siqinniqtillugu siqinniqtillugu? 邦題  落日の間隙・・。 

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さて・・。

池野典子がアルバイトをやりだしたのは、ごく最近だ。
 会社を辞めてから暫く休憩をしていたのだが、そろそろ働いてみようと思った。
 しかし、散々探しても自分がやりたいと思う仕事が見つからない。
 其処で、取り敢えずアルバイトをしてみる事にした。何時でも募集しているものもあるが、おそらくそれだけ人気が無いのかも知れない。
 運転免許を持っていれば可能という条件があるが、今回は自動車の免許ではない。
 原付が主だ。
 典子が運転免許を持っていると言う事は、同時に原付の免許を持っていると言うことになる。
 面接では載せる荷物が30キロにもなるから、自動二輪でなければ無理だと思うと言ってから典子の顔を見、何とか原付でも可能だろうと言い直した。
 住宅街で若い女性が配達しているのを見、自分でも出来るのではと思い、其の女性に聞いてみたのだが、結構しんどいと言われた。
 其れに配達となると、相当の件数を廻る事になる。其れも面倒な気がした。
  其れでも、大学の友人である、緒方勇が同じ仕事をやると言うので、男性だがそれでも知り合いがいると言う事で心強く思う。
 



 早速その業務に携わる事になった。後部に乗せた赤い合成樹脂の大きなケースには山ほど郵便物が入っている。
 小包は無く封筒に入ったもの(ユーパックなど以外、郵便局では法律上信書で無ければ配達は出来ない。)ばかりだ。出掛ける前に大体の地域を区分けし、廻り易い順番にした。
 通常では信じられないような配達のテンポだ。ところが・・。
 其れが正解だったようで、二人共自分のエリアの郵便物をそつなく配達している。
 大方配達し終え、あと数通という時。
 何時もならそろそろ陽が傾いてくる時間だ。既に、配達の要領をマスターし、順調と思われたから、今日は以前より何倍か配達出来ている。
 各家庭のポストに投函していくのだが、其の中で外国の文字が目立つものがあったが、その横に此の国の言葉で宛名が書いてあるから胸を撫でおろした。
 通常の郵便物だから、特別重要そうなものは見られない。ところが・・如何にも女性らしい文字で書いてあるし、何故か貴重なものが入っているような気がした。
 信書の厚さや大きさは法定なので、単なる手紙だと思うが何か気になり、休憩時間に勇にこんなものがあるけれど何だろう?と尋ねてみた。
 勇はそういうことを想像したりするのが好きなようだから、勝手に発送者を頭に描く。
 封を開ける訳にはいかないから、彼は封筒を太陽に透けるように翳(かざ)した。
 まるで、封筒の薄さを馬鹿にする様に、くっきりと真っ赤なハートのマークが見える。
 其れが二人の心なんじゃないかな?と勇が言うからすかさず私も頷いた・・。
「文面は当然分からないが、どうやら、男女の手紙のやり取りなんじゃないかな?」
 彼は、法学や政治の専門学部にいるが、文学にも詳しい。
「此れ・・ひょっとしたら・・案外重要な事が書かれているのかも知れないな?」
 彼は彼なりの筋書きを作っているようだ。
 本来は典子の配達エリアだが、勇も後を走り追い付くと、典子が宛先の家のポストに其れを投函しようとした。
 突然、ポストから遠くない玄関のドアが開き、男性が顔を現わした。
「いや、有難う。今か今かと、此れを待っていたんだ。バイクの音でひょっとしてと思い、やはりそうだった。」
 普通なら封筒を持ちすぐに玄関の戸を閉めるのだろうが、彼は、暫く二人の顔を見ている。
 二人は仕事中という事もあったが、どうして此方を見つめているのだろうと思う。
 男は、二人の目の前で、予め家の中から持ってきておいたペーパーナイフで封を開け、中の手紙を取り出す。
 二人は残り僅かな手紙の配達をしなければいけないから、バイクに跨りその場から離れようとした。
 男は二人の事など気にもしていなかったようだがいきなり、
「君達、やはり始まるよ・・」
 そう言われても、何が始まり何を言おうとしているのかなど分かる筈もない。
 二人がアクセルを吹かそうと手首を回転させようとした時、
「・・君達の仕事とは関係無い・・いや・・大いに関係あるのかも知れない・・?」
 その言葉で二人は一瞬出鼻をくじかれた様にブレーキを引いたまま彼の目を見る。
「やはり始まったんだ・・其れは予想通りだが、その彼女の事が心配になる」
 独り言のような言葉が、何かしらの意味あいを窺がわせ、其れに男女の想いでも象徴しているかのような気がした。
 思わず、二人は顔を見合わせ・・。
「何か?」
 男は・・頷きながら、
「いや、配達の邪魔をして悪かったが君達と全く関係が無い訳では無いし、寧ろ、情報を真っ先に入手したと言う事になる。そうだ、ついでに、此の葉書を持って行ってくれないかな?郵便局まで行く手間が省ける。大至急空港に向かわないと」



 二人は男から葉書を手渡されるとすぐにエンジンをふかせた。
 勇が走行しながら、
「僕のエリアでもないのに、君の邪魔をした甲斐があったような気がする。其の葉書の文面を・・本当は悪いが、読んでみたら?」
 そう言ってバイクを道路脇に停止させた勇の後ろに、典子もバイクを停止させ、言われた様に葉書の文面を読んでみた。
「二人は恋人同士のようね・・?」
「其れだけでは無いようだ?」
 続けて文面を最後まで読み終えた典子が溜息をつくように、
「やはり。でも、彼女は此方に向かっている様よ。無事会えればいいけれど?大丈夫かしら?」
「ああ、其れもそうだが、僕達も準備しな来ればね?」
 そう言うと、二人はスロットルをフル回転させ、局に戻った。




 明日の仕訳の仕事どころではない。
 周囲には、まだ配達途中らしく、配達員のユニフォームは見られない。
 ・・中の作業をやっている連中は、作業を続けていたが、上司達が声を掛けた。
「いやに早かったね?配達はすっかり終えたんだろうね?もう慣れているから・・今日は上がりかな?」
 二人は、そういう上司の顔に素早く視線を走らせると。
「慣れていない事が起きたようですよ?」
「え?何が、慣れてないって?」




 二人は後も見ずに局を飛び出すと、局の近くの草むらの中に止めてあった乗り物に飛び乗った。
 急上昇していく連絡機の中で、
「あの二人は間に合ったかしら?」
 あっという間も無く飛行場が真下に見えたかと思うと・・すぐに見えなくなった。
 其の時、二人の目の端に、着陸したばかりの航空機から空港のゲートに走っていく女性の姿が見えた。
 何となく其れが、あの手紙の主ではと思う。彼女が手にしているバッグにあれと同じハートの模様が見える。
「色まで同じ真っ赤、間違いないよ。大丈夫だったようだ」




 二人は、予め乗り物の中に入れておいた食料や衣服を確認しながら、
「何方も間に合って良かったが?」
「ごく一部だけでしょうね?」




 乗り物が急上昇をしていくと、遥か下の光景が見えた。
「皆・・助かるように・・」
 乗り物の半透明なマテリアルを通り抜けている落日のオレンジ色が、次第に薄紫色に変わっていった・・。
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「by europe123」
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何が・・。

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どうなったのだろう?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-05

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