わたしをみつけて

六階

遠いところへ行ってしまうような気がする。各駅停車に乗っているだけなのに。それはさておき、二月のデパートの催事場へ行ったことはありますか。あなたはないかも、わたしはあるけれど。チョコレートが並んでいて、その前に人が並べられている。既に袋を持った人がたくさんいて、わたしもひとつだけ袋を持っているから、探してごらんなさい。きっと見つからないよ。あなたはわたしを知らないしわたしもあなたを知らない。もしかしたらあなたは催事場の上の階にいるかもしれないけれど、エスカレーターの上りと下りですれ違っているかもしれないけれど、わたしたちは違う恒星に生まれたから引き合うし、反発しあうのです。会いに来てとは言わないけど会いに来てほしい、とか、そういうことも言っていられないよ。あなたを想うこと自体がわがままだって分かってるつもりだから、わたしも催事場の中にわたしを見つけられない。体温でとろけてしまうチョコレート、抱えてるのに。

二月のプレイリスト

春が来る予感などなくポケットに絡まったままイヤホン突っ込む

相対はあいたいとも読むことを知る あなたが教えてくれた曲から

アーギュメント、バレンタインチョコ売り場にて脳裏に浮かぶ顔に対して

続いては二月十四日火曜日千葉県千葉市の降涙予報

永遠を誓うというより毒になることを誓って詩を書いている

降車する駅間違えてaiko聞くこの世で五番目に長い五分

なんで誘ってくれたの、ってなんでもないような笑顔で聞かれ春泥

誰のことも愛せなくても地の果てでいつか冷たくなるわたしたち

たたかい、あらそい、わずらい

あなたが元気ならこの世はもう終わっていいよ
ちりぢりになって星の砂になって
熱風の中、今後永遠に新しい宇宙が始まらないことを誓って調印
あなたが元気じゃない日がこれ以上増えるくらいなら

そう願うわたしを
傲慢と笑ってほしいし
必要ならば絞首台に乗せてほしい
残念なことに
これ以上の言い回しが
子どものわたしにはわからない
(ずっと幸せでいてねって言えばいいのに)

まばゆくて
たいせつで
届かないから
無限にむけてこの歌の矢を放つ

わたしをみつけて

わたしをみつけて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-23

Copyrighted
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  1. 六階
  2. 二月のプレイリスト
  3. たたかい、あらそい、わずらい