平和軸 一虎くんに彼女がいたら 第11話
第11話「両親に紹介」
それから1年と数ヶ月。私たちは成人式を迎えました。とらの髪が伸びて場地くんみたいになってる。
「20歳になったね」
「早速、結婚する?」
「その前にお互いを両親に紹介しなくちゃ」
20歳の年の春。私たちは付き合って5年になることに気づいた。
「今年で5年になるね」
「もうそんなんだっけ?」
「うん、そろそろ両親に会わせたいな」
そして数日後。ついにとらを私の両親に会わせることになった。
「変じゃない?」
とらは長髪をひとつに纏め、スーツを着てきた。今日のために新調したスーツだ。ちっとも変じゃない。
「大丈夫。変じゃないから行こう?」
とらは両親のいない時に何度も実家に上がってるけど、両親と一緒にいるなんて、なんだか変な気分だった。
幸い、とらは両親に気に入ってもらえた。タトゥーがネックになることがなくてよかった。
「よかった、とらが両親に気に入ってもらえたみたいで」
「結婚しちゃう?」
とらはすぐに調子に乗る。だけど、結婚はまだ先。
「まだとらのお母さんに会ってないでしょ?」
「俺の母親かぁ」
とらは少し嫌そうな顔をする。そういえば、とらの両親は離婚してて、お母さんはシングルマザーなんだよな。それ以上は聞いたことがない。とらは自分の親が嫌いなんだろうな。
「お母さん、嫌い?」
「嫌いだな。小坊の時から誕生日祝ってもらってねぇもん」
「誕生日祝ってもらえないと悲しいよね。その分、私が死ぬまでお祝いしてあげるよ」
「梨奈は優しいよな。大好きだぜ、そう言うとこ」
とらは誕生日どころかお母さんにネグレクトされた経緯があるから愛情に飢えてるんだよね。友達には恵まれてるけど母性は……私がなんとかしなくちゃ。
平和軸 一虎くんに彼女がいたら 第11話