明暗

 崩壊して。瓦礫となった、街のかたすみで、祈るだけの場所で、きみが跪く。一部分だけが、欠けた星。一部分を除いては、変わりなく、過不足なく、あらゆる生命体が、それぞれの生活を営んでいる。花が咲くか、咲かないかの違い。おおきな角が二本はえた、あのひとが慈しむのは、すべてをうしなったものたちの、こころだった。(七百年も、孤独だったのに)祈りはやまない。きみのかたわらに、からっぽの軽機関銃を背負ったあらいぐまがいる。ずっと、街を護っている。壊れても。だれもいなくなっっても。なにもなくなっても。わたしは、おおきな角のひととともに、なまえのわからない、けれど、かくじつに都市部には棲息しないであろう植物が、日に日に増殖してゆくのを眺めながら、氷河期のおとずれをおそれている。(星の、欠けていないところに、避難すればいいのに)わかっているけれど、きみたちがここにいるから、わたしもいるのだ。

明暗

明暗

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-04

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