快楽としての贖罪

瓦礫の山を前にして、俺は

ありもしない罪を告白し始めた

そうすること自体が贖罪であるかのように

澱みなく供述し始めた

あれほど頑なに拒絶していたのに

(いかずち)に打たれ、人が変わったかのように

唐突に默り、冷静沈着になり

終りのない罰を要求し始めた

証人なき法廷で、いや、誰一人いない法廷で

噎せ返るような屍臭の漂う法廷で、俺は

実在しない人間への犯してもいない罪を

恍惚の表情で述懐している

なあ、聞いてくれよ。聞け

死んで償えることなど何一つない

お前は苦しみに喘ぎながら生きるのがお似合いだ

お生憎様、俺はもう苦しみに喘ぐことはないんだ

不幸にも、それは悦楽に転じてしまった

俺の贖罪が終ることはない

快楽としての贖罪

快楽としての贖罪

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-23

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