きみはプラスチック

 煙いなぁと思ったら、あのこの一部が燃えていた。かなしいきもちが雪のように降り積もってくすんだ都市の、すみっこのほうでおびえている、こねこたちが、なあ、なあ、とちいさな声で鳴いている。手をさしのべるのは、ノエルだけ。昼のあいだに血肉をつめこんだニンゲンとなり、やさしさで上塗りしようとする。通販で買ったものが、箱をあけたら壊れていたときの、やるせなさを、でも、どうしようもないとあきらめて、なかったことにしている。買ったことすらも、なかったことにして。だれも、わるくなかったことにして。煙が薄らいでゆくのを待ちながら、だれもわるくない、と呟く。
 静寂には程遠い、十一月のおわりの、雑踏。

きみはプラスチック

きみはプラスチック

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-30

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