「林檎のブランデー」

 林檎のブランデー グラスに傾く
 うすいグラスは生意気に氷を浮べて
 こぁろん
 くぉろん
 うたた寝
 こくり こくり
 ざまはない
 見上げた蛍光灯の光の記憶がしつこくて
 うるさくて
 寒月の細道を
 五月の大通りにしようとする
 明滅の軍団
 戦いを放棄した不戦敗者此処にあり
 ひとり 酒を呑む
 ブランデーのとろとろとした感触が
 舌をなめ
 頬肉をなめ
 嗚乎まさに食われんとす
 林檎の酢えた残り香に
 氷はいづこ
 氷はいづこ
 もう溶けきって 沈んだらしい
 いたずらに水滴はじく硝子の肌
 うたた寝は眠りとなり
 深い底のほのかな夢を見る
 ()が夢ぞ…?
 不戦敗者はブランデーをあおる
 ひときわ濃ゆい酩酊を今日も呑みほして

「林檎のブランデー」

「林檎のブランデー」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-19

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