「喪失」

 甘ったるいケーキの塔のてっぺんから
 仰向いて四肢を大きく広げて
 埋もれながら落ちていた
 高い 高い 雲を凌ぐ塔だった
 やわらかくって
 あまあいの
 おなかは膨れて
 頭は冴えた

 塔が立つは腐葉土じゃなくて堅い鉄
 自分の落下の痕跡は一直線でありました
 スポンジをえぐり
 ホイップをもぎとった黒い影 棒の影

 わたくしは背中に反発するいやな冷たさの上に大の字で倒れて
 絶滅した真っ赤な真っ赤な血を全身から流して居た
 黒に 赤の映えることよ
 わたくしは涙も無く眼を閉じた

「喪失」

「喪失」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-04-27

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