「水仙の咲く景色」

 俯向いて
 雨に悄れた水仙の
 しづくを頂くは誰であろう
 それは土なり 黒く深い土なり

 土は濡れる
 喘いで喘いで渇望の末に
 しとどに濡れて
 ありこちに水溜りも生むほどに
 土は水仙のなみだを頂く

 水仙は食べる
 もはやこやしと成り果てた黒い土を
 むしゃむしゃ もぐもぐ
 食べて
 食べて
 洗い落とさんとばかりに勢い猛なる大粒の瀑に
 白を奪われることもなく
 ふるえながら
 剝き身の心を
 濡れそぼらして
 腰から下を
 土にうづめた

 水仙の花 黒い土
 此処は
 雪の忘れがたみ

「水仙の咲く景色」

「水仙の咲く景色」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-15

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