化物の美学

また壮大な独り言が始まったよ

愛だの救いだの何をほざいてやがる

ありもしないものを追いかけているうちに死ぬ

ありもしない記憶に縋っているあいだに

すべてが白紙になっていく

くすねた心臓で息を繋ぐおれは化物だ

自分という異物を殺すのに余念がない

救いようのない化物だ

救いようのない化物にも美学がある

すべてを嘲りながら抱き竦めるような美学が

おれは自分というものを端から信じていない

おれは救いという幻想を端から求めていない

おれはお前の望む方法でお前を愛したくない

壮大さが、白さが、醜さがおれを象っていく

孤立した化物の美学だけを眼差していたいのさ

沈黙を愛していながら黙れない人間の不器用さを

化物の美学

化物の美学

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-03

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