銀の鯨
けさ ぼくは海岸で鯨のひれを拾いました──
ぼくにはどうもそれを棄てることができません
ええ それを棄てることなぞぼくにはできやしないのです
さすれば頬に 冷たい翼に似たそれをえくぼのように付けましょう
その鯨のひれさながらにざらついた灰いろのきらめき、
いろいろの歴史が沈みたゆたっている──それは貝です
それは鯨のひれのような貝の殻 けさ それをぼくは拾ったのです
ぼくはこの貝の殻でどこまでも下へ飛ぶことできるでしょう…
何故って空と海はおなじ青! シンデレラの灰掛かるざらつきは
夢の降り音楽のくだるリズムの引掛りとなり ぼくを踊らせる
どうしてそれを棄てることができましょう? 海の貝は翼です──
貝の殻は地下へと海底へとくだり泳ぐ鯨のひれという翼──
みてくださいますか ぼくが詩という群青の海へ降りるとき
空という水面へ月をめがける銀の鯨 尾びれをそよがせているのを
銀の鯨
いつか「動物詩集」「植物詩集」編みたいな~。アポリネールみたいな。