやけど、そいつが「こっち行ってみよ」って言うた先に偶々その女子が居ったりしたことがあった。そんでその女子は常に俺が何かしてけーへんか監視しとるわけや。となると修学旅行先でも後をつけようとしてきた!みたいに気持ち悪そうにこっちをビクビク見てきよる。
・いや、ええってホンマに。
・そんで例えばその修学旅行で催し物みたいなんがあってみんなで踊ろう!みたいなクソショーモナイのやっとったけどショーモナ過ぎて俺も笑いはすることもある。その壇上にその女子があがってたこともある。その時も催し全体を観て笑っとったわ。
・でもその女子は頻りに俺を恐らく監視して、俺をストーカーに見立てる證拠を掴もうとしてたんやろう。
・そんでまた俺もアホやったことに、それでもまだその女子のことをを「やっぱりヤラしてくれへんかな~」みたいな差別的な感覚で捉えとった。他の奴らのショーモナイ動きを見て笑うてる流れのままに、その同じ壇上で踊ってるその女子のことを一瞬だけ見た。
・するとどうやろうね。その女子は證拠を掴もうとしとんねん。当然のことながらその一瞬だけ目が合うた。
・俺はそのとき催し物全体のノリに対して笑っとったわけや。で以て女子から見れば、ニヤニヤしながらやっぱり自分のことを見てきとる!キショ!ってなる。

・その修学旅行は5月のことやったっけ。そこからはもう、すごいで。
・行く場所行く場所でめっちゃ「キモイ」言われるようになった。主に女子たちにな。最初は同じ教室の中だけやったんが見る見る広まっていって学年中の女子からもう然ういう目でしか見られへんようになる。
・隣に俺が居るだけでやで。「うっわwwキッショww」言われる。女子たちに。女子たちも小馬鹿にして大勢で笑うことでどこか優位に立とうとしてくる。ほんで地元の中学やから。小学校から知っとる子も少なくないねん。割と傷ついた。
・そこまで広まってくともう、「ストーカー」いう単語さえ入れればどんな噂に脚色してもええ感じになってくる。家まで付き纏ってたんかも知れん。毎日下校時に追いかけ回してたんかも知れん。もはや常習犯でドラマでよくある夜な夜な家の周りに現れるああいう感じなんかも知れん。何とでも言えんねん。そこまで具体的に言わんくても「あいつストーカーやで」言うだけで、もう全部が有り得るんやから。

・夏休みを挟んで9月頃にもなると、先生たちが死んだような目で接してくるようになる。
・罪人を見る目いうんは、あの目をいうんやな。よく勉強になりましたわ。こんなに学校でタメになったこともあらへん。まあでも仕方ないわ。先生たちも別に悪ない。
・更に俺が帰り道を行こうものなら、男も女もみんな逃げ出す。
・そんな仲良くはないけど偶に楽しく話とかしたことある男子たちまでも、命からがら必死に俺から走って逃げてく。
・究極的には、あの背の低い吹奏楽部も。そんなこんなで9月のはじめ頃だったか、半年ほどに及ぶ冒険に幕を閉じました。

・真実ときたら、100でもない。0でもない。50ですらない。
・25か75やった。女子を軽んじ性の対象としてしか見てなかったんは事実や。そしてそれがすべての発端やった。でもじゃあみんなは俺を何て呼んでたんやろう。
・「ストーカー」や。そんなん知らん。何やねんそれ。



・中学校てやっぱり所詮は学校なので小学校とは何も大して変らなかったし想定の範囲内やったから、単にその場に実際に居ることでちょっと具体的に知れたわ程度のひとときやった。でも半年だけでも行って良かった思う感じはある。



