花の絨毯
冷凍庫のなかで冬眠しているあいだに、星がはんぶん削れていたイルカのはなしを知っている。にんげんの感情が、他者へのやさしさだけで構築されることになった結果、争いはなくなったかといえば、そうではなくて、みんな、だれかへのやさしさをつらぬくために、常になにかと戦っている。だれかにやさしい自分をまもるために。ギゼン、ジコマンゾク、というワードが乱舞するSNS。吐き気がするから、みなくていいよ。わたしのなかで、もうひとりのわたしがささやいて。バウムクーヘンを丸ごと、むさぼり食べたい夜もあるけれど、おとなしくはちみつ紅茶を飲んでいる。
ノエルが吐き出した青い花。
積もる。
青く染まるアスファルト。
隔離施設という監獄。
空がみたいと泣いているひとびと。
あなたたちのためなのよと言いくるめるひとびと。
微笑。
白い息を吐きながら、夜明けを想う。
花の絨毯