キャンバス

蒸気船みたいに息を吐いた、
空気が澄んでみずみずしくて、
たくさん走れそうだった。
白い地面は明るいんだ、
夜なのに明るいんだ、
足跡が青白く染まっている。
海底や砂丘にいるみたく、
跳ねて遊んでみようかな、

僕ら、いつ透明になれるだろう?

いてついた風が骨の深くまで届くとき、
牡丹雪が肉の奥まで濡らすとき、
モノクロの視界は狭まって、
積もるばかりの音も聞こえなくなる。

有彩色でありつづけること、
ぴかぴかの光を浴びつづけること。
のぞむものも望まれるものも全部、
ありふれていると形容するには難解すぎるんだ。

手足をあたためて今は眠ろう、
小さな声で歌いはじめよう。
容易なことで笑えなくなる前に。

僕ら、どうして透明になりたがったんだろう?

他人事みたいに問えるときが来る、
とは、限らないけれど。
真昼の月みたいにそこにありながら、
誰かを祝福できる日を待っていよう、
十六時の僕ら。

キャンバス

キャンバス

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-20

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