・小学校のときはずっとヘラヘラして騒がしくて世の中のあらゆるものを茶化したような態度やった奴が中3仕様になっとって難しい顔で廊下をゆっくり歩くんを見た。めっちゃ背ぇ伸びとった。うわ~中1からずっと観察して「アイツ中2の夏まではエエ奴やったのになあ・・・」とか言ってみたかったわ。別にエエ奴どころかウザい奴やったけどな。
・ああいうのを見ると、ああみんな斯ういう身近な小さな変化とか色々経験して少しづつ大人になってくんやな思て、もうその時から既に2年間の欠場の深刻さをちゅっとだけ思い知っとったような然うでないような。



・何やねんハンダゴテて。嫌いやわ宇宙物質みたいな銀色のネチネチしたんをネチネチ熔接するいうネチネチした手元の作業。全然でけへんやん。全然やらへんかった。工作の先生みたいなんも半分キレかけとったもんな。いやもうエエって別にこんなん出来んでも俺が俺であることには何の関係もあらへん。



・水泳は全部キレイに休んだ。小学校の時とおんなじで。違ったんはプールのボロさと周りの反応くらいやろう。どうやら授業に出ること一つ一つが評価に繋がるんらしい。お前が然ういう選択するんやったらお前の責任やいう雰囲気が小学校とは違った。ほう然うか。そら仕方ない。そこだけ妙にみんな大人びてる。
・中学そのものが小学校に毛ぇ生えたみたいなもんなんやろうな。でもみんな子供のままや。でもこれに更にみんな部活やっとる。子供やのに社会人みたいな事しとる。ていうかもう社会人みたいな事しとんのに子供でしかない。しんどいわ。面倒やわ。みんなで社会人への準備ごっこしとる。ついてけへんわ。ついてきたくない。



・学校によく分厚い広辞苑を丸ごと一個持っていっとったな。
・例えば「フランス領ギアナ」「イギリス領何とか諸島」「デンマーク領グリーンランド」とか「西暦何年にイギリスから独立」「スペインから独立」とかいう文字を見て昂奮する為やった。
・然ういう文字を見るだけでもう堪らんかった。別に日本は関係なくても。周りから見ればアイツ広辞苑とか持って来とるやんいうことで無条件に勉強できる奴みたいに思われてたんかも知れんけど、たぶん学年で普通に成績最下位やった思うもん。
・慥かカバンはえらい毎日パンパンやったけど読みもせん教科書をわざわざ毎日持って帰っては持っていっとったからそれもある。小学校のノリのままやったんやろ。



・白紙に何も見ずに世界地図を描いてみよういう授業で然ういう感じで英仏とかの海外領土の一部とか一昔前まで殖民地やった国とかあとは知ってる国とかを適当に描いてあとは各大陸の輪郭を適当に引いてみて提出したら、職員室の前に飾られた。
・いや所謂パレスチナ地域とかの一応重要とされてる地域のとこなんて丸で何も描けてへんかったりしとんのに、それっぽく世界の輪郭が描けとるだけで社会の先生がわざわざ褒めてきよったんやで。「勉強できるんか君は」みたいな感じで一目置こうとしてきよる。いやこれでええんかいな。結構やなそれ。



・いやほんま作文だけはやめて下さい。数学よりも嫌やった。数字はそもそもよくわからんけど作文は一応は日本語やん。日本語は喋れるから餘計イヤや。何やねん読書感想て。何やねん今年の目標とか何とかかんとかって。拾いたいんやったら生徒が好きなときに書いて湧いて出てきた感想とか意見を拾たらええやん。まさかやけどこれで言葉の練習になっとることにしとるんとちゃうやろな。



・国語とか社会の先生が取分けウンコやったかな。担任の先生も平凡やけどそれ程でもない。国語の人は生徒をしっかり見てる風を装いながら常に何も見えてない。生徒を本当に只の子供扱いして地位を担保に本当に全員を見下してる。
・朝礼か何かで前倣え!で男女二列になろういう時、明らかに俺の前の列全体が歪んで曲っとったから正そう思て先頭からちゃんと真っすぐになってる位置に俺だけ立ち直したら国語の先生としては呆れるしかなかったみたいやで。
・「何で?何で普通のことが出来へんねん!」みたいに怒っとった。絵に描いたような凡人やけど絵に描いたようやのに別に美しくない。もしかして或意味そこから学べということならば、あまりにも他人行儀な教え方で身に迫らへんわ。

