炎上

 たまたま、誰かがひとつの星を、蝕むように腐らせてゆくのを、傍観していただけ。めざめたとき、あのこたちはみんな、カイブツと一緒くたになって、忘れかけていた記憶を転写して、一枚のアートにして、町外れの美術館に、ただひとつだけの展示物として飾られて、骨だけが残った。ぼくと、きみだけの世界だと思っていたところに、ふいに現れた一匹の白い蛇が、感情をひた隠して、赤い、ちいさな舌をちろちろとしてみせる。十二月らしい、やわらかい皮膚を切りつける、つめたく、かわいた空気が、かすかな火種を瞬く間に巨大な火柱にして。世間はいつも、どこかしらで火事がおきてるなぁという、きみの、どうでもいいような呟き。
 電子の海の底には、かぞえきれないほどの。

炎上

炎上

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-14

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