打切り【TL】バベルを駆ける

0.5話打切り。18禁展開前ですが元が18禁なので18禁設定。
処刑大好きショタ王子/オレ様盗賊

0.5【打ち切り】

 恋人がオンラインゲームにのめり込むようになってから、主なデート場所は彼の自宅になったけれど、その家は新しく広く、黒内海(くろうつみ)千代(ちよ)も居心地が良かった。コーヒーも飲み放題で、人体工学に基づいて作られた柔らかなクッションはソファー代わりにもなり、恋人の読んだ本を開きながら寛げる。世間一般からみれば、それは退屈で閉鎖的でどこか独裁的なところがあるのは否めないけれども、彼女にとってはそう悪いものではなかった。
 本日は生憎の雨。いずれにしろ屋内で過ごすのが無難であった。そして堕落クッションに尻と背を埋もれさせ、遠雷と雨音を聴きながら本を読むのも風情がある。
 彼女は何気なく恋人が向かい合っているパソコンの画面を見遣った。そこには金髪の美少女というべきか、美少年というべきか分からないキャラクターが悪辣な顔をして映っていた。
 恋人は、本棚端の漫画本の傾向からして美少女のような少年を愛でる節があるから、この金髪のキャラクターは少年であるのかもしれない。千代も目を通したことがあるけれど、美少女然とした年若い少年がいくつも年上の女子大学生や片親違いの姉、近所の人妻や実母などと女装しながら性行為をする内容である。
 画面の美少年と思しき人物は、美少女キャラクターたちを昔絵本でみた奴隷市の如く一列に並べている様を見下ろしていた。
「このキャラクターはね、美少女が苦しむところを見るのが好きなんだよ」
_恋人がそう説明し、画面を指で差す。並べられた美少女キャラクターは大体皆似通ったビジュアルをしていたが、その中に1体、明らかに見た目の異なる美少女キャラクターがいた。
「あ、クローチェちゃん?」
 ピンク色の長い髪に、ピンク色のドレス、大剣を抱えているそのキャラクターこそ、恋人のプレイキャラクターで「クローチェ」という。曰く、千代をモデルにしたというが、彼女本人からすればまったく似ていなかった。だが恋人からすると贔屓目もあるのだろう。
「そう。千代ちゃん、紫色好きだろう?毛先にちょっとグラデーション入れてみた」
 彼はそう言うけれども、画角からは分からなかった。否、画角を問わず千代には分からなかっただろう。
 ムービー中であるらしかった。だが部屋が明滅し、画面は一瞬白く爆ぜる。
 ゴロゴロゴロゴロ……
「千代ちゃんの好きそうな感じのイケメンキャラも作―……」
 ドカーン ガシャシャ……
 近場で雷が落ちたらしい。照明も落ちる。千代にはその瞬間、恋人とデスク周りの影絵が見えた。直後、すべてが暗黒に包まれる。