・社会の先生は教科書の受け売りと常識的な偏見に塗れてる。而も本人が思ってる事というより然ういう偏見を持つことで立派な大人になれた感を演出しようとしてるだけ。ちょっと知識があれば賢い奴。ちょっとでも自分に似て当り障りのない人間であれば将来性を見込み始める。七三分け。闘争世代。なるほど、社会の先生やった。



・修学旅行のとき、九州のクソ汚くて思ったより深そうなドブ池で決して弱くない雨の中、カヤックだかカヌーだか分からんものに乗らなければならなかった。
・行く前に自分で陸のレジャーか水上のレジャーか選択するクダリがあって、泳げもせんのに水上の方を選んでもうた。やって小学校のときの修学旅行でもやった事あったから。そんで以て、実はあの女子が既に陸の方を選んで居た風でもあった。やから水上にした。
・いざその時になって二人乗りの細長い舟で相棒になったのは球蹴り部のアホやったわ。その時点でもう嫌やったけど案の定、漕ぎながら別の舟のアホ達とじゃれ合い始めたんや。
・どいつもコイツも投げたり打ったり蹴ったりする部員どものアホで、而も運悪く俺の舟の相棒が一番みんなから茶化されてる注目株やったっぽい。大勢から櫂でどつかれ揺すられ、俺らの舟だけ引っくり返る。
・アホは泳げてた。浮けてた。俺は泳げない。浮けもせん。そのままクソ汚い雨中の思ったより深いドブ池の奥深くへと、人間のカラダが順調に沈んでいった。
・偶に今でも夜に思い返してみると信じられへん。あの時もう真上を見上げて片手を伸ばしながら耳穴にクソ汚い水面が届くいうところまで沈んでいってた。
・今思うとあれが人の死の瞬間なんかて、感じんねん。音が無かった。どんだけ浮き上がろうとしても泳げへんから沈んでいくばかり。助からなさそうな状況を受け入れる暇もなく、世界が遠のいてく。
・あ。あ。あ。言い表せばそんな感じ。
・でもホンマにあと一歩でドブ池に呑み込まれるホンマに寸前で、小学校も別やった全然知らん他の組の男子が懸命に伸ばしてた片腕を引っ張り上げてくれた。
・「何で泳げへんのに此処に居んねん!」「なあなあコイツ泳げへんのに水の方選びよったで!」。ホンマに、全く以てその通りや。俺が間違っとった。
・もっと感謝したら良かった。ガチで縁の無い奴やったから名前なんてわからん。そいつが居らへんかったらニュースになってた。学校の管理不届で男子中学生死亡。修学旅行中の出来事でしたみたいな。何で、ホンマに何であんなにギリギリで救われたんやろうか。救ってくれたんやろうか。
・俺が悪い。その所為やろうか、助けてくれたソイツの舟から斜めの草茂る陸に這い上がってまだまだ死に物狂いやった少年に対して国語の先生が怒鳴ってきたわな。
・何しとんねん!何でお前らはいつも然うなんや!
・ほう。然うか。確かにこっちを選んだ俺が悪いな。
・「お前ら」か。「いつも然う」か。一体日頃から何を見とんねん。何も見てへんねやろ。
・今そこでアホ達が小突き合って招いた面もあるから「周りから突かれて落された!」ことを叫んで訴えてみたらどうやろう。先生の表情が急に曇り始めよる。
・そして特に返事もすることなくドブ池に目線を戻しよった。見て見ぬフリ。おかしいなあ。今その目で見つめてるんはドブ池とそこで舟漕いでる生徒たちの筈なんやけどな。確かに見て見ぬフリとはこの事やなあ。
・ほんで国語の先生の隣でさして何も聞いてないし何の状況も把握する気ない音楽の先生のババアがケラケラ楽しそうにずっと笑っとった。全く子供達は未熟やなあアホやなあ愉快やなあ~みたいにして。
・生きてて良かった。こいつらに殺されてた。

