炎上
たまたま、誰かがひとつの星を、蝕むように腐らせてゆくのを、傍観していただけ。めざめたとき、あのこたちはみんな、カイブツと一緒くたになって、忘れかけていた記憶を転写して、一枚のアートにして、町外れの美術館に、ただひとつだけの展示物として飾られて、骨だけが残った。ぼくと、きみだけの世界だと思っていたところに、ふいに現れた一匹の白い蛇が、感情をひた隠して、赤い、ちいさな舌をちろちろとしてみせる。十二月らしい、やわらかい皮膚を切りつける、つめたく、かわいた空気が、かすかな火種を瞬く間に巨大な火柱にして。世間はいつも、どこかしらで火事がおきてるなぁという、きみの、どうでもいいような呟き。
電子の海の底には、かぞえきれないほどの。
炎上