 クローチェは左右を見渡した。先程とはあまりにも異なる視界に、左見右見(とみこうみ)せずいられない。そこに恋人の部屋はなく、むしろ屋外でさえある。横を見れば、顔色の悪い粗末な身形の女たちが両手両足を一直線に括られて並んでいた。彼女も然り。一人だけ、薔薇の飾りのついた露出の激しいピンク色のドレスに身を包んでいる。背中に重みに手を伸ばせば金属と思しき硬く冷たい感触。
 訳が分からなくなってしまった。コピーとペーストを繰り返して倍々に増殖させたような2種類3種類ほどの違いしかない貧相な身形の女たちの列の中で、クローチェは忙しない。誰も一人だけ場にそぐわぬ奇抜な衣装に身を包んでいることについて、気にする者はいない。否、一人だけいた。クローチェ本人である。
「君がいい。君にしよう。君にするしかないな」
 列を成して正面には人工的な崖がある。敢えて床を作っていないといってもいい、城の一部があった。崖には縄が一筋張られ、その先にはまたこの城の続きが当然のようにあり、長い階段。その上に玉座。座すのは金髪の少年に思えた。遠く目だが、白い衣類に肩の金紐、光芒を放つ金ボタンに見覚えがある。それは"美少女が苦しむ様が好き"ではなかった。
 距離が遠いにもかかわらず、それはすぐ傍で話されているかのように感じられた。声を張っているわけではない。平生(へいぜい)の音吐(おんと)である。ゆえに違和感があった。また、音にかかわらず、遠く離れたその者が明瞭に見えるのである。
「綱渡ができたら、望みをひとつ叶えてあげるよ。ひとつでは不服かな。そうだな、まぁ、やれてみてから考えればいいさ」
 金髪の少年は玉座の肘掛に頬杖をついた。
 クローチェはその場にいた兵士に腕を掴まれて一歩前へ出された。数ある女の中で、他が均一化された風采であるが、確かに彼女は奇異だった。しかしよくも遠くからの指示をこの兵士は明確に理解したものである。
 嫌な予感はしていた。中間地点を抜かれた床の側面は赫赫(かくかく)と染まり揺らめいていたのだが、なんということか!足の幅ほどもない綱の下はかぎろう炎が敷き詰められているのだ!
 背後には兵士が立っていた。槍を構えられている。つまり後ろから刺されるか、前に進むかである。横から抜けても、囲むように並ぶ兵士たちが平然とはしていまい。
 クローチェは驚くほど高い踵のついた靴を踏み出した。脹脛の張る感覚も、踵が平たくなる鈍痛も、指の潰れるような痛みもない。それは足の一部と化していたように馴染み、だが小気味良い跫音(あしおと)は鳴るのだ。少し歩き、平坦な地はなくなる。赤々と燃え揺らぐ炎の上の唯一許された足場は綱。薔薇の飾りがついた靴先は綱の上に乗った。彼女は空を見上げる。下からは熱風がやってくるけれど、ドレスの裾にとっては微風(そよかぜ)らしい。ほんのわずかに靡くだけ。
 彼女は綱を踏み締めた。一歩目はどうにか。しかし二歩目。その身体は大きく揺らぐ。踏み外したのではない。狭い着地点を、片足は正確に捉えたはずだ。しかし所詮、人が歩くためのものではなかった。縄といって差し支えのない丸みを帯びた表面は容赦なく滑り、或いは傾き、乗った者を落としにかかる。しかし、彼女は火海に落ちることはなかった。足か、または綱か、何か妙な力が働いているのである。彼女がもし、高みから見物している金髪の少年に気を回す余裕があったなら、感嘆の声を聞くことができたかもしれない。
 結論からいって、彼女は炎の波、火の蛇に呑まれることなく綱を渡りきってしまった。そしてふと、それは衝動のように思い出すのであった。何故ここにいるのか、否、何故ここに至るのか。どのようにしてここにいるのかという理由ではない。何故ここに来たのかという動機を。目的を。 
 彼女はピンク色の疾風と化した。手には短剣。誰も渡りきると予想した者はなかったのだろう。あまりにも手薄な警備を前に、クローチェは長丈のドレスを気にすることもなく、また装飾過多な裾に阻まれることもなく優雅を越えて嫌味なほど真っ白く照り輝く階段を駆け上がった。
 ここに"紛れ"込んだ理由はひとつ。邪智暴虐なる君子フィリスレギスへ死を献上するためだ。
「死ぬがよい!フィリスレギス!」
 それは本意に外れた言葉だった。クローチェは気が狂(ふ)れたように発言後、うろたえた。しかしそれでいて、その手は刃物を握り、金髪の美少年の胸を突き刺しているのである。金糸に覆われた碧眼は目を剥いた。そしてたじろじいだふうに見せかけ、後ろへと下がったが、間合いをつけると彼女の手を下から弾いた。
「ぼくは死なないよ。やるじゃないか!やるじゃないか、君は!美女なら美女らしく、艶めいて死になさい」
 美少年は胸を赤く染めていても構うことなく、左右の掌底同士を重ねると、掌に光りの玉を作ってクローチェへ放つ。彼女は後ろへと倒れ、受身をとっても階段を転がり落ちていった。邪智暴虐の君子は麗らかな面をして、転がったピンク色の落ちていった階段を一歩、一歩、宝玉が弾むような出で立ちで降りていく。その手には白銀の刀身が美しい武器がある。
 クローチェはすぐには立ち上がれなかった。躙(にじ)り寄ると表現するにはあまりにも優美な足取りでやってくるフィリスレギスを睨みつける。
「美女は得をするというからね。醜い者たちに夢をみさせてあげなければならないよ。あっはっは。美女に生まれてくることはまったく得ではないとね。一定の枠を決めるとそこから美というものは自然発生するね。美女をかき集めるつもりが醜いのも混ざっているな。人の審美眼なんて所詮そんなもんさ。そして美なんてものは、頼りないね。絶対じゃないんだ。つまり、美を作るには枠を作り、少数派にしてしまえばいい。或いは美だけを集めてしまえばまた美醜が生まれるわけだね。おかしいな。こういう特徴の美女を連れてこいと言ったのに、全然美女ではないのもいるな。女からの推薦形式にしたんだよ。男のいう美女は信用ならないから」
 フィリスレギスは可憐に口元を綻ばせてにっこりと笑った。しかしその足は転がるピンク色に乗っている。
「さあ、君は火に呑まれて焼かれなさい。それが嫌なら串刺しになるんだね」
 ピンク色のドレスは蹴り転がされ、今まさに炎の陥穽(かんせい)に落下しようとしていた。彼女は最後のあがきとばかりにフィリスレギスへと魔砲を撃った。そしてやはり気でも狂れているのか、その表情はまったく訳の分からない、驚いた様子であった。
 ほとんど淵にあった身体は重みに耐えきれず、赫赫と揺蕩う底に沈んでいく。



