命名の侮辱学

ぼくらは名前を呼び合うこともできず、黙って、黙って抱き締め合うことしかできず、いつまでも、いつまでもそうしていることしかできず、無表情の裏側を、虚ろな瞳の最奥(さいおう)を捉えることもかなわず、あらゆる記憶、あらゆる感情に名前をつけることもあきらめ、あらゆる未来をあきらめ、あらゆる約束を、あらゆる延命をあきらめ尽くし、ただ一つの風景に同化していくように現実感を手放す。

命名の侮辱学

命名の侮辱学

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-27

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