讃嘆の歌

 ひっそりと 不可視の銀に照る領域で、
 さっさと美しく身振をし 善くうごいて
 魂の内奥の鮮血 ひとしれず流された涙 いたみに捩る躰
 それ等秘め 毅然と生きているあなたに、

 懊悩をかろんじられ 幸福だ 鈍感だと罵られ
 石のように黙りこみ 内奥の魂を宝玉と磨いて、
 さっさと美しく身振をし 善くうごいて
 そんな真実の不幸をくるしんで 魂を哭かせているあなたに、

 銀の國を紡ぎあげ ひたむきに背後からの月光を俟つ
 ひとりきりの銀製の蜘蛛が、あなたのくるしみのうごきを
 その混濁と放たれた虚空の火に清む 透明な視力でみつめている。

 蜘蛛は 神々とわたしたちを結ぶ仲介者、いつや国から失墜し堕ちる。
 聴いて わたしはかれの涙を爪に塗る 犬死に焦がれる詩人、
 あなたの不幸をたたえ、くるしみを誉め、その惨憺に美をみるひと。

讃嘆の歌

讃嘆の歌

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-18

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