夜空と都会
「ライト。爆音。星。葉。信号。風。あっ!」
──太宰治「ダス・ゲマイネ」
夜空と都会が くるりとひっくりかえります、
銀の街から群青の夜へ、するする衣擦れさながら墜ちて往きます、
着飾る女性、銀に照るビル、光のうつろい、電線と鳥、
ありとあるもの わたしの横を 追憶の翳と過ぎ往きます、
わたし 夜の虚空をゆら揺れる身であります、
わたしのいない、わたしの不在の時代を生きていたいのです、
銀の星々とおくで光って、おりましたけどもやがて消え、
不在のなかの不在の外部を、くるくるくると浮遊し──失墜、
ああ すべての安息に祈りの夜を、幾夜の祈りに安息の幾夜を、
ちかと光ってわたしは消え往く。生れる。過行く。歌う。消える。あっ!…
夜空と都会