ペールブルー

感情の外付けは不可能だと分かったから、
増殖が止まない喜怒哀楽を廃棄する。
内外の区別は無意味だと分かっていても、
修正の利かない自己犠牲が堆積する。

花期も間近な百日紅が笑う。

夕焼けに呑まれる前のいっときを
安易にペールブルーの空と呼んだ、
うなされそうな夏の日が消えても
不用意に思い出してしまえるよう。

それからの踏み石が頼りなくとも
視界に残り続けるなら心配ないよ、
身体に詰まっている清冽も汚濁も
無作為に空へ散らせば道標になる。

曖昧な言葉は優しさだったと知って、
雄弁さを騙る喜怒哀楽は鏡像に変化した。
適度な自傷の心地よさを知ったって、
軽さを持った自己犠牲は仮定に帰結する。

道端の待宵草が光っていた。

ペールブルー

ペールブルー

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-09

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