 頬に何か当たっていた。固いものだった。その冷たさで意識は覚めたようだ。だが目は開かない。果たしてそれは当たっていたのだろうか。作為的に、人為的に当たっていたのではないだろうか。
「これが宝物か?身包(みぐる)み剥げってことけ?」
 頬に当たっていたものが引いたかと思うとまた強く押し当てられる。頬の肉で弾んでいるかのようだった。
「フィリスレギスのお子ちゃまを暗殺するためには女装までするって?フィリスレギスのお子ちゃまが女装したほうがそら可愛いだろうさ。一体何を考えてやがんでぇ」
 頬に当たる不快感によって、彼女はやっと目蓋を開いた。まず目に入るのは立体感のある大胸筋だった。脱ぐのか着るのかはっきりしないところに絨毯のような羽織が留まっている。
「よぉ。お目覚めはいかがで?」
 クローチェは答えなかった。褐色の大男が剣の尻で無遠慮に彼女の頬を突いている。
 目の醒めない間、あらゆることがその脳裏を駆け巡っていた。まさに睡眠のように。そして無理矢理納得するのだ。半ば信じられないが、ここでは理屈を無視するに限る。つまり自身が狂人であると認めなければならなかった。そして気の違ったことを受け入れねば、裏を向いたコインは表に向かない。
「良好ですわ」
 彼女は己の身に包むドレスに相応しい言葉遣いを心掛けた。この煌びやかで華美、派手な衣装を着ていたのではない。着られていた。
 大男は顎を撫で、矯めつ眇めつして彼女を品定めしている。
「ほぉ……で、何か持ってないか?」
「何かとは?」
「何かと言ったら、腹の膨れるものか、金になるものかに限るでしょうな」
 日焼けか地肌か褐色の肌に、白い入れ墨といか、脱色というか、そういう模様があった。
「持っておりません」
「ふぅん。じゃあ、損だ。関わるだけ、損だ。ずらかるぞ」
 大男には手下がいた。絨毯みたいな羽織を翻して彼は控えていた数人へ合図する。

プロット晒し (コピペまま)

⭐︎バベルを翔ける/ジクラートを越えると
バグを狙いにいく話。

◯カレシの画面見てたら取り込まれる。姫プのせいでレベル上がってない。元カノの名前。名前付けられたやつがラスボスと連動する。
◯登場人物に文句言われまくる。
◯カレシとはチャットでやり取りする?

▽クローチェ…ヒロイン。黒内海(くろうつみ)千代。
▽…ヒロカレ…ネトゲでネカマして姫プしてたためヒロインが弱くなってしまう。電子思念体になってしまった。実はゲーム作った人。おねショタ好きのおねケモショタ好きのリョナラーで寝取られ好き。
▽エルドラド。…オムファタル。ツンデレ剣士。PC。龍神族(魔法特化型)だが前衛にステ振りされている。剣技使うと発作起こして鱗出る。目がネコみたい。有翼。エリィ。封じていたキャラクター。
▽フィリスレギス…王子。サイコパス。ショタ。NPC。美女の処刑好き。
▽ラドロ…義賊気取り。ブリガンド盗賊団。NPC。オレ様大男。
▽プロメティダ。…婚約者。プロム。婚約イベント一緒に交わしたことになっている。PC。魔法特化型のエルフ。アビリティ目当ての婚約。
▽ぜウクシス…白馬のケンタウロス美少年。角と蹄を王に献上される。ゼウク。NPC。
▽クローチェ…ラスボス。色違い。


◯バグを狙う。バーサーカー状態で伝説の剣を装備し、最弱魔法を使う。
◯最弱魔法を得る。
◯バーサーカー状態を得る。
◯伝説の剣を得る。(装備するために力要る?)

▽美女処刑に巻き込まれるヒロイン。常に回復魔法を唱えていたオムファタに会う?盗賊団(義賊気取り)が掻っ攫う?

打切り【TL】バベルを駆ける

打切り【TL】バベルを駆ける

カレピの作ったゲームの中に取り込まれる系ヒロイン

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2023-07-03

Copyrighted
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  1. 0.5【打ち切り】
  2. プロット晒し (コピペまま)