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春のおわりに、すべてをうしなったあなたが、星の果ての、じゅくじゅくに腐ったところで吐き出す、息。透明。
水族館でシャチと逢う、十二月三十日。だれかの孤独を食み、胃に蓄え、消化する自然現象の先にあるのは、虚無と、永遠を模した幻想。おもいやりをとかして、どろどろにして、ふたたびかためるという作業の、歪さに、嘔吐感をおぼえる年の瀬の、あきれるほど長い時間やっているテレビ番組を、さいしょからさいごまでずっと観ているひとはいるのだろうかという素朴な疑問に、さぁ、としか答えてくれないモリの、右手の、ひとさしゆびと、なかゆびのあいだで、たばこがくすぶっている。ことしも、のこりすこしで、きっと、みんな、鷹揚な気分で、ふだんは買わないようなものや、いつもならもっと安価で売っているはずのものを、どしどし買うから、そういうのもいま、現代の世界がまわっている一因なんだろうな、なんて一瞬考えて、すぐにやめて、それはともかくとして、今年もアイスがうまかったと思いながら、アイスのふたをあけて、ずっと笑っているテレビのなかのひとたちを、ひどく煩わしい気持ちと、なんとなく羨ましい気持ちでながめてる。
モリの吸っているたばこの灰が、スローモーションで灰皿に落下した。
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