『パンドラ』

シルクのシャツ
ほんの一滴血の色


『パンドラ』


さっきまでの雨は
この為だったのかも
二人きりの部屋が
まるで世界に取り残されたみたい

左手首の時計は
外さないでいて
そこに隠した秘密なんて
別段興味はないの

アタシは貴方に拾われた
ただの野良猫です
今夜一晩貴方を癒したとて
それからなどないのです

どなたかを匂わせる
この部屋に不釣り合いな
安物のチョーカーが
何だかとても愛おしくなるくらい

アタシは自由だから
自由であるために
他の全てを捨ててきたから

貴方は何も捨てられないのね
洗面台にポツンと残る
脱色剤はきっと
誰かの髪を金色にしたんだろう

移り気な世界を憂う
貴方の為に今夜は
優しい女を演じるから
それに釣られて
貴方の泣言はポロポロと

でもそれならきっと
その人は戻ってくるよ
きっと貴方を見捨てられない
どうせ貴方無しじゃ生きられないんだから



「アタシの名はパンドラ」

『パンドラ』

『パンドラ』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-18

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