5 - 2 - 詭道。変わらない一人称。

ここは詩じゃない。
含ませる母音が足りなくて、立ち上がりの鋭さと耳に付き纏う不快な幼さ(ぶりっ子)で誤魔化すような、そういう作文。
順序も秩序も放棄してしまって、とうとうTwitterの延長ですらなくなった。
言いたいことを思い付くだけ言う、長ったらしい叫喚の様が、誰をも横切らないことを願う。


言い尽くしたことを言い直し、絶望を庇うように、題名の付いた詩へとこじつけられる。
何がしたいのか、何が言いたかったのか。
思い付きのまま始めたのだと、きっと正確だろう分析をする。たとえ書いてあろうがそれを信じることはなく、動機は常に推測し間違うものだ。

夜まで行けば、その寒さに暖を取る許可が下りるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。見渡す限りの罪悪も見捨てて、それでも行き着けない私は、結局選べなかったのかとお前に嘆く。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、どこにも行けないことに安堵した。

誰かに共感を求めて、更にその先、そうしたら誰かと関われるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。君との思い出をも使って、汚してまで、そんなことを考えていたのか。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、最後までひとりでいられることに安堵した。

ひとりきりの吐き溜めで泣くのなら許されるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。その気持ちの悪さに何度辟易すれば、私はそれを直せるのだろう。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、心が動かなくなったことに安堵した。

書けば、空にも横にも内にも手が届かない現状を越えられるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。諦めること、厭きること、満ちること。そこに心情的な違いはあろうと、その差異が行動に表れることはない。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、妄想だけで満ち足りることに安堵した。

ここで自罰や内省紛いのことをして、それで罪に向き合えるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。快楽の伴うその自分本位な自虐は他者を巻き込んでいるのだと、この前提のもと、罪は常に累積させてきた。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、本質を違え空回る性分に安堵した。

―――私の言葉は私にだけ適応されるものであって、どうか誰も傷付けることがありませんようにと、罪を罪と判じて尚、とっくに爾後になってから不誠実にもそう口を開いた。

ここで告解紛いのことをして、それで何かが許されるだろうかと、無断で期待を抱いていたのか。作文はただの思考の延長で、自己完結に拍車を掛けていくだけで、何かを許したところでそれを信じることはない。期待は叶わなければその罪がそれ以上重くなることはなく、信用信頼など皆無であるお前という存在に安堵した。

全部言わないと。
全部言わないと?

自覚も前提も増やして、感性と感受性は失くして、それなのに今の自分が気持ち良くなる為だけに哀れむことは止められなくて、疲弊が連なってそれに対する軽蔑の疑問が頭を刺す。
言葉を小出しにしたように、意味が付随していた感情を少しずつ零してきたのだなと、少し前のお前が何より嫌い、拒もうとしたことは、既に起きてしまっていたのだなと、今まで赴いて来た何処よりも蔑視する場所に来たのだなと、
予感も自覚も、いつだってあったのに。
どうして、こうなるとわかっていた時、続くことをやめなかった。
どうして。
動機は常に推測を間違うもので、その上で蔑視に使おうと、道楽として推測を考察を解釈をするけれど、その経路、結果について破綻させることなく詳らかに書くことは不可能だろう。
そう。毎回ただの再確認で終わるというのに、起床から就寝から夢中まで、前提と照らし合わせ、定型文を打ち続け、打ち続け、打ち続け、
嗚呼、本当に動機なんてわからない。
論点が変わっていても戻ろうと思わない。そんなことは些細なのだろう。
軽薄、薄情、情実。
流れるように、すり替わっていく。
詭道に嵌ることが楽らしい。
望むままにその態度を取り続ける。
私に流されるまま視界を移し、その時に多くを忘れて零しているはずだ。
軽薄、薄情、情実。
罪悪という事実だけが辺り一帯に見え、もう、痛ませる心もなければ罪を感じられる頭もない。
全ては捨て鉢にされる。他ならなぬ、お前にだ。
変容はわかっている。様相がおかしいことも。
それを、時季から間が空いているから一時忘れてしまっているだけで、これは再来した感覚なのではないかと、どこかの私は季節病のようなものだと捉えているらしい。
失ったのは緊張と焦燥と執着。
軽いしもやけの気持ち良さと膿疱を間違え、指を強く押し込んでしまうような、表裏に付きまとう致命的な勘違い。私はもう、冬にいても夏の空気を思い出せるくらい人生に慣れ切っている。厭き厭きしている。間違うことなど容易だ。雨を被って心地良いのは秋までで、高低差が無ければしもやけは起きなくて、早朝の起き易さは季節によって変わると、そこまで思考を巡らせなければならないことが億劫だった。捨ておこうと思った。
何を考えてみたところで、それは暇潰しであり、カテゴリには"どうでもいい物々"とある。
軽薄、薄情、情実。
ただ、それだけだ。
どうでもいいまま軽く扱った物々からの正当な復讐なのではないかと、因果が廻ったことにしてみる。生と死を、始まりと終わりを、こじつける。

――――――
詭道に浸かった人間が嘯く。これから言う言葉は作文において存在して良い言葉、考えではさらさらなく、明らかに制裁対象だろうけれど、それでも最後まで避け続ければ、解釈と分析によってはそれが意図的なのではという誤解を産んでしまう可能性があり、それは望まないから、これが最後に作った言うタイミングだと仮定し、一度だけ言ってしまおうと思う。
誰もいないことを望みながらのこの言動は矛盾していてあまりに笑えるけれど、私もお前も画面越しの変換先にいることには変わらない。
一度だけ、中立でニュートラルで主観的な、そんな言葉を許す。
――――――
お前の泣く姿を蔑視し、お前の希死念慮を蔑視し、お前の窮地を蔑視し、
そういう、自らへの不誠実が引き起こした事態なのだろう?これは。
どうしようもなかったことなのだ、これは。

人そのものを侮ったわけではない。人は好きだ。
他人(ひと)は好きだ。
純潔や誠実を求める自分の姿に酔っていた。遂行する能力などないと言うのに。
海の色は青で、雪の色は白で、砂漠は黄土色で、私は海にも雪にも砂漠にも、どんな集合にもいけるよう、不純物は蔑む必要があった。
自らの為の欲と自己愛に浸かり、間違いばかり引き起こすお前だけを嫌い、迫害をしたくなった。
故に、私だけを嫌い、迫害を返してくれるのだろう?
かつてあった害意は加速度に直に反映され、認められていない内紛が内側から私を壊してくれた。
蔑視と迫害という結論へ、迷いや違和感を感じることもなく短縮された経路で至ったことや、ひとりでは自らも確立出来なかった、出来ないことに、私が何かを感じることもない。
現在という場所は、余分に時間を過ごした先に待っていた遥かな凪で、
終に、もう、既に、そういう副詞が似合う、爾後だ。
爾後に何かを感じたところで何かが出来るわけでもない。
つまり無感は正当なことだ。


絡み合った物々を全て解き表すことは出来ないだろうけれど、内省とその顕示でこんなにも楽しくなっているのは自己愛の証拠で、それだけわかっていれば、後はどうとでもこじつけられるだろうと軽んじて、
安心する。とても、いつも通りで。
詭道は酷く楽で、騙されることは心地良くて、ゲーム性があると捉えたら負けず嫌いまで出ちゃって、はぐらかしたというのに非対象者としても対象者としても満足感がある。
自らへの態度が言葉にも作文にも表れるのだと、本性は隠せないのだと、私もお前も笑った。

5 - 2 - 詭道。変わらない一人称。

5 - 2 - 詭道。変わらない一人称。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-01

Public Domain
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