BNE二次創作小説<<ふたりきりクリスマス>>
本作品はPBW『Baroque Night-eclipse』の二次創作小説です。本作品に登場するキャラクターの性格や行動は実際のゲームと多少異なる場合があります。
これだけ読んでも何のことやらなので、<<一日目>>からお読みいただけると嬉しいです。
◆クリスマス・イブ
クリスマスイブの朝は、二人とも遅めの起床になった。
というのも、昨晩から今朝にかけての依頼を終えて家に帰りついたのが午前7時すぎ。
依頼を完遂する上で必須条件だった『わりと大量のクリスマスケーキを食べきる事』のおかげもあって、家に帰りついてコタツに電源を入れて足を突っ込んで疲れたねって口にして気がついたら12時過ぎているなんて事はまぁ、回避不能と言うか当然の結末と言うか。
つまり仕方ないよねってことかな。うん。
私が目を覚ました時はまだステラは眠っていて、コタツ布団に押されて外に飛び出した羽が折れ曲がってた。
それなのに、私が寝顔を撮ろうとデジカメを手にした瞬間に飛び起きた。
「おはよう、ここで寝ちゃったね」
手に持ったカメラを背中に隠してにっこりと笑いかける。
背中を起こしただけの体勢のまま、開いていない目でこっくりとうなずくのは起きているのか寝ているのか。寝ぼけまなこをこする右手がときおり折り返さずに止まるあたり、ステラはまだまだ眠っている筈なのに本能で起きたみたい。
こんなところで直感を使わなくっても良いのに。
残念。
仕方がないからデジカメはエプロンのポケットに落とし込んで、コーヒーを淹れ始める。
と言っても、コーヒーメーカーにお任せで待つだけなんだけど。
「おはよう」
しばらくしてステラの返事が聞こえてきた。
もう太陽も昇って一番高いところを通り過ぎているけれど、それでもやっぱり起きた時はこの挨拶がしっくり来る。
「今日はどうする?明日は学校もあるから、クリスマスっぽいことをするなら今日がチャンスよ?」
コーヒーが入るのを待つ間にフレンチトーストを食パン一枚分焼き上げる。
昨晩のケーキが祟って未だにお腹は空いていないけれど、コーヒーだけじゃ胃が荒れるだろうから。たぶん私とステラ、はんぶんこにして丁度良いくらい。
「んー」
淹れ終わったコーヒーをふたりのコップに移しながら、ステラは何か考えるそぶり。
ステラはブラック、私はミルクだけたっぷり。
とぷん
牛乳パックからコーヒーカップへと注がれるミルク。
チリン
かき混ぜるティースプーンが小さくガラスの縁を鳴らす。
「今日は一日、のんびりで良いかなぁ」
切り分けたフレンチトーストを持っていく私の背中に、ステラのいつになくふやけた言葉が飛んできた。
はい、今日の予定決定。
一日中コタツでごろごろします。
◆クリスマス
私と姉は神に祈る。
親がイタリア人だった影響でキリスト教で……だったら判り易かったのかもしれない。
だが実のところ私は、おそらく姉もそういう感覚じゃない。
祖父の影響で仏教の考え方もある程度心についているし、八百万の神々と言われればそれもしっくりと来るから、いかにも日本人的な感覚なのかもしれないが。
私たちにとってクリスマスは「神に祈る日」なのだ。
クリスマスだ何だと騒いだところで日本の学校は休日になる訳でもなく、今朝も私は三高平南駅から三高平駅へと電車に乗った。そして今逆方向の電車に乗っているということはつまり、学校帰りである。
日が暮れるのも早くなった今日このごろ、しっかりアークによって依頼のチェックまでしていると当然のごとく電車内の灯りは点り、窓の外にはちらちらと薄闇に浮き上がる色彩形状様々な街の光が煌いていた。
帰宅ラッシュよりは少し早い時間、電車内がさほど混雑していないのは助かる。
一度だけひどく混雑した電車に乗った時は翼が他の人の体に巻き込まれないよう必死になったものだ。見えなくなっているものだから尚のこと気にも掛けられず挟み込まれて行くというのが悲劇でしかなかった。満員列車なんて二度と乗るものか。
窓の外に目をやると常になく輝きを増した―――イルミネーション装飾を施した家々がそこここに見かけられる。壁に明滅するサンタが梯子をかけている家。恐らくモミの木では無いだろう、無理やり三角形に整えられた樹のてっぺんから架けられたLED電球の連なりが庭で輝いている家。
様々に趣向を凝らして飾り立てているのは周りに住む人に見せているのか、それとも自分の家を装飾することそのものが本懐なのか。とかくお祭りとなるとそれに合わせるように盛り上がろうとする人の性なのかも知れない。
もしくは普段から着飾ることに慣れた人々には容易に理解できる志向なのだろうか。
普段からさしてファッションに興味がない自覚はある。
小さく溜め息を車内に残し、冷気の流れ込む扉から外へ出た。
駅舎を出ればそこもまた、光溢れるイルミネーションの下である。
手に手を取り合う二人組、家族と思しき子供連れ。
人の群れもそれぞれに、しかし一様に賑やかで楽しげだ。
流れるメロディは近くの商店街のものだろう。楽しむことを強いられているようなこの音楽を、私はあまり好きになれない。
白手袋に包まれた左手を胸元に。服の内側へ落とし込んだロケットに服の上から触れると、首にかかる金鎖がカチリと音を立てた。
BNE二次創作小説<<ふたりきりクリスマス>>
原作⇒『Baroque Night-eclipse』 http://bne.chocolop.net/top/
ゆっくりと、ゲームをプレイしつつ書き進めて行きたいと思います。
書き上げて思うこと。
『みじかっ!』