平和軸 一虎くんに彼女がいたら 第2話
第2話「独占欲」
「大橋ってかわいいよな」
クラスのとある男子の一言。だけど、それが何か気に食わなかったのか羽宮くんは教室を飛び出してしまった。ほんとに何気ない一言だと思うんだけど。
私は授業を抜け出して羽宮くんを捜した。彼は屋上にいた。
「羽宮くん」
彼は返事をしない。1メートル以内にいるから聞こえるはずなんだけど。
「ねぇ、羽宮くん」
私は負けずに声をかける。
「一緒に授業受けようよ。それともこの時間、私を独占する?」
「……は?!」
“独占する?”の一言で羽宮くんは振り向いた。顔は真っ赤だ。
「大橋、お前今“独占する?”つったか?」
「言ったよ?」
「あのさ……本当に独占していいのかよ?」
「いいよ?」
私たちは仮病を使って早退し、学校を出た。
「ねぇ、羽宮くん、どこ行くの?」
「取り敢えず、駅行かね?」
駅中のゲームセンターで遊んだのち、駅を出ると雨が降ってきた。
「雨……」
「うち近いけど、寄ってく?」
「え?いいの?」
走って10分ほどで羽宮くんの家に着いた。
「お邪魔しまーす」
玄関で靴を脱いでいると、羽宮くんがタオルを貸してくれた。
「髪、拭けよ」
「ありがとう」
羽宮くんの家の匂いがするタオルで濡れた髪を拭いながら私は羽宮くんの後をついて行った。
平和軸 一虎くんに彼女がいたら 第2話