安息の夜

寝台に身を横臥え、
わたしは夢想の裡で 「(わたし)」を不在へ指で剥いて、
「わたし」をましろの虚空へ 夢みる吹矢で飛ばして、
「死」の風景と重ね──されば窓辺から月光零れるように、

安息の夜が わたしの不穏な魂の夜に訪れる。
然り わたしは其処に安住してはいけないけれど、
睡りに落ちる落葉の幾夜の時々は、それ赦されるのだと想う、
ひっそりと ひっそりと落葉させて往く、剥がれるように、

わたしはいつや 故郷(ふるさと)に落葉するのだろう、
幾たびも夢み歌った 月照る湖の風景画へ──一条に。
わたしはいつや 匿名の水晶を抱き墜ちるのだろう──不在に。

其処には わたしの歌った歌とおんなじ歌を香気吐く、
真白なアネモネと真蒼なアネモネ 死と重奏し林立してい、
銀に燦る蜘蛛の巣が──滅びた後の暗みを射していることだろう。

安息の夜

安息の夜

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-08

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