・その日の夕食後に担任から呼び出されて一応事情を訊かれはした。水の方を選んだことが抑々間違いやったみたいな事は言うた思う。そんで担任も自分からヘラヘラすることでそんなに一大事じゃなかったように持って行こうとしてたわ。
・取敢えず小突いてきた奴らにも然ういう聴き取りは行われたんやろう。翌日にみんな本屋で待機するみたいな時間があった時、小学校から知ってる別の組の野球部の男子一人が深刻そうな顔で謝りにきよったから。
・「いやええわええわ」言うて俺も避けるように遠ざかってくと尚更に申し訳なさそうな顔してた。俺がホンマに溺れそうになってた瞬間を見たんやろうな。アホ達にまじって普通のアホで居たことは仕方ないけど、然ういう心を持ってるんやったら屹度これからもっとエエ奴になる。小学校から俺の事知っとったってのもあるかも知れんけど。それからそいつと関る機会はもうなかった。



・あの吹奏楽部の小さい奴は果して友達やったんやろうか。ずっと常に一緒に行動したわけでも気にし合って居たわけでもなく、でも近くに居た時は仲良くしてた。誰かを否定するようなこともなく少しばかりナヨナヨしてて俺が言うことに感心したりとかしてくる。ずっとではないけど何があってもめっちゃ細やかに笑ったりしとる。
・そいつが一番に仲良くしてたんは寺の息子の優等生やった。そいつは小学校から知ってる。ゲームの話になったとき、「太刀を使っとる」って言われてもタチが何の武器かわからへんかった俺を見て半笑いしながら横目に遠ざかられたりしたな。小学校の時、学校を代表して和太鼓をめっちゃ頑張って叩いとったし。
・ほんで寺のお父さんの坊さんがもう小学校の時に亡くなってた思う。何か然ういう話は聞いてた気がする。それやからか知らんけど中学になって責任感がより漂ってめっちゃ優等生っぽくなっとったもん。
・吹奏楽部のアイツに「ストーカー」の件を教えたんも、そいつやった。授業間の休みの時間か何かの時、そいつの机の傍でそいつから話を聞きながらチラチラ俺の方見つつ顔色が悪なってく吹奏楽部。9月のこと。俺も夏休み前までは髪スッキリしてたのに結局また不登校生みたいなボサボサ頭で登校してきてたから気持ちが既に切れかけとったかも知れんけど、然ういうまたキモなった風貌も相俟って噂話がより生々しく聞こえたんちゃう?
・地味にきつかった。ホンマに、あいつから笑顔が吸われてくみたいな感じで。寺の息子も別に悪ない。あそこまで学年中で醸成されたやろう厚みある噂話と俺の在り様からして疑う要素どこにもないしな。
・でも何か、「あいつには近づかん方がええで」みたいな話になっとるんも何となくわかったからキツい面も多少あったな。
・でも、ホンマにもっと友達やったんやったら噂をもっと少しは疑ってくれてたりしたんかも知れへんな。やっぱり友達ではなかったんや。やっぱりどの道、たぶん誰も悪くないので何の悔いもありません。



・最上階の音楽室から眺める春とか夏前の街を風景を、何となく色と空気で憶えてる。
・これや。学校生活とはこの景色のことや。風の涼しい感じと空と雲とが餘りにも心地よくて涙しそうになる。
・これを、普通の学校生活と人生を送って普通に今ここで感じることが出来てたらもっとどんだけ素晴らしい景色やったことやろうか。そこで合唱の授業とかする。よくも悪くも学校やけど、これはこれでええ。みんな懐かしく思って涙する人もたくさん居るかも知れん。でも俺から涙が流れたとしたらそれは物惜しさより憧れからやろう。もう二度と経験できないことじゃなくて結局一度も経験できなかったことなんやから。

14歳の時のこと

14歳の時のこと

  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-23

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