シナモンと愛

 ノエルの声で、目が覚めたとき、やさしさの上塗りみたいな行為を、望んでやっているひとのせなかに、ばけものがみえた。夜明けにうまれた、清らかなあのひとの頬に、水滴がひとすじのあとをつくり、十七才の少女たちが、学校の屋上で、だれかを呪っていることを嘆いてる。パソコンで絵を描いている、サクマが、すこしだけ憂鬱そうにつぶやく、これは意味のあることなのか、否かを、ぼくはぼんやりと聞いていて、テレビを点けっぱなしで寝てしまった、こだまが、ときどき、鼻をすぴすぴとふくらませる。サクマと、こだまの、親代わりみたいなあのひとが、キッチンでつくっている焼きりんごの甘い香りがただよってきて、一日中熱風を吐き出しているエアコンが、ふいに唸る。窓の外は雪で、街は年の瀬に相応しい忙しなさでめぐりまわり、ぼくと、あのひとが、とくべつな夜におこなう儀式めいたものを、サクマは見て見ぬふりをしていて、こだまは、なにもしらないでいる。
 ことしも、愛をしていた。

シナモンと愛

シナモンと愛

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-28

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