Peaceful life

 平穏な暮らし。それを望みます。
 一月二日の動物園で、きみが、ホワイトタイガーの檻の前に一時間ほど滞在し、たっぷり(にんげん同士では物足りない時間だと思うけれど)と逢瀬をたのしんだあと、売店で買ったフライドポテトを、ぱくぱく食べている。小動物をさわれる、ふれあい広場が近くにあって、売店のベンチはほのかに、けものくさい。
 あたらしい年。
 わたしは日々の暮らしが、平穏であればいい。
 きみは、ホワイトタイガーに生まれ変わりたいという。けれど、確実性はないから、みずからにんげんをやめることはしない。無謀ではない。ホワイトタイガーを、けっこうやばいくらい愛しているけれど、理性は崩壊していない、きみは、フライドポテトを流しこむように、つめたいコーラを飲み干す。動物園には、たくさんの家族がいて、ふれあい広場にはこどもがわらわらしていて、にぎやかしくて、幸福そうで、殺伐ともしている。
 友人からの、あけましておめでとうメールに返信をしながら、ひとごみはやっぱり苦手だなぁと思う。にんげんの群れ。苛立ちをふくんだ、空気。圧迫される。息苦しい。泣き叫ぶ、こども。怒鳴り散らす、親。声量が大きい集団。無意識に調和を乱す、だれか。
 混沌とした、この世界で、わたしは平穏でありたい。

Peaceful life

Peaceful life

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-02

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