混沌の秋
ひぐらしとともにねむった。土のなか。
くるしいって訴える。ゆうれい。アイスクリームやさんの、すみっこで、いつも、チョコミントのアイスを注文するひとばかりを、にらんでいる。ぼくのからだのなかをながれる、血液。愛の、あたたかみをしらないのだと、だれかが嗤い、本屋さんでたまたま手に取った、装丁のうつくしい詩集を開いたまま、ぜつぼうをうたう。となりの家の庭で、一匹の犬が、まるで、もうすぐせかいがおわりますよと告げるみたいに、切なげに鳴く。ノエルが、あの夏におきさった、もうひとつの肉体と精神。おおむかしの、恐竜がいた頃の時代にうまれたかったと、こわいくらいまじめなかおで語るのは、アイスクリームやの店員さん。ゆうれいのすがたはみえないけれど、なんとなくあのへんはやばいと指をさして、指をさされたゆうれいは、ムッとしながらも、あのひとはラムレーズンがいちばん好きらしいからゆるす、と云う。
ぼくはつぎの、あたらしいノエルの誕生を待ちながら、ワッフルコーンにのったモカのアイスクリームを、ぺろんとなめる。
混沌の秋