銀の鯨

銀の鯨

 けさ ぼくは海岸で鯨のひれを拾いました──
 ぼくにはどうもそれを棄てることができません
 ええ それを棄てることなぞぼくにはできやしないのです
 さすれば頬に 冷たい翼に似たそれをえくぼのように付けましょう

 その鯨のひれさながらにざらついた灰いろのきらめき、
 いろいろの歴史が沈みたゆたっている──それは貝です
 それは鯨のひれのような貝の殻 けさ それをぼくは拾ったのです
 ぼくはこの貝の殻でどこまでも下へ飛ぶことできるでしょう…

 何故って空と海はおなじ青! シンデレラの灰掛かるざらつきは
 夢の降り音楽のくだるリズムの引掛りとなり ぼくを踊らせる
 どうしてそれを棄てることができましょう? 海の貝は翼です──

 貝の殻は地下へと海底へとくだり泳ぐ鯨のひれという翼──
 みてくださいますか ぼくが詩という群青の海へ降りるとき
 空という水面へ月をめがける銀の鯨 尾びれをそよがせているのを

銀の鯨

いつか「動物詩集」「植物詩集」編みたいな~。アポリネールみたいな。

銀の鯨

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-12

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