私の心は私だけのものだよ

あの日も私たちは野ウサギを追いかけて走りづつけた。私たちはなんでも知っていた。世界のあらゆることを理解していた。それでも、私たちは愚かだった。

神様の子どもとして生まれた私たちは知恵を授けられた。いつか遠い未来の日に神になる子どもたちとして育てられた。でも10歳になる頃には、一緒に生まれてきた子どもたちの半数はどこかへ行ってしまった。あんなにたくさんいたはずだった。もっとぎゅうぎゅうに子どもがいたのに、街の中も家の中も、隙間風ばかりが吹く気がした。

神様はたくさんの子どもを産んだ。小さなうちに芽の出なかった子どもたちは他所へ売られていき、反抗的な子どもは地下牢に閉じ込められ、そのうち我々の食糧になってしまった。それを知ったのは12歳の時だった。

私たちは、いい子にしていた。知恵もあり、勇気もあり、清く正しく、美しかった。毎晩、ユニコーンとオーロラの夢を見た。純粋で無垢な透き通る翡翠色の目で見つめれば、どんな大人だって嬉しそうに果物やパンをくれた。私たちは大人の操り方を知っていた。

背中の白く小さな羽根は、飛び立つ日を待っていた。14歳の夏の日、肩甲骨を動かすと、思っていたより簡単に体は自由に宙を舞った。私たちはもうすぐ神になるのだ。選ばれる日が近い。滑空していると大人たちの歓びの声が聞こえてくる。

秋が来る頃には、神としての振る舞いを覚え、選ばれるための準備が整っていった。7人の子どもたちを日々並ばせ、比べ、大人たちは吟味していた。

あんなにたくさんいたはずの子どもたちは、たった10人にまで減り、選ばれたのは7人。
例えば今日のこの日までに「子どもたちを食糧にしてしまったことへの怒り」だとか、「ちょっと上目遣いに微笑むだけで表情を緩める大人たちに感じるあさましさ」だとか、「私たちが今死んでも代わりになる子どもがいることへの安堵感」というものは、心の中で具体的な言葉になる前に潰して、なかったことにした。

もうすぐ冬が来る。大雪が降る噂で町中が持ちきりになった日、私たちは手を繋いで窓から空を遠く、眺めていた。ヘーゼルナッツの彼女の目は真っ直ぐに未来を見据え、さくらんぼのような可愛らしい唇は企みに満ちていた。

私の心は私だけのものだよ

ツイッター書き出しハッシュタグより
彼女のウサギのアイコンがサブリミナル効果のように作用し、私にウサギが出てくる書き出しを書かせていた。

私の心は私だけのものだよ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-31

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