4 - 2 - 凛冽。

ずっと、冬の冴え渡る静けさが好きで。
運命に選ばれようのない私は、
多くの言葉を春と夏と秋の底に仕舞った。
どうしようもなくなるまで放置した私が、
まるで望んだように、
いつしか、白々(しろじろ)と罅割れた景色が広がっていた。
その中で、私だけが汚泥の色をしていた。


引き止めた腕の感覚。空の色。服の袖丈。交わした言葉。

いくつだけ思い出せるか繰り返し、見るまでもなく冷たい色だ。

欄干に足掛ける身を、いつたりと、褪せることなどないと(おも)った。

妄想(ゆめ)なれど黎明で待つ再会に、不変を掲げ、何より乞うた。

履き違い願ったことすら遣り遂げず、そうして出来た後悔の海。

涙すら意味に先立つ。そう知って生まれた(うろ)が海を呑み干す。

残灯が瞼の裏に焼き付いて、それでも笑え、或いは泣けと、

言うがまま、言われるがまま従った、お前と私の罰兼ねた罪。

その願いは間違っていた。わかっていた。わかっていたのだ。それでも縋った。

永遠の凪。好ましさだけ継ぎ接いだ、語呂合わせより不敬な所業。

あとに朝。視界は闇を捉えたまま。整合しない創作の日々。

凪ぐは卒。軽蔑に笑み、哀れんだ。寒威が廃れ毒が回った。

運命を先取るような、かつての名。幾重に今にかっちり嵌る。

相殺し、意味は0からやり直し。全て含めた自作自演だ。

気付いたら霧散している生涯の、その構造に双嫌悪した。

いつの間に目が内側に向かっていた。何故ここまでに醜いのだろう。

反芻に狂さず厭きたその(さが)も、抉れど穿てど揺れぬ器だ。

ひとりきり、(せい)が凍てつく。

念えない。手段が滑る。遠ざかっていく。

変質が抵抗されず侵蝕し、忌避の痛みも忘れてしまう。

失せ物は確かにここにあるはずで。何故触れない。感じられない。

兆しなく、焦燥もなく音もなく、変わったことに愕然がない。

何もかもわからなくなる。言葉事、侮蔑を厭い(どこ)(つくば)る。

とうに狂った。

在りし日の全ての傷を感じ得ない。

言葉が消えた。歌が(つい)えた。

冗長に生きてしまった、過去にだけ、(うちがわ)にだけ歩いた末路。

なぁ。揺らがぬ視界に何を映せる?

追憶が、感傷のよう。後悔は演じられていた。

お前は死んだ。

唯ひとつなどと嘯き心凪ぐ。褪めた記憶と残り喘いだ。

転じど尚も遡源(さくげん)に臥す。

4 - 2 - 凛冽。

4 - 2 - 凛冽。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-17

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