芹澤鴨は発達障害

 芹澤鴨は粗暴野蛮の人と思われがちだ。決してそうではなく、人としての熱量が過剰なだけなのだと思う。鴨は理想に熱狂する。現実は見ようとしない。だから尊皇攘夷の理想と現実の差に苦しむ。結果、酒を呑んで酔いに熱狂するしかないだけなのだ。
 芹澤鴨という奇妙な名前の由来は常陸風土記にある。『芹澤村を過ぎ行く大和武尊命は鴨を従えた』というような意味の文からなのだ。これに熱狂して芹澤鴨になった。大和武尊命を帝と見立て崇拝して、鴨が付き随う。つまり勤皇の志士である。
 土方歳三は現実だけの人だ。理想だの思想など鼻で笑っている。目の前にある人間関係を掌握、競争相手に勝つこと。それしか考えていない。そして事実、新撰組の実権を握っていく。必要とあれば暗殺剣も行う。それは剣術ではない。当然、卑怯がどうのこうのなどとは思わない。
 もし幕末などでない、剣術のみに生きられる時代であったなら、鴨は剣術を究めて土方を遥かに凌いだろう。しかし現実は、新撰組の人心掌握には遅れをとり、と言うより何もせず。酒を呑んで自分の世界に入っているばかりで、その結果は酔い潰れているところを暗殺されてしまう。つまり周りの現実がまるで見えていなかった。
 話は変わるが、発達障害の有名人という中に長嶋茂雄があるのに驚いた。野球に熱中すると周りが見えなくなったらしい。人としての過剰な熱量の故だろう。
 発達障害とは、それのことだ。発達の正体は、大人になるとは、人間の関係性の把握に過ぎないのだ。一つの事にのみ集中していれば、障害と呼ばれてしまう。芹澤鴨は発達障害だ。

芹澤鴨は発達障害

芹澤鴨は発達障害

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-22

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