冬の息

 都会で、一瞬でも、呼吸、というものがみだれたとき、救ってくれるのは。だれか?わからないまま、夜を迎えて、朝を待つ。触れたら、薄皮が破れそうなほどに鋭く、細い月は青白く、はやく、いやなことなんてわすれてしまいたいと祈りながら、淡く光る、森の向こうを見つめている。あそこには、にんげんになりそこなったにんげんがいて、やさしいくまと、うつくしいわにと、暮らしていて、にんげんにはなりそこなったけれど、じゅうぶん、わたしより幸福そうな感じがして、うらやましいなぁと思っている。
 十二月の喧騒から、わたしだけがノケモノ。

冬の息

冬の息

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-20

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