縦横断

青信号で横断歩道を渡ること、それから白線の上だけを歩くこと。
これらふたつは同一のようでまるで違っていると気付いたのは、今日の朝のことだった。
私にはきっと難しい。後者を選択して楽しむすべを、軽やかな足取りってやつを忘れてしまったから。
からだがすみずみまでアルカリ性になってしまったから。

葉擦れの音さえしない、暗い森にいるみたいだ。
つま先で地面をつかんで、足の裏すべてで地面を押し出すみたいにして。
いくら呼吸を整えたって、踏めるところがすべて泥と枯葉なんだから、高くは飛び上がれないのです。
にせものの鳥の鳴き声がアラームにすり替わったタイミングで、まばたきをすれば。
暗い森は消えるけれど、たったそれだけで何が変わるだろう。

植え込みの白い小さな花が咲いていた。
甘い匂いでごまかされた頭が、やがて思い出すだろうか。
何もない道を、片手を挙げて渡ったときのこと。
私の右手だけが、あの森でも消えない灯りとなることを。

縦横断

縦横断

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-02

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