シ小説『木蓮か、金木犀』

死にぞこないへ

やはり、生きているよりも、死んでいることのほうがいい人生もある。死は甘くて、いずれお別れなんだ。もう、行かなきゃなんだ。その時にいるんだ。世界が終わるんだ。

お母さん。ずっと、一緒にいたかったのに。痛かったんだよね?死ぬときはきっと。でも、その死に顔が、とても美しかったから。

私は慣れない。成れなかった。幸せにはなれなかった。だから、生きていても仕方ないんだ。貧しいし、恵まれない。もう、どうしようもない。生まれ変わったら。考える日々。ああ、神よ!もう、全人生よ!変われ、この刹那に、集って死んでしまえ!全人類よ!

これから生まれ出ずる苦しみから解放せしめよ!

それか、酔ったように生きて死ねよ。

歓喜を抱く

歓喜!歓喜にキスを!
もう、全能でいいから!目覚めよ。この言葉が気持ちいい。心地良い。天空の音。乙女のように美しい。園。楽園は、咲いて。花がきらきらと、ひらひらと、無能からの目覚めは、全知への気付きとなる。

虚数空間から映し出された、歓喜の雨は、喜びの愉悦となって、あぁ!全ての存在は、血の契によって、兄弟になる。星も、空も、生命ある全てのもの。生まれたという最大の歓びに歓呼せよ!

この今に生きていること。心分かち合う友を得たものよ。得られなかったものよ。終末の狭間で、歓喜に合わせて踊れ!舞え!

もういいんだ。やらなくていい。キスもいい。全ての善人も、全ての悪人も、結局死ぬのだ。だから、今を生きるんだ。

あぁ、笑いたい。笑ってるよ。喜んで、微笑んで。君がいればいい。泣きたい。泣いてるよ。もう、ボロボロに泣いているんだ。

kiri

そうだねぇ。君が僕の運命を、完成させたんだ。僕の場所を、恐れたんだ。僕の全能を、壊したんだ。

だから、僕は君の全知も、君の無能も、君の冴えない横顔だって殺してやる。

やはり、最期はキスがいい?
それとも熱いセックスかな。
もう!終わりが……。

助けてよ。
でも、もう助かったか。

ヘブン。セブンス。レイ・アート。

それで?君はどう思ったの?
そこが大切。生命の名前を。本当の名前を。

こっちに来て。話そうよ。
ある昼下がりのカフェのこと。

友達できるかな……。
雨の日の、電車の中。

もう、嫌だよ。こんな人生。
でも、生きなくちゃ、だめなんだ。

yoku

夢を描くのも、もうやめたのに。
世界は色づく?彩りの。

やめたやめたよ。とっくにね。

賢しい君の歌を聞き
優柔不断の絵を描く。

凪は渚で、泣いた日に。
この世の欲の世迷言を。

あぁ……。欲のように
もう、覚めた。
晴れた日のごとく。

君は、あぁ……。せめて。
せめて、その頬に触れればいいな。

まだ、自由になれない。粉雪は欲の象徴か。
月はもう、光るのをやめた。とっくにね。

これで、世界は止まる。
フリーズしてよ、永遠に。
この言葉が好きだったから。
でもね、サイレンが鳴ることはもうないんだよ。

Lotus

雨が清廉の雨が
枷を。その欲望から解き放て!
ついに、あの日の花を咲かせる。
現象の花だ。もう、今日を行けよ。
声が呼んでる。目覚めよと。

遥か、歩いてきたね。月が照らす道を。
その夜たちは眠ることを知らなかった。
歌って明かした夜
望まぬ牢から去るとき。
水辺の門が開くんだ。

昇れ、この上なく。
咲け、絢爛に。
もう、永遠に咲く。
天空の園で。

あぁ、晴れ晴れとした。でも、雨は降っている。
誰も呼ばれないのは、また降る雨が秘密裏に花を咲かせるからだ。

だから、僕は……。
もう、考えなくていい。
月が照らしてくれるから。僕を知ってくれている。
眠らずに越える夜がいい。

昇れ、恍惚に。
喝采、睡蓮、その上で。
帰れよ、その星から
宇宙の根源の光へと

あぁ、やめないで
永遠がいい。永遠でいい。
この響きを忘れやしない。

二人の未来へ

今日までの物語を祝福するよ。
そうだね。色々あったんだね。

夕凪のような日も、
時化のような日もあった。

最高の人生にはあなたが必要なの。
もう、ラブソングを作りたいよ。

二人には、花束を渡そう。
幸せの詰まったブーケ。
大好きだよ。私もあなたも。

春は桜が咲くように、
夏は花火が夜に輝く。

雨が降ったら、あなたの隣へ。
このラブソングを届けなきゃ。

最高の人生を。
あなたと一緒にキスを。
だから、神様の前で、永遠を誓いませんか?

二人にこのラブソングを。
眩しいまでに輝く命を咲かせる歌を。

秋は枯れ葉が散っていく。
冬が来て、夜空の星を眺めてる。
君と二人で探してる。

最高の人生が待ってる。
そう、二人には、最高の愛。
このラブソングがあるから。
だから、神様の前で、永遠を誓いませんか?

最高の二人になれますように。
だから、教会で、キスを、誓いを。

最高の人生が始まるんだ。
これから先に、あなたと二人で築くんだ。

最高の人生が待ってるよ。
だから、大丈夫。今も、これからも。

木蓮か、金木犀

弔いを呼吸に昇華し、雨を水槽に溜める。
その瞳が映す楽園を見たい。

落ちていく、
ゆっくりと、雷鳴が

なぁ、そうだろう?
だから、生きてる。
だから、死んでく。

間違えてもいいよ。
そういう人生だ。
帰り道は思い出せない
ずっと。だから、前に進むんだ。

木蓮とソドム。
揺らいだ凪の、光景の。
楽園は遠く、遠雷の。

いつか、叶えたかった夢も眠って。
金木犀の香りが、判決を。
車輪は回らず、運命の輪。
3月、いや、9月に女神に出会うんだ。

結局。ここで何がしたかったんだ?
御花畑に立っている。
風を受けて。
髪が靡く。

最後のページに、
『あなたは誰?』
と、書いてあった。

わからない。その顔ももう思い出せないから。
でもね、いいんだ。また、会える。
ずっと、永遠でいい。
水が打ち寄せる。
記憶が、忘却へと打ち寄せる。
その波の音をクオリアで感じる。
それを僕は、悲しいのかなぁ、嬉しいのかなぁ。
泣いてしまった。

「何をしていたの?」

世界は変われど、僕は孤独でも……。

愛を。心ごと吠えるような鼓動の叫び。
やめてよ。そんなの。涙が溢れちゃうから。

柔らかな瞳に、柔らかな翼。
僕の翼はもう、十分休まったんだよ……。

しどろもどろ歩いてきたね。
帰る場所、なかったね。

答えはまだ、見つからない。
この広い世界の中で見つけてくれた。
ありがとうって。
隣にいたいって。
隣にいるんだよって。
触れ合えたら。せめて。

もう、永遠も、半ばを過ぎた。
お別れだ。
君はなにも知らなくていい。

シ小説『木蓮か、金木犀』

  1. 死にぞこないへ
  2. 歓喜を抱く
  3. kiri
  4. yoku
  5. Lotus
  6. 二人の未来へ
  7. 木蓮か、金木犀