花の絨毯

 冷凍庫のなかで冬眠しているあいだに、星がはんぶん削れていたイルカのはなしを知っている。にんげんの感情が、他者へのやさしさだけで構築されることになった結果、争いはなくなったかといえば、そうではなくて、みんな、だれかへのやさしさをつらぬくために、常になにかと戦っている。だれかにやさしい自分をまもるために。ギゼン、ジコマンゾク、というワードが乱舞するSNS。吐き気がするから、みなくていいよ。わたしのなかで、もうひとりのわたしがささやいて。バウムクーヘンを丸ごと、むさぼり食べたい夜もあるけれど、おとなしくはちみつ紅茶を飲んでいる。

 ノエルが吐き出した青い花。
 積もる。
 青く染まるアスファルト。
 隔離施設という監獄。
 空がみたいと泣いているひとびと。
 あなたたちのためなのよと言いくるめるひとびと。
 微笑。

 白い息を吐きながら、夜明けを想う。

花の絨毯

花の絨毯

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-29

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