安らかな夜明け
創造主だったひとの、なれのはて。夜のおわりに、すこしだけ眠るときの、きみの、規則的な寝息が、かすかな熱を放つ。二十四時間営業のスーパーマーケットの、微睡んだ空気が蔓延する四時の、なんか突拍子もないことをして、狂ったフリをしたい瞬間の、だれからも好かれなくていいという感情のまま、売れ残った菓子パンのひとつをえらぶ。チョコチップメロンパン。七秒後に、きみは息を吐いて、ぼくが愛している彼が、やさしい夢から浮上する。静かに明るくなってゆく公園では、魔法使いの少年としゃべるタヌキが楽しそうに、ブランコをこいでいる。
少年の深緑色のマフラーがなびいて、タヌキのしっぽがゆれる。
なにも、こわいものなどないみたいに。
安らかな夜明け