シナモンと愛
ノエルの声で、目が覚めたとき、やさしさの上塗りみたいな行為を、望んでやっているひとのせなかに、ばけものがみえた。夜明けにうまれた、清らかなあのひとの頬に、水滴がひとすじのあとをつくり、十七才の少女たちが、学校の屋上で、だれかを呪っていることを嘆いてる。パソコンで絵を描いている、サクマが、すこしだけ憂鬱そうにつぶやく、これは意味のあることなのか、否かを、ぼくはぼんやりと聞いていて、テレビを点けっぱなしで寝てしまった、こだまが、ときどき、鼻をすぴすぴとふくらませる。サクマと、こだまの、親代わりみたいなあのひとが、キッチンでつくっている焼きりんごの甘い香りがただよってきて、一日中熱風を吐き出しているエアコンが、ふいに唸る。窓の外は雪で、街は年の瀬に相応しい忙しなさでめぐりまわり、ぼくと、あのひとが、とくべつな夜におこなう儀式めいたものを、サクマは見て見ぬふりをしていて、こだまは、なにもしらないでいる。
ことしも、愛をしていた。
シナモンと愛