ネオンの光が青

「そんなに物事俯瞰で見て幸せなん?」ほろ酔いの友人がトロんとした目で、だがしっかりと私を見つめながらそう言った。

「わからへん。でも気づいたらこうなっててん。どうしようもなくない?」自分でも自分のことがよく分からないのにそんなことを言われても困ると言わんばかりに私はそう返した。

「私が思うに、世の中息ができる場所が少ないと思うねん、もう圧倒的に」私の反論は普通にスルーされ、友人はそう言った。

「だからお酒を飲むの?」
「そうやで。この瞬間は息ができる気持ちになる」

息ができる場所について私は考えてみる。
確かに少ないのかもしれない。

「私、あれ、映画館で照明が消えて暗くなっていく瞬間が好きかも」思いついたことをそのまま私は口に出していた。

館内が暗くなる。画面には新型コロナウイルス対策の映像が流れる。
その定型文と定型の音楽が大きく流れる中で、私は確かに大きく息を吸いこんで吐き出していた。

「わかるで。なんか大勢いる中で一人。みたいな感覚になるんやんな」
「そうそう。不思議と落ち着くねんな。あのとき」

次の休みには映画でも見に行こうかな。なんて私は思ったりした。
息をして、吐き出す場所に。

ネオンの光が青

ネオンの光が青

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-07

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