孤立

 高いところからながめる、街は、蔦植物に蝕まれた廃墟の群れ。

 月からの新人類が、地球になじみはじめたので、先住民であるわたしたちは、幾ばくかの危機感をおぼえながら、あるものは森に棲み処をみつけ、あるものは海にかえり、またあるものは、月からの新人類との共存に積極的で、わたしを含め一部のものは、新人類と一定の距離を置いて、いままでどおりの生活を、ただ無感動にこなしている。抑揚のない、日常。
(あがりもせず、さがりもせず)(たのしくもなく、つまらなくもない)

 何人かのグループでやりとりされる、チャットのなかで、くりひろげられる、おべんちゃらを、冷静に傍観しているだけの、わたし、の、お愛想でも、いっしょにもりあがれない、この感じを、だれか、わかってくれるひとも、どこかにいるはず、と思いながら、通知音を切る。現実は、テレビ番組の、街頭インタビューをうけているひとの、おおげさなリアクションを観た瞬間、ちょっと寒気がするときがあっても、家族のひとは、そうだよねとは、肯かないけれど。

孤立

孤立

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-04

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