まだ見ぬ世界
うらまれているのかもしれない。
ときどき、星は無情。
海がみたかったのに、アルビノのくまは、ゆるしてはくれなかった。森から出してもらえなくて、ナナミとふたりで、たいくつだぁとわめいていた。カメラマンのアンドウさんは、おみやげに、なんだかとげとげして、うずをまいたかたいものをくれて、それはカイガラだと教えてくれた。ナナミは、長い耳をぴくぴくさせながら、ふしぎな音がする、と云った。それが、なんだか、ぼくのからだに耳をあてるときこえる、ざあざあとした音に似ているということだった。アンドウさんが云うには、血液が流れている音であるらしい。カイガラからきこえるそれは、波の音だという。海というところは、こわいところなのだと、アルビノのくまは眉をひそめながら、アンドウさんのために、ハーブティーを淹れていた。おだやかな、冬の午後だった。
欲望、という目にみえないけれど、だれしもにそなえられた、その、発芽すればどんどんと成長し、摘んでも摘んでも減っていかない、どうにもままならぬものに喰われないためにも、ここにいなさいと、アルビノのくまは云うけれど。
まだ見ぬ世界