「うん」ハラスメント

 返事は「はい」だと昭和生まれの私は思っている。ところが近頃、「うん」が増えてきた。正直言って、平成の小僧や小娘に「うん」と答えられるのは気分のいいものではない。しかも不思議なことに、一般の店よりも、いわゆる固いところに多いのはどうしてだろう。
 皆さんも居酒屋で「アタリメください」などと頼んで、「うん」などと言われたことはきっとないだろう。ところが市役所などで「これは、ここに書くんですか」と聞いて「うん。そこに書いて下さい」なんて返事されたことは時折あると思う。
 これはいったい、どうしたことなのだろうか。
 昭和の頃の先生、医者、役人は、とにかく恐かった。私などは中学の時、通知表でほとんどが五か四で、この五段階評定が令和の時代に理解して貰えるかも不確かだが。それはともかくとして体育だけが二で、「人としてカタワだぞ」とまで青野という教師に言われたものだ。
 まあ、そのお役人意識なども、時代と共にすっかり影を潜めた訳だが。やはり、それは亡霊のように生き残り、今時の公務員の若者の口にも取り憑いて「うん」という返事になって飛び出し、こうして中高年を脅かすのだろうと思うのである。

「うん」ハラスメント

「うん」ハラスメント

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-15

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