小葱

10月の帰省した時の話

こないだの十月、ちょっと訳あって実家に帰省したんだけど、ああ、まあ、父親が死んだからさ。
で、そん時結構なんだろうな。私なりに気を使ったりしたのかな。晩御飯とかを結構作ったりしたんですよ。受け持ったというか、
「私やるよ」
なんて言ってさ、なんか、なんでか、今までそんな事するやつじゃなかったのに。まあやっぱり父親が死んだからかな。多少なりともバイタルが、心象が変わったりしたのかな。だってなんて言ったって父親が死んだからね。父親が死ぬって滅多にない事じゃん。一生に一回とかでしょ。多分。二回とか三回とかある人もいるのかな。わからない。それにきっと父親が死ぬっていう事さえ体験できない人もいるだろうからね。
だから、まあ、そんな訳でちょっと晩御飯作ったりしたんです。そんな訳で。
そんでその中で、小葱を等間隔に切ってごま油かけて塩かけて白ごま振って、そんで、
「ハイどうぞ」
って出したことがあって。それが二回あって。これはまあ以前ね、ちょっと前、一回目の料理にハマった時期、その時にクックパットか何かでそういうのがあるっていうのを見てて、そんで、
「これ簡単だなあ」
って思って、だから毎週のように大量に作ってはタッパに入れて冷蔵庫に収納していた時期があって。酒の肴になるから。だからその帰省時に久々に。お酒のあてにね。作って提出したんです。

で、それ自体は別に何の衒いも無く相変わらずのおいしさでね。まあ外れないですよね。小葱。塩。ごま油。白ごまだけだし。簡単だし。5分10分程度でね。葱切るのが一番時間かかるかな。後は混ぜたらいいだけだから。

ただ、それをね、スーパーでさ。小葱。買った際の話になるんだけど、200円したんですよね。一束。実家の方では。関東圏に住んでる今現在、スーパーに行ってないし、見てないから知らないけど、でも、昔それを作ってた時は、一束、100円で買えたんすよね。小葱。

実家に帰省した時のスーパーがもしかしたら、そうなのかもしれないし。あるいは他に行ったら100円で売ってる所もあるかもしれないし。もしかしたら昨今のこの物価高みたいなのが影響しているのかもしれないし。今は関東圏で買っても、西友に行っても、もしかしたら200円するのかもしれない。

でも、その時、実家のグランマートで小葱が200円で売ってるのを見た時、不意にね、思ったんです。帰省時に新幹線の中で姉なんかがね、
「父親も死んだし、私達もいよいよ実家に帰らないといけないか」
なんてぼそっと言ってたんです。で、それに対して、

なんか、嫌だなって。

その時。ふと思ったんですよね。それまではずっと、
「実家に帰ってもAmazonとか来るし、別にいいけどな」
って私は思ってたの。実家に帰るのも別に構いませんかねえ。なんて。思ってたのに。

なんか、スーパーでね。小葱が200円で売ってるのを見て、不意にね。そう思ったんですよね。

どうだろうな。今、関東圏に居る今、西友に行って小葱が200円で売られてるのを見たら、もしかしたら、あ、やっぱりじゃあ、もう戻ってもいいか。本籍地に戻ってもいいか。って思うかも知れない。

でも、確認してません。

だから、今はまだちょっと、気持ち、まだ変わってません。実家に戻ったら小葱200円するんだなあ。ってちょっと嫌だなって。昔西友で買った時は100円だったのになあ。って今、今はまだ思ってます。

小葱

小葱

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-09

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