安息の夜
寝台に身を横臥え、
わたしは夢想の裡で 「我」を不在へ指で剥いて、
「わたし」をましろの虚空へ 夢みる吹矢で飛ばして、
「死」の風景と重ね──されば窓辺から月光零れるように、
安息の夜が わたしの不穏な魂の夜に訪れる。
然り わたしは其処に安住してはいけないけれど、
睡りに落ちる落葉の幾夜の時々は、それ赦されるのだと想う、
ひっそりと ひっそりと落葉させて往く、剥がれるように、
わたしはいつや 故郷に落葉するのだろう、
幾たびも夢み歌った 月照る湖の風景画へ──一条に。
わたしはいつや 匿名の水晶を抱き墜ちるのだろう──不在に。
其処には わたしの歌った歌とおんなじ歌を香気吐く、
真白なアネモネと真蒼なアネモネ 死と重奏し林立してい、
銀に燦る蜘蛛の巣が──滅びた後の暗みを射していることだろう。
安